#156_【観光ガイド】ジブンの「好き」を探す授業#1_城崎祥熙さん
いつの間にやら1年半も前の話になりましたが、首都圏の会社に勤める20代の「おさんぽ女子」に対馬まできてもらい、イベントを開催しました。
イベントの成果としては、多くの発見があり、手応えはありましたが、準備不足や手違いによりアテが外れ、実にもったいないことをしたと感じました。
ストレートに申し上げますと、対馬の高校生に来てほしかったのですが、根回しが及ばず、短期間で別のターゲットを設定し直しながら参加者の募集をする羽目になり、人を集められなかったことです。
その教訓を踏まえながら、ふたたび今年「おさんぽ女子」と新たな企みをしているのですが、その事前企画として、島内にも対馬の魅力を発信する若手がいるぞ!ということを、高校生に知ってほしいと思いつきました。
そこで、現在会社員をしながらフォトグラファーとして活躍する城崎祥熙さんを講師に迎え、出前授業を実施しました。
企画の経緯
若者は天然記念物?
最近、学校の授業で「総合的な学習(探求)の時間」というのがはじまり、地域の方が学校に出向いたり、子どもが職業現場に出向いて授業をする機会が増えました。とても良いことだと捉えていますが、児童、生徒からすると、もう少し歳が近い人と話せる機会ないかなぁというモヤモヤがありました。
※おっちゃん、おばちゃんと交流すること自体は、お互いにとって良いことだと考えています。
若者の存在感も示したい
対馬には大学などの高等教育機関がなく、仕事の職種も限られるため、中学や高校の卒業を機に島外へ出てしまう若者が多く、卒業後にすぐ戻ってくるわけでもないので、島の中で若者を見つけるのは意外と難しく、私も業務上30半ばより若い方に対応してもらうことは、あまりありません。
昨年、ドルトン東京学園の安居校長をご案内したとき、たまたま訪問先の相手が全員20~30代ということがあったのですが「若い方たちが表に出て活躍しているのが頼もしい、それを自分の言葉で話しているのが良い」という感想をいただきました。
前例がなかったため、それが不安のようなものにつながっていたのだと思いますが、若いうちから表に出る場面を作れたらいいのかも、と考えるようになりました。
なぜ商業科?
「おさんぽ女子」とのイベントに高校生を巻き込みたいと考えていながらも、どこに需要がありそうか、あまり見当が付いていなかったので、イベントで実施した内容を取りまとめ、前年度まで校長をしていたT先生に相談しました。
対馬高校には、韓国語が学べ、離島留学で遠くは関東からやってくる生徒もいる国際文化交流科があり、普通科ではESD対馬学という総合学習の取り組みが定着してきたので、テーマも観光だし、そのあたりに着地するのだろうか、と推測していたところ「カリキュラムの改訂があり、商業科で『観光ビジネス』が必修になるので、商業科がよかですよ」という、意外な答えが返ってきました。
私は、人生を通じ高校の商業科卒の方に出会ったのは、おそらく10人いるかどうかでしたので(私の母校の商学部には、商業科の生徒のみが使える出願ルートがあるらしく、実はもっといたかもしれませんf^_^;))、あまり実感が湧きませんでしたが、対馬高校に打診したところ、了承をいただけましたので、実施する運びとなりました。
講師を依頼した城崎祥熙さん
対馬高校の商業科を卒業後、島を出ずに対馬で働いている城崎さん。
現在の仕事が残業や休日出勤がないということで、仕事が終わったら何をしようかと思ってはじめたのが、高校の時から好きだったカメラだった、とのこと。
いまは主に、風景写真と人物撮影をされていて、名もなき海岸線を歩いたり、断崖をのぼったりしながら、対馬の素敵な景色を収めに、あちこち出掛けています。
彼のことを知らないという方でも、対馬の素敵な風景だなぁと思っていた写真や、飲食店のメニューに掲載されている写真が彼の撮影だった、ということがあるかもしれません。
お話の内容
対馬は自然が魅力と言うけれど
現在では、風景写真を使ってカレンダーを制作、販売し、北海道から沖縄まで、全国各地から注文が入るとのこと。
カレンダーを購入された方の感想を読むと、夕陽も、朝陽も、星も、山も、海も撮れるポテンシャルが高い島だね、と言ってもらえることがとても多いそう。そして、対馬に住んでいると、自然のどこが魅力ですよ、夕陽のどこがきれいですよ、と具体的に説明できる人がいないし、ありがたみを感じることがないが、写真にしてみるとすごいと自然と感じられるのだろうとも。
来た仕事の流れを止めない
風景写真を撮り続けいていたところ、同級生から結婚式のカメラマンをしてほしいという依頼が入ってきます。
素人の感覚ですと、風景も人物も大して変わらなそうに思えますが、人物、とりわけ結婚式ともなると、会場の雰囲気やライトの照らし方で、撮影の都度写真の撮り方を変えねばならないほど繊細なものだとか。おまけに、お客様からしてみたら、一生に何度もあるイベントではありませんので(あればあったで、リアクションに困りそうですが…)、プレッシャーも大きくなることでしょう。
そのようなわけで、式場のカメラマンが別にいるのだろうと構えていたところ、日が迫ってきたところで自分ひとりだということが発覚し、当日までにYouTubeや本で猛勉強し乗り切ったと話します。
この経験があって、対馬の自然を背景にした結婚式の前撮りにも手を広げ、さらには、フォトコンテストで表彰される作品も撮影できたとのこと。
さらに活動を広げようと出張撮影サービスの会社に所属しましたが、そちらはなかなか案件が回ってこないということで、ならば自分たちで立ち上げればよくない?という話になり、現在では飲食店のメニュー写真も撮影しています。
商品や食べ物など、いわゆる「ブツ撮り」といわれるものについても、風景や人物とは違う難しさがあろうかと思いますが、難しそうだから、面倒くさそうだからと断るのではなく、貪欲に勉強してスキルを身につける姿勢が素晴らしいと感じます。
一昔前だと、会社が小さい、組織に属していないとなれば、門前払いにされることが多々ありましたが、ここ数年、そんなことで遠慮する必要のない時代に突入したと思います。その姿勢は私も見習わねばなりません。
そんな感じに、人づてに仕事が入ってきたり、食事やBBQに誘われるなど撮影以外のつながりもできてきたりするところが、忙しいけれどもうれしいし、これも対馬の大きな魅力と、充実した表情で話すのが印象的でした。
後輩へのメッセージ
商業科の先輩とはいえ、いきなり会ったこともないお兄さんを連れてきて、ひたすら趣味の話を聞かせて、観光ビジネスと何の関係があるんかい!と思われそうな感じもありましたが、期せずして、城崎さんからの後輩へのメッセージと、私がこの授業で学んでほしいと考えていたテーマが重なっていましたので、一部編集しておりますが、紹介します。
こちらの狙い通りだったからというわけではなく、単純に素敵な話だった、若者に委ねて良かったと思いました(^_^)b。
ヨソモノのおっさんではなく、対馬出身の少し年上の先輩からの話だったらこそ、深みが生まれたのかもしれません。
振り返りなど
初回とはいえ、こちらから促さなくても発言が出てくるような関係性にまで至らなかったのが反省ですが、真剣なまなざしで話を聞く生徒さんが多く、何か感じ取ってくれただろうと思います。
来週また、別の方との授業を企画していますが、それ以降も興味を持ってくれる企画を考えないと、と思いました。
対馬は離島であるがゆえ、すべてが本土と同じようにできませんので「対馬にいるからできない」という言葉を耳にすることもありますが、今日の話を聞いて、ひとりでも「対馬にいてもできる」「対馬でなければできないことがある」と考えられるようになってもらえれば、と望みます。
そして、なかなか若い方の存在が目に付きにくい対馬ですが、お客様が店を育てるという話もありますので、人生の節目の時には、城崎さんに記念撮影のご依頼をいただけるとありがたいですm(_ _)m。
お仕事の合間に時間を作ってくださった城崎さん、時間割の調整をしてくださった対馬高校商業科のY先生、M先生ありがとうございました。
これからしばらく紆余曲折もありそうですが、今年度は、こんな感じで出前授業をする予定ですので、お楽しみに~o(^-^)。