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【23話】豪華クルーズ三昧なのに盛り上がらないーーなぜ?

「そうだ、新婚旅行に行こう!」夫は早速、大好きなクルーズ旅行のプランを立て始めていた。そういえば私たちは何年もバケーションを取ってなかったし週末も(私の都合で)遊んであげれなかったので、夫は上機嫌だ。フリーランスになった以上、夫との時間が取れるし、もう広告主のことを心配せずに思い切り遊べるんだ。これで夫婦関係が改善されると期待した。

私達は遅い新婚旅行に出かけた。美しい海を見渡しながらトロピカルな島々へ。毎夜おしゃれをしてディナーをしたりエンターテイメントに浸ったり、これこそ新婚旅行の醍醐味? 人に聞いたら羨ましがられるような贅沢な航海。なのに···肝心の私の気持ちが昂ってなかった。

ーー何故? まだ仕事の事を考えていた。このクルーズが終わっても戻る仕事がない。身分相応ではない。この気持ちは自分でも不思議だった。

旅行代金は全て夫が持った。日常の生活はケチな場面が多いのに、彼が好きな事には糸目をつけない。エアやホテル、日程や予約のアレンジも全て夫がする。私はパッキングと朝起こされて着いていくだけ。相当楽だ。でもその旅行スタイルは果たして公平なのか。度々「付き添い」?と思う事もあった。

その後もセントーマス、バハマ、コスタリカ、パナマ、プエルトリコ、メキシカン、としばらくクルーズ旅行は続いた。楽しめないもう一つの理由は食事だった。海をクルーズしているのに船内で食べる魚や肉は全て冷凍、全て同じ味だった。しかも24時間食べ放題という事もあり、傲慢に食べ続ける人々を見るのは不快だった。

クルーズ旅行にも飽きてきた。遊んでお金を使うばかりで収入がない惨めさが湧いてきた。バケーションは「仕事」あってのもの。「どうしたらフリーランスから顧客を掴めるのか」ずっともがいていた。

新婚旅行から戻ると、顧客を獲得する為に日本に行った。入念に色々な雑誌社とアポをとり、挨拶に出かけた。でもどこも相手にしてくれず、門前払いのような扱いを受けた。惨めだった。まだ実績が足りないのか、アメリカ地元雑誌では無理なのか。まだフリーランス駆け出し、これからどうなるんだろう。 

失意の中アメリカに帰り、ウェブページを作ったり、近くのコミュニティカレッジでフォトショップのクラスを取ったり、まだなにも見えない、次のステップがわからない、結局、仕事は「私」なんだと悟った。だから自分が迷子になっているようだった。でも次々と旅行はやってきた。

**この時期から何年か後に、その時仕事を断られた雑誌社全ての出版社に仕事を懇願される事になったが、、、その時はまだ夜明け前だった。

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