テンション上がってくる

 イゼルローン要塞とガイエスブルク要塞の至近戦闘が開始される。多分、俺は銀英伝の戦闘の中でここが一番好きなんじゃないかと思う。いやもうほんと、敵も味方も上から下まで有能しかいないの。お互いの主砲がヤバい威力なので、「一度撃ち合ったらもうその破壊力を恐れてお互いに主砲は封じられるだろう」という同盟側の予測とは裏腹に、躊躇なく第二射、第三射を命じるケンプ氏の将としての怖さが光る。味方の損耗を無視して戦術的目標を果たす果断さは紛れもなく彼の強みだろう。「相手に抑止力の概念がない」と悟った時、並みの奴なら恐慌に陥るところだった。この戦いは銀英伝の中でも特にSF的ガジェットが光っており、双方の要塞を包み込む流体金属装甲が、単にSFらしい小道具の域に収まらず、現実の巨大兵器では決してあり得ない利便性を提供している点に唸る。これらの要塞の砲台群は、装甲上に固定されているのではなく、水銀の海に浮かぶ船のようなものなのだ。固体装甲の巨大兵器であれば、砲台に移動機能そのものがないか、あるいはあったとしても、なんかこうレーン的なインフラがないと無理である。仮にレールで移動できたとしても、その動きには大きな制限がつくはずだ。だが流体装甲。動きに制限はなく、少ない数の砲台で効果的に全方位を守ることができる。

 時間切れ。

(また、レーンを備え付けるということは、その部分を装甲で覆えないということになるが、流体装甲であればそのような弱点とも無縁である。さらに、液体ということは、固体弾頭の破壊力を効果的に吸収できることは言うまでもない。恐らくは電磁力をかけることよって粘度が変わる感じの液体素材なのではないだろうか。銀英伝は、全体的にはステレオタイプなスペースオペラ的世界なのだが、たまにこういう超合理的かつセンスオブワンダーなガジェットを出してくるのでSFとしても侮れないのだ)

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