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十二人の怒れる魔王
不死ではなく、無敵。
腕力はもちろん、呪殺の類とて時の止まった存在には無意味。およそ傷つけられる手段がない。
〈十三人の魔王〉評議会、席次第三位、〈悠久公〉とはそのような魔王であった。魔界の特異点にして、評議会における勢力均衡の支柱とも言うべき巨魁。
その死で利益を被るような魔王は、余だけのようだ。
〈斬首公〉の振るう処刑の一刀が、延長線上にいるすべての生物の首を断ち落とした。呪詛と渇望の乗った斬撃線にわずかでも重なった者は、魔族はもちろん、虫けらの一匹に至るまで絶滅する。
余はほとんど地面に倒れ掛かるようにして一閃を躱す。両手を突き、宙返りして体勢を立て直した。
「……卿の知る余は、容疑者が自分しかいないような弑逆を成して自らを窮地に陥れるような愚者であったか?」
「真犯人などどうでも良い。口実ができたというだけで、貴様を斬らない百の理由に勝る」
魔剣〈黒き螺旋の踊り手〉の鍔元が展開した。いましがた余波で殺戮したすべての命の魂魄がそこへ集結し、吸収され、咀嚼された。
「他のお歴々も同じ意見かね?」
〈扼殺公〉と〈鮮血公〉が冷笑している。他の面々も、この断罪を止める気は特にないようだった。
「……よろしい。目先の秩序回復だけを目的とするならそれも良かろう。だが忘れるな。余は必ず真実を突き止める。どんな手を使おうともな」
誰が、何のために、いかなる手段をもって〈悠久公〉を殺害したのか。
鏖殺の魔剣が、全方位に出現する呪槍が、足元から絡みつく〈死の手〉が、高度に制御された空間断層が、この身を砕く瞬間。
〈淵夜公〉たる余は、記憶と人格のすべてをひとつの術式と成し、光弾として撃ち放った。
天へ。
魔王の支配の及ばぬ世界へ。
意識を取り戻す。
温かな闇の中にいた。
短く弱々しい四肢は満足に動かず、腹から伸びる管でどこかと繋がっている。
激しく揺れ動いた。強い恐怖の匂いを感じる。
余を孕んだ者は、どうやら命の危機にあるらしい。
【続く】
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