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#9 心がどんどん彼から離れていく


そしてその9月、彼はまたハンガリーへ行った。でもその3週間の間、私の心理状態が大きく変わってしまった。私のルームメイトのディスクロージャー(告白)で、私の彼に対する信用が大きく揺らいでしまった。


彼がそのルームメイトの首付近にカジュアルなキスをしたというのが原因だった。「彼女が居るのに私とも浮気をしている彼は外から見て、だらしのない大人に見えた。そういうことをする人だから、今度は私のルームメイトにキスをしたりするのだ。もしかしたら他の女性とも同時に関係を持っているか、これから持つかもしれない」という思いで脳が支配された。


彼を待っている3週間、そんな事を思い悩み、同時に彼に対する愛情がどんどん消えていくのがわかった。「だいたい別れる彼女の家にどうして3週間も滞在する必要だあるのだろう?」言わずとしれたことで、その間も彼女と寝ているのは分かってた。このような状況で二人の女性と同時に寝れるのだろうか?そして今回のキス事件。どれをとっても彼をマイナスに評価してしまう材料しか見当たらなかった。


そして彼が帰ってきた。空港に迎えに行ったが、彼と久しぶりに会えると言うのに胸のときめきさえなかった。インターナショナルロビーに行っても彼と会えなかった。そのうち携帯に電話がなり、私達は一応会えたのだが、私は「仕事が忙しい」と言って、彼を家に送っていこうともしなかった。

心が無いのを見透かされたくは無かったが、変に演技もしたくなかったので、軽くキスをしてその場から消えた。この週末に会いに行くと約束をして。

その間の彼の動揺は計り知れないものだったらしい。私の顔を見るまで何が起こったのか彼にはさっぱり分からなかった。涙の末、遥かハンガリーの彼女と分かれてきたばかりなのに、今度は私にまで振られるとは夢にも思ってかったに違いない。私の気持ちを確かめて旅立ったはずの彼の戻りを待っていたのは私からの別れ話だった。


その週末、私は「大事な話がある」と彼に予告をし、彼の家を訪ねた。私からの質問は「xxxxさんとした? xxxxさんとも出来てたの?」とか突拍子もない質問で、彼の口から過去に出た女性名前を勝手に出し疑った。

彼は目を丸くして、「what?」と何度も繰り返した。彼は私の誤解をすぐに解こうとしたが、私の中には彼への愛情がもうほとんど残っていなくて、ただ、「この人といっしょにいるのは退屈」と強く感じた。


いきなり「帰る」と言った私に、「どうして!3週間も会えなかったのに。。。いっしょにいたい」と言ったが、どうしても帰るといった私に対して、彼は泣きながら、私のガウンや下着をまとめて持ってきて私に渡し、「わかった、いいよ出て行っても」と言った。彼は私に背中を向けて泣いていた。

彼の悲しみがとても伝わってきた。「かわいそう」と私は同情した。「わかった、じゃあ今日はいっしょにいる」と彼との夜を心はエンプティーのまま過ごした。

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