見出し画像

【ショートショート6】『大地を揺るがす猫 』

白猫のパールは猫には珍しいある特徴があった。

それは足音がものすごいことだ。


パールの住む町ではみんなが楽しみにしていたお祭りがあった。

お祭りは大盛りあがり!

するとパールの住む町と隣町の若い衆が喧嘩を始めた。


一人が一人を殴りつけ、ぶつかったと言ってまた殴りかかる。
喧嘩はみんな慣れっこだが、女、子供は怖がって逃げ出した。


そこへものすごい足音が近づいてきた。

皆立っていられずその場にうずくまる。

周りを見渡すと白猫のパールが大地を揺るがしながら喧嘩の中心に飛び込んだ。


パールのおかげで喧嘩はすぐに収まった。

パールはみんなに撫でられて満足そうだった。


パールは普段ほとんど動かない。

いつもじーっと日向ぼっこをしているだけの猫だ。


猫は自分の特性を知ってか知らないでか、滅多に歩くことはない。


パールがひとたび動き出すと大地を揺るがし、道を歩くものはうずくまり、車や電車も止まる。 

そう、この猫は大地を揺るがすのだ。


だが一大事には駆けつけるのである。

そのスピードは神がかっている。

パールは一瞬で現場に駆けつけ、あっという間に事を納めてしまうのだ。


町の衆はパールをとても大切に思っていた。

マダムも喜んでパールの世話をした。


パールはマダムの家がお気に入りだ。

マダムはパール専用のバギーを用意してくれたからだ。

パールのバギーは念の為、衝撃吸収の素材が使われている。

パールはマダムと行きたいところどこへでも行けた。


パールのおかげで この町はすっかり平和になっていた。

そしてもう誰もパールのことを思い出さなくなった。


ある日 マダムの家に泥棒がやってきた。

窓が割られ泥棒が侵入してきた。

パールが物音に気がつき、「ミャー」と泣いた。


その鳴き声は大地を揺るがし、泥棒はひざまずき、必死に床を這ってこの家から逃げることを決断した。


こうして大地を揺るがす猫はマダムを守った。


マダムはパールをバギーに乗せ優しくなでた。

パールは気持ちよさそうだった。


(おわり)



仲間とショートショート作家の会を結成しました😎


これから毎週投稿します!


記念すべき第6弾です🎉✨✨


お読み下さりありがとうございました🥰

いいなと思ったら応援しよう!