感想|四ツ目神 再会
※ネタバレ注意
今回はSEECのゲーム『四ツ目神 再会』の感想文となります。こちらはアプリ発信からの新装版からのSwitch版発売という経緯があるようですが、私がこのゲームを知ったのはSwitch版の発売前後といったところでしょうか。同社のゲーム『ウーユリーフの処方箋』を遅まきながらもクリアした後に存在を知ったゲームなので知識不足は自覚ありです。
【本編】
序盤はとにかくフルボイス!?ヒロインちゃんめっちゃ喋ってる&動いてる!かわいい!イミゴくんとのやり取りもかわいい!シロちゃんクロちゃんかわいいタガタさん良き保護者~!といった感想ばかりでした。神社や神話の話もタメになったので、色々なものに興味を持ってなぜなぜどうしてと訊いてくれる真依ちゃんの好奇心はありがたいものでした。
で、私が暗雲の存在をハッキリと感じたのはシロちゃんがいなくなったところ……つまりはアプリの有料分辺りです。ここから四ツ目神の真実、真依ちゃん出生時の秘密がじわじわと紐解かれていきます。なんというか、古の価値観を絶対的なものとする田舎の陰湿極まる閉塞感が本当に辛かったです。こういった話は各所で耳にしてきましたがこんなにも時代に取り残された世界があって、そこで犠牲になる子供が未だ存在するというある種の滑稽さと絶望感がありました。あまりにも狭い世界、そこから抜け出すのはきっと容易い筈なのに不可視の柵に縛られる人々はなんと歪なことでしょうか。
真依ちゃんは、優しく真っ直ぐで家族思いな女の子です。
イミゴも、ぶっきらぼうだけどその心根は真依ちゃんと同じです。義理堅さで言えば真依ちゃんも同じくですが、この上なくこざっぱりした気性はイミゴ特有のものだったように感じます。生まれて間もなく『送られる』ことは彼の両親にとっては間違いなく不幸なことでしたが、だからといってイミゴ本人まで不幸というのは確かにこちらの決めつけでした。あんな世界である種の呪いを掛けられながら気付かず歪んで生きていくことよりも、クロシロタガタと共に穏やかな日々を過ごしていくことの方が圧倒的に良いもののように私はひどく感じました。
タガタさんは終わっていく村の神様とされてしまった哀れな人だと思っています。だからこそイミゴへの執着も理解できましたし、真実を知った時はどうにもやるせない気持ちになりました。
で。全てのシナリオを読み終え様々なENDを見た結果なのですが。
最終的に、どうして彼らは亡者なのだろうという根本的な絶望に襲われました。この感覚は先のイミゴ思考から外れたもののようですが、要するに私は真依ちゃんと悠真には同じ世界で生きていてほしいと思ったのです。その為には人間同士だろうと、異界の者同士だろうと構わないと思っています。
というわけで、私の希望で言えば真依ちゃんと悠真が共に生きていくENDに一番救いがあったように感じました。が、その世界線には救われなかったタガタさんと、真依ちゃんという幸福と出会えなかった誠さんがいます。彼らのことを知ってしまった今となってはそれがどうにも気がかりでした。みんながみんな幸せになる世界なんてないけれど、それでも知ってしまった人たちの幸せだけはどうにも願ってしまう欲深い私なのでした。
しかしやっぱり真依ちゃんと悠真が同じ世界の住人であることには大きな救いを感じるので、私はこれが最も好きなENDです。
また、他のENDも程度はあれど全て好ましく思っています。
【特別編】
最後まで読んでただのifじゃないのか……!と驚きました。と同時に絶望です。この世界は双子がお互いを救い合いながら犠牲になり合うループなのだと思ったら胸が苦しくなって堪らない気持ちになりました。
イミゴが入れ替わったとしても二人の性質は変わらなくて、ミステリアスだけどポンコツさが滲み出るイミゴは見てて微笑ましいものがありました。小さな花火大会には不思議と胸を締め付けられました。
最後、真依ちゃんの願いと悠真の願いがぴたりと重なっているところに両者の相手を思う心を感じました。切ないです。どうしてどちらかが犠牲にならないとこの世界は成り立たないのでしょうか。私がこの世界を呪ってやりたくなりました。
そして悠真の「一番寂しがってるのはお前だろ」という言葉。動揺するタガタさんがとても悲しかったです。悠真も真依ちゃんも、どうしてこんなにも人の心に聡いのでしょう……。
そして物語は『またね』と終わりを迎えます。私は絶望のあまり目眩を起こしかねない心境でした。同時に、また本編を最初から読みたくなりました。
【短編】
真依:真依ちゃんの友達の優しさにも安心しました。優しい人が優しい世界で優しい人たちに囲まれて生きる、これはとても正しいことのように感じました。とてもいい話でした。
イミゴ:こういう日常をもっと見たい……!イミゴがひたすらに可愛かったです。スチルが無邪気で微笑ましかったです。荒ぶるイミゴかわいいなぁ。
タガタ:スチルの日常感がとても好きで、この時が永遠に続けばいいのにと思いました。シロちゃんの女の子らしさとイミゴ&クロの無理解男子っぷりが愛おしかったです。
クロ:理解できないものを異形のものとする短絡的思考……。それで犠牲になる子がいるというのだから世界はとても残酷です。
シロ:父親の無慈悲さに絶望です。人はこんな風にも考えてしまうものなんですね。
誠:真依ちゃんのストーリーといい、この父娘はなんと尊い絆で結ばれているのでしょうか。経緯が悲しすぎるけれど、それでもこの二人が巡り会えた運命には感謝しました。
修二:真依ちゃんが村で生きるENDの時も思いましたが、村の因習を正しく受け継いでしまうのがこの人なんだなと改めて実感するお話でした。
総一:こんなにも誠実な人が……という絶望がありました。ただの地獄でした。
真由子:総一さんに続き、地獄でした。この夫婦の幸せな話をもっとたくさん読みたいです。
以上、感想となります。
ひたすら気が重い内容になりましたが、感じたことをおおよそ吐き出すことが出来て嬉しく思います。すぐに喉元過ぎてしまうタイプなので感想文は今後もこうして綴っていきたいものですね。
ここまでお読みいただきありがとうございました。