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世界対がんデーに考える。がん検診の大切さ

毎年2月4日のワールドキャンサーデー(世界対がんデー)は、世界中の人々が、がんのために一緒にできることを考え、行動を起こす日です。

今や、がんは日本人の2人に1人が罹患する病であり、誰もが他人事とはいえません。
国立研究開発法人国立がん研究センターが公開している情報によると、「日本人が一生のうちにがんと診断される確率」は、男性65.0%(2人に1人)、女性50.2%(2人に1人)。※2018年データに基づく
「日本人ががんで死亡する確率」は、男性26.7%(4人に1人)、女性17.8%(6人に1人)とされています。※2019年のデータに基づく

がんが以前に比べ、より身近になってきたことから、学校での「がん教育」なるものも段階的にはじまっています。がん教育の目的には、子どもの頃からがんについての正しい知識を身につけること、がんを無闇に怖がったり、誤解や偏見を無くすことなどが挙げられます。

がんの種類はさまざまですが、特に女性に身近ながんは、乳がんや子宮頸(けい)がん。
2018年の全国がん登録罹患データによると、女性のがん罹患数の1位が乳房、5位が子宮でした。

忙しい生活を送っていると、ついつい後回しにしてしまいがちな、健康診断やがん検診。
がんを知り、受診の大切さを知っていただけるように、今回は「子宮頸がん」についてご紹介します。

子宮頸がんは、子宮下部の管状の部分、子宮頸部に生じるがんのこと。子宮がんのうち約7割程度を占めているのが、この子宮頸がんです。

2000年以前は40~50歳代が発症のピークとされていましたが、最近は20~30歳代の若い女性に増えてきており、30歳代後半がピークに。
国内では、毎年約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約3千人が死亡しています。また、2000年以後、患者数も死亡率も増加傾向にあります。

子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが、性的接触により子宮頸部に感染することが原因です。HPVはありふれたウイルスであり、性交経験のある女性の過半数は、一生に一度は感染の機会があるともいわれています。

しかしHPVに感染しても、90%の人は免疫の力で自然治癒します。ですが10%の人はHPV感染が長期間持続することも。このうち自然治癒しない一部の人は、数年以上をかけて子宮頸がんに進行していきます。

子宮頸がんは通常、早期にはほとんど自覚症状がありません。進行するに従い、濃い茶色や膿のようなおりもの、生理以外の出血(不正出血)、性行為の際の出血が現れてきます。さらに進行すると下腹部や腰が痛んだり、尿や便に血が混じったりすることも。

子宮頸がんは、早期がんのうちに治療すれば治癒率も高く、また子宮を温存できる可能性も十分あるとされています。しかし進行がんになると再発率・死亡率も高くなります。だから、子宮頸がんの予防には子宮頸がん検診で早期発見し、早期治療をうけることが重要。
出血などの症状がなくても、20歳を過ぎたら、年に1回の子宮頸がんの検診をかかさず受けましょう。なにか気になる症状がある場合は、早めに婦人科の専門医に相談を。

がん予防のため、日々の生活の中で心がけられることもあります。
2011年にがん研究振興財団から公開された「がんを防ぐための新12か条」によると、
【 1 】たばこは吸わない
【 2 】他人のたばこの煙を避ける
【 3 】お酒はほどほどに
【 4 】バランスのとれた食生活を
【 5 】塩辛い食品は控えめに
【 6 】野菜や果物は不足にならないように
【 7 】適度に運動
【 8 】適切な体重維持
【 9 】ウイルスや細菌の感染予防と治療
【 10 】定期的ながん検診を
【 11 】身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
【 12 】正しいがん情報でがんを知ることから
が重要とされています。

この新12か条は日本人を対象とした疫学調査や、現時点で妥当な研究方法で明らかとされている証拠を元にまとめられたもの。規則正しい生活習慣もがん予防に大切であることがわかります。

がんは、私たちが思っている以上に身近に存在しています。それでも医療の進歩により、早期発見・早期治療で9割以上が治る病気です。他人事ではなく、自分事として捉えて、自分ができる予防をしていくことが大切。
健康に自信がなく、検診を受けることが怖いと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、早期発見の「早期」は今この瞬間です。

どうか、あなた自身のために。あなたを想う人たちのために。
医療がどれだけ進歩しようとも、あなたの一歩がなければ、なにもできないのです。未来を守るために検診という予防を。あなたの勇気が、間に合いますように。


医療監修 宗田聡医師(医学博士・産婦人科医・産業医)