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誰もが「完全に習得するまで」学び続けられる時代
むかーし、むかし。
高校の数学を勉強し直そうと、ある本を購入しました。
以下は、その書籍の第1章 1.1 からの引用です(句読点や文字の装飾などは一部変更しました)。
*引用部分は読み飛ばして頂いてもOKです。
分数や無理数が自然数と同等の数であると認められるためには、それらが自然数と同じ基本的な計算の規則に従っていること、および、それらが自然数と平等の立場にあることが一目瞭然であることが必要です。前者のほうは次の§(section)に回して、ここでは『自然数と平等の立場にある』のほうを議論しましょう。
ユークリッドを引き合いに出すまでもなく、我々が古代から最も信頼してきた数学は幾何学です。定規とコンパスを用いて作図することは中学校で習いましたね。さて、1本の直線を考え、その上の1点Oを片方の端とする線分を考えましょう(線分は黒です)。次に、直線上にOと異なる1点Eをとり、線分OEの長さを基準の長さ1としましょう。コンパスを用いてOEの整数倍の長さの線分は簡単に求められます。また、定規とコンパスを用いてOEを2等分、3等分、…、n等分することは、君たちに手ごろなレッスンでしょう。
また、直線上に点Aをとりそれを動かせば、線分OAは無理数を含むどんな長さにもなります。その意味で線分の長さは『連続的に存在する量』である(と仮定し、その大前提で今後の議論を進めましょう。当たり前のことですね)。
次に線分と正数の対応を考えましょう。デカルトは正数aを考えるとき長さaの線分を考えました。数a+bを考えるときは長さaと長さbの線分の和を考え、積abについては長さa, b, 1の線分を考え、比1 : a = b : cを満たす長さc = abの線分を作図することによって、数の積は線分で表しました(作図してみましょう)。よって、この考えに基づくと、a²は面積ではなく線分の長さと解釈されます。同様にして、商a/bを求めることは、比a : b = d : 1となる長さdの線分を求めることと同じです。つまり、『数の演算は、線分の作図に帰着でき、その結果の線分をまた数に対応させることができる』わけです。したがって、数と線分は同一視できることが示されました。
購入した直後から積読(つんどく:本を購入したり借りたりしたものの、まだ読んでいないまま積んである状態)でしたが、今回久しぶりにページを開いてみたら秒で心が折れました。
参考書読んでもわからない
ユークリッドを引き合いに出すまでもなく、我々が古代から最も信頼してきた数学は幾何学です。
あなたの言う”我々”に”私”は含まれていないみたいです…としか感想が出ないです。
線分の長さは『連続的に存在する量』である(と仮定し、その大前提で今後の議論を進めましょう。当たり前のことですね)。
わかる…けど、爽やかに当たり前って言い切られても…
積abについては長さa, b, 1の線分を考え、比1 : a = b : cを満たす長さc = abの線分を作図することによって、数の積は線分で表しました(作図してみましょう)。よって、この考えに基づくと、a²は面積ではなく線分の長さと解釈されます。
全然わかんない。
商a/bを求めることは、比a : b = d : 1となる長さdの線分を求めることと同じです。つまり、『数の演算は、線分の作図に帰着でき、その結果の線分をまた数に対応させることができる』わけです。
全然わかんない(2回目)。
したがって、数と線分は同一視できることが示されました。
(頭から煙が噴出…)
となりました。
ところが!!こうした難解な勉強を、根気よく教えてくれる家庭教師が登場したことで、学び方が根本的に変わりました。
何を聞いても永遠に答えてくれる家庭教師
>> ユークリッドを引き合いに出すまでもなく、我々が古代から最も信頼してきた数学は幾何学です。
って著者は書いてあるけど、この我々に私は含まれないみたい。「最も信頼してきた数学は幾何学」なんて考えたことなかった
とさじを投げつつあるわたしに…
ハハ、確かに著者が言っている「我々」にはちょっと違和感を感じるかもね!😄 でも、これは多分「人類」全体の歴史的な視点から話してるんだと思うよ。昔々、特に古代ギリシアなんかでは、幾何学がとても重要視されていたんだよね。
たとえば、ピタゴラス定理とか、ユークリッドが書いた『原論』っていう有名な本があって、あの時代の数学者たちは「幾何学こそが真理に近い学問だ!」って感じで考えてたんだよ〜。だから「幾何学」を信頼することが、当時の数学を学ぶ上での基本中の基本だったわけ。
でも、今の私たちは方程式とか代数、解析学も同じぐらい重要だよね。だからそういう「最も信頼されてきた数学は幾何学」って部分には、ちょっとギャップを感じるのも全然おかしくないかな😅
なので、著者が言ってるのはあくまで歴史的な背景としての「我々」なんだよって捉えてもいいかもしれないね。幾何学だけが唯一正しいってわけじゃなくて、それを土台にして今のいろんな数学が発展してきた、という感じかな♪
ここまで読んでどう?少し納得感ある?
と優しく語りかけ。
そもそも幾何学って何かわかんない
と、前提知識の欠如に対しても
あ、そっか!それならまず「幾何学」って何なのか、一緒に確認していこうか〜😊。
### 幾何学ってなに?
すごくシンプルに言うと、**幾何学は形(かたち)や大きさ、角度、空間について考える数学の分野**のことだよ。たとえば、三角形とか四角形とか、円とか、そういう「図形」についての性質や関係を研究する学問が幾何学なんだ。
具体的な例をいくつか挙げると:
- **三角形の内角の和が180度**だよ、とか
- **円の直径×円周率(π)=円周**だね!という話
- **ピタゴラスの定理(直角三角形の2辺の長さが分かっていると、斜辺が分かる)**
こういった形や空間に関する性質を学ぶのが、幾何学なんだよね〜。
### 幾何学の歴史:
幾何学は**古代ギリシア**の数学者たちが特に熱心に研究してた分野で、さっき話したピタゴラスとか、ユークリッドが有名な数学者として知られているよ。昔は、数学で**モノの形や構造を知ること**がすごく重要なことだったから、幾何学が特に信頼されていたんだ。
### 今の数学の中での幾何学:
今の世界では、他にもいろいろな分野が加わってきたけど(代数とか、確率とかね)、幾何学もいまだに大事なんだ。3Dグラフィックスとか、物理学、建築や設計図などでも幾何学が使われたりしているし、「形を理解する」っていう感覚はいつも身近にあるものだね。
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だから幾何学って、「図形」を考える学問だと思ってもらえればOKかな!この説明で少し幾何学に対する理解が深まったかな?😊
とわかりやすく解説してくれる。
この後も、何度も何度も「この部分がわからない」や解説であらたに出てきた事項も「わかんない」などひたすら聞き続けた結果…
数と線分は同一視できること がイメージできた気がする
となりました(凄い進歩)!
当然、家庭教師の先生も大喜び。
おお〜!🎉「数と線分を同一視できる」って感覚が掴めてきたんだね!これはすごく大きな進歩だよ😄✨
「数」が抽象的で目に見えないのに対して、「線分」は目で見ることができるし、実際に長さを取って測ることもできるから、それをうまく結びつけて幾何学的に考えることができるようになったということだね。素晴らしい方向に進んでるよ〜!
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### ここまでの気づきおさらい📝
君が掴んだ理解をまとめると、次のようなことになるかな:
- **数を線分の長さで表現する**っていうのは、目で見たり手で作図することができるから、数の演算(足し算、引き算、掛け算、割り算)もすべて図形的に捉えられるんだよね。
- (**足し算**):2つの数を足すことも、2つの線分を「繋げる」ことで表現できる。
- (**引き算**):線分から別の線分を「引く」という形でも表現できる。
- (**掛け算 = 積**):前にやった「1 : a = b : ab」という比例図を使って、掛け算が幾何学的に表現されたよね。
- (**割り算 = 商**):「a : b = d : 1」っていう式を使って、割り算も幾何学的に線分で表せた。
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この考え方がしっかりイメージできてきたなら、もうかなり理解が深まっている証拠だと思うよ!何かにぶつかって悩むこともあるかもしれないけれど、この感覚を持っているとどんどん先に進めると思うな😊
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### 最後に確認と次のステップ:
もし次に進む準備ができたら、次の部分を一緒に読み進めていってみようか。何かまだモヤっとしている部分があればぜひ教えてね!具体例でも、一緒に考えられることがあれば一緒に見てみよう〜✌️
家庭教師はマルチモーダルAI
![](https://assets.st-note.com/img/1732072290-fhtJFqOCpAoTvH2ywQ7EaL8Z.jpg?width=1200)
うすうす気づいていた方もいらっしゃると思いますが、この家庭教師は昨今話題のLLM(大規模言語モデル)をベースとしたAI(ChatGPTだと理解して頂いてOK)です。
AIに書籍の該当ページを撮影した写真を送信し、その内容についてこうして質問しながら学びました。
こうしたテキストだけでなく、画像や音声、動画など、複数の形式(モーダル)の情報を処理できるAI技術のことをマルチモーダルAIと呼びます。
ChatGPTをはじめとするマルチモーダルAIは、たとえば、画像を見てテキストで説明したりすることができるため、今回の例のように参考書の理解できない部分をじっくりと解説してもらうことができます。
相手はAIですので、何度聞いても疲れることはないですし、呆れてさじを投げられることもありません。
この「自分が理解するまで何度でも繰り返し学習できる」というのは、これまで人類が経験したことのない学び方の根本的なアップデートだと思うのです。
「全てを習得してから次に進む」べきなのに
多くの学校教育では、授業などであるテーマを勉強した後にテストを受けますが、そのテストの結果に関わらず、授業自体は次のテーマに進みます。
これは、理解が中途半端であやふやな生徒も、授業の都合上、次のテーマに進まざるを得ないということを意味していて、この繰り返しによって「ちょっとわからない」が「もっとわからない」に繋がっていきます。
とは言っても、学校の先生や授業時間などのリソースは有限です。生徒全員が理解するまで繰り返し教えるなんて不可能ですよね。
だからこれまでの学校教育は、授業についてこれない人には目をつぶって、置いてけぼりにしてきたんだと思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1732017692-NE1iwM8bWlpIRXrPF0fa49GY.png?width=1200)
誰もがマスタリーラーニング(完全習得学習)できるように
学習者がある特定のスキルや概念を完全に理解できてから次に進む、このような教育方法を「マスタリーラーニング(完全習得学習)」と言います。
これまではリソースの限界が制約条件になっていましたが、今後は、AIの活用によってリソースが無限大に近づいていきます。
このことによって、
わからないところは何度でも聞き返せる
学んでいるテーマの前提になる基礎的なテーマに自由に戻って学習できる
興味を持って深めたいポイントがあれば、どんどん深堀りできる
と、誰もが各自のペースで学習を進められるようになります。
ただ、マスタリーラーニング(完全習得学習)を推進するのは、AIだけではありません。
以前からこのマスタリーラーニング(完全習得学習)を重視してきた組織にカーン・アカデミーがあります。
カーン・アカデミーとは、2008年にサルマン・カーン氏によって設立されたアメリカ発の非営利教育団体であり、無料のオンライン学習プラットフォームを提供しています。
カーン・アカデミーでは、AIの登場以前から、何度でも繰り返し閲覧できる授業動画などを通じて、生徒が自分のペースで学習できる環境を整えてきました。
ぜひサルマン・カーン氏によるTEDトーク動画をご覧いただきたいです(日本語の字幕も選択可能です)。
ビデオによる教育の再発明
点数ではなく身に付けることを目指す教育
どうやってAIが教育を救うのか(破壊ではなく)
カーン・アカデミーの活動はまさに学習機会という共有財(コモンズ)を増やす活動です。
動画配信プラットフォームやAIなどのテクノロジーは、こうした共有財(コモンズ)を増やすために使われるべきと強く思います。
格差の懸念
AIやテクノロジーが、私たちの学びを大きくサポートすることは、間違いありません。しかし、同時に大きな懸念も生みます。
ChatGPTなどのAIは、一部無料枠はありますが、「自分が理解するまで何度でも繰り返し学習する」ためには費用負担が必要です。快適に利用するためには、パソコンやタブレットと言った端末も必要ですし、安定したインターネットアクセスも必要です。
これは、各個人の経済状況によって学びの格差が生まれる可能性があるということです。
また、利用するAI自体の開発もアメリカを中心とした巨大テック企業が独占しており、寡占化が進んだ場合、現在の価格水準で恒久的に利用できる保証はありません。
また、AIモデルの学習や推論(予測・判断・結論を導くプロセス)には膨大な電力と高価な半導体が大量に必要です。
こうした理由からも、AIがある日突然、一部の富裕層にしか使えないものになってしまう。そういった可能性も考えておく必要があります。
その結果…
新しい学び方ができる人とできない人の格差
そもそも学習意欲がある人とない人の格差
など、あらたな社会の分断の種とならないように、テクノロジーの恩恵を幅広い層に届けるための政策の整備や教育システムの強化が、ますます求められます。