新米Pがシャニマスシナリオ “YOUR / MY Love letter” を観たら(前編):ネタバレなし
「Nal さん。本当に Nal さんに響くと思うのでぜひやってみてください。」
昼食を済ませて会社に戻る途中、普段そこまで押しの強くない彼が珍しく語調を強める。
同じフロアで働いている会社の後輩Aは真面目でオシャレなキモいオタクだ。ガジェット好きだったりで僕とわりと趣味が近いのもあり、よくお昼を一緒に食べる。
「本当に……本当にいいんです……」
どうやら言葉が出てこないみたい。不器用な後輩Aはどうにかがんばって伝えようとしている。しかし申し訳ないけれどそれがどういいのかまったくわからない。
それ以降「本当にいい」以外出てこないのは後輩Aのボキャブラリーの問題ではなく、たぶん僕へのネタバレを配慮してくれているのだとなんとなくわかった。ネタバレを伏せるということは僕がそれを見てくれることを信じてくれているということ。
後輩Aは真面目でオシャレでキモくて優しいオタクだ。
彼が激しく推すのは「アイドルマスター シャイニーカラーズ」のイベントシナリオ “YOUR / MY Love letter”。アイマスはデレステ、ミリシタ、アニメ (346, 765) は履修したものの、シャニマスはあまりゲームがおもしろくない(失礼)のもあってほぼ未履修の状態だった。
その後も彼は僕へのネタバレにならないようになんとかシャニマスの魅力を伝えようと、お昼の時間にはスマホを横にして僕に見せてくる。どうやらシナリオとその演出が相当いいらしいというのは彼の目の輝きから伝わるけれど、相変わらず具体的なことはふわっと宙に浮いている。
結局よくわからなかったけど、後輩Aをそこまでさせるシャニマスがだんだん気になってきた。
そしてその夜、ついに僕は再生ボタンを押す。
ぴ、ぴ、ぴ、ぴーん
ニ時間後、僕は泣いていた。
それは何だったのか
それは「モブ」の群像劇だった
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シャニマスはアイドル育成ゲームと聞いていた。しかしこのシナリオは何だ?可愛らしいアイドルがレッスンしたりライブで踊ったり日々奮闘する姿はどこに行った?そもそもアイドルが出てこない。オープニングシーンでは Web 屋さんの新人くんと先輩が旅館に営業をかけている。
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このシナリオにおいて、なんとアイドルはセンターで輝いておらず、他の誰かの人生というステージのバックダンサーとして出演する。センターポジションに立っているのはあくまでもこのモブキャラ5人。
ピアスの女性(26歳 会社員 Web ディレクター)
女子高生(17歳)
高校教師(29歳)
コンビニ店員(19歳 大学生)
年配の男性(59歳 会社員)
名前すらない、ただのモブキャラだ。
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もちろんこのモブたちがアイドルの代わりにレッスンしたりライブで踊ったりするわけではない。モブがそれぞれの日々の生活をただ普通に生きている。それだけのコミュシナリオとなっている。アイドルはそのモブたちの生活の一部の何気ないシーンで脇役として出てくる。そんなアイドル育成ゲーム他にある??
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それは「普通な」演出環境だった
ゲームとしてのシャニマスは他と比べてなにか優れていたり特別だったりするわけではない。古くからある育成ゲームのフォーマットそのままだ。リリース順は前後するけど「ウマ娘の育成」と言えば、あれかーと想像できる人が多いかもしれない(しかも大変申し訳ないけれどウマ娘の育成のほうがおもしろい)。
シナリオパートもよくあるノベルゲームの形で、使い古されていてむしろ安心感があるくらい特徴がない。背景の前にキャラの絵があり、画面下にセリフが出てタップで次のセリフへ進む。関節のある 2D 絵が動く。会話ログや自動送り機能もある。
びっくりするくらい普通 だ。
なのになぜ僕は泣いたのか
(後編へ続く(はず!))