コカゲ(5):エピローグ
二人のルミナがクロノゲートで飛んだあと、光の波が引いた静かな広い空間に私は佇んでいる。
小さなルミナが握りしめていたあっぽ(まだナッポと発音できない)が部屋の中央にぽつんと残されている。
あっぽの隣に「真紅の短刀」を置く。
この言葉は冒険者の間では使い古されていて、口にするのが少し恥ずかしい。でもとてもいい餞の言葉だと思うし、これ以上の言葉を私は知らない。
上を向いて目を閉じ、そっと呟く。
「貴公らの旅に……どうか……幸運があらんことを。」
さあ、私も旅を続けよう。
彼を探さなくては。
街道から続く夜空が藍色から明るい紫へ変わりはじめた。今朝はベーコンを焼こうか。
(終)