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人口増加率日本一のつくばの人口減少問題

令和5年1月1日現在の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」(※)において、つくば市の人口増加率は2.30%となり、市区部(町村部は除く)において全国1位であることが、総務省から発表されました。

https://www.city.tsukuba.lg.jp/material/files/group/177/No48.pdf

私が住むつくば市は、昨年、人口増加率日本一の街となったそうです。キラキラしてます。

そんな街の人口減少問題って何なの?と思われるかもしれません。

ただ、今回立候補した市議選の選挙活動において、ガソリンを使わずポスター貼りをやっていると、今まで知らなかったつくばの色んな姿が見えてきました。


つくば市の人口密度ヒートマップ

今回、ポスター貼りをお手伝いしてくれた友人が、事前に「つくば市の人口密度ヒートマップ」を作ってくれました。

つくばエクスプレス(TX)沿線を中心に人口密度が高いというこの結果は、「うん、まあそうだよね」と多くの方が納得する結果だと思います。

中心部から離れると全く違った街並みが広がる

なんとか全ての掲示板にポスターを貼ろうと回っていると、今まで足を運んだことのない地域に辿り着きます。

そして、そこに広がる風景は、人口増加率日本一の街のキラキラしたイメージとは全く違うものでした。

荒れた竹林
傷んだ空き家
除草作業が行われていない歩道
地面のアスファルトが隆起した道

空間は広々しているし、緑も多く、趣のある日本家屋も沢山あって、良い風情も当然あるのですが、人通りはまばらで、他の候補者さんの街宣車もあまり見かけません。

こうしたエリアが、至る所にあることを実感として知ることができました。

北条でのチャレンジショップの経験

実はわたし(と妻)は昨年、つくば市の企画である「チャレンジショップ」というものに応募し、およそ半年ほど筑波山麓の街「北条」で万屋巡堂という名前で、小さな食料品店を出していました。

その際に、つくば市に「周辺市街地の振興に向けた取組方針」と言うものがあり、このプロジェクトのことを、皆さん「R8、R8」と呼んでいて、周辺市街地と規定された北条、小田、大曽根、吉沼、上郷、栄、谷田部、高見原の8つの地域の振興に取り組んでいることを知りました。

この周辺市街地とは、旧町村時代に発展してきた市街地が、時代の流れによって徐々に活気を失っていっているエリアとのことでした。

実際、日曜日に店番をしていて通りの掃除をしても、人通りはほとんどなく、車の通過もまばらでした。広いつくばの普段自分が目を向けていないエリアの現実を目の当たりにした経験でした。

じゃあどうすればいいの?

こうした周辺市街地やそのほかの地域の振興、特に若い世代の定着促進というのは、簡単な課題ではないと思います。

でも、もし自分がこの課題に取り組む担当者だったら、どういうアイディアで取り組むかを考えて見ます。

移動の問題

まず第一に既に記事に取り上げた移動の問題があると思います。中心部から離れていても、自由に移動ができればそこに住みたいと言う人は増えていくと思います。

この時に注意すべきなのは、既にその場所に住んでいる人のニーズだけを課題にしないことです。将来、このエリアに定住してほしい人のニーズを想定し、対処療法的な政策ではなく、新しい地方の交通のあり方を模索すべきです。

仕事や通勤の問題

仮に公共交通機関が充実しても、すぐには人口が増えると言う事はないでしょう。次のボトルネックは仕事や通勤の問題です。

私自身、つくばから東京都中央区の銀座エリア毎日通勤していた時代がありました。ドア・ツー・ドアでおよそ2時間弱、往復4時間。年間240日程度通勤することを考えると、「2 x 2 x 240 = 960時間」となり、960時間を24時間で割ると、年間で40日相当の時間を電車の中や通勤で過ごしていたことになります。

ざっくりまるまる1ヶ月は通勤に費やしていたと知り、「私の1年は11ヶ月しかないのか…」と思ったものでした。

つくばエクスプレス(TX)を利用して通勤している方はたくさんいると思います。そういう方にとって、駅までの距離が遠いと、なかなかそこに住みづらいという問題があります。

加えて、周辺地域となると近隣での仕事が少ないという問題もあります。つくば市内の職場であれば車で移動すれば問題ないのではないかと思われるかもしれませんが、家族単位での生活の場合、常に自家用車でしか移動できないというのはやはり制約が大きいですし、お子さんがいる家庭であれば、学校や教育サービスへのアクセスなども気になると思います。

柔軟な働き方ができる人に来てもらう

こうした既存のニーズに対応するようにまちづくりをしようとすると、膨大な予算が必要となってしまいます。

私の提案としては、視点を変えて、今ある環境に少し手を入れることで、新しいニーズを掘り起こすことを考えてみたいです。

北条でのチャレンジショップの時にお会いしたある方がいます。その方は外資系企業に勤めていて、リモートワークが多かったとのことで、生活の拠点を筑波山麓においていました(その後出社が増えて残念ともおっしゃってました)。

社会全体で柔軟な働き方が増えてくれば、住む場所を自由に選べるという人も増えてくると思います。そういう人たちにも住みやすいように街を整備することで、新しい住人が増えることもあるのではないでしょうか。

バカンス型の観光振興

住人を増やすと言う政策ではありませんが、滞在人口を増やすという意味で観光振興の可能性もあると思っています。

日本で観光と言うと、どうしても人がたくさん集まる観光スポットをどう開発するかみたいな議論になりがちですが、海外の休暇の過ごし方を見ていると、2週間や1ヵ月といった長期間、特にこれといってアトラクションやアクティビティがない場所でのんびり過ごすという人もたくさんいます。

自然豊かな日本の地方で古民家などに滞在し、のんびり過ごす人を増やしていければ、滞在人口が増え、そのエリアの商店や経済も活性化するのではないでしょうか。

こう書くと海外からの観光客、いわゆるインバウンド顧客のみを対象とするようにも思えますが、今後日本でも長期休暇が取得できるような働き方は増えてほしいですし、増やすべきだと思います。

※参考図書