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保育園給食のリアル①資格とは?

保育園の調理場には、いろいろな資格を持った人が働いています。
調理師、栄養士、管理栄養士、製菓衛生師、そして資格を持たない人もいます。ただ、保育園によっては、これらの資格の違いによる待遇や立場に大きな差がない場合が多いです。多くの園では、ひとくくりに「調理員」として扱われ、基本給はほぼ同じ。資格手当が少しつくだけ、というケースもあります。

管理栄養士を雇用すると行政から補助金が出る場合もありますが、それが本人の給与に反映されないこともあります。世間や保護者の印象とは異なり、資格がなくても、他の人が資格を持っていれば問題ない、というのが現実です。

自分が経験してきた「立場」の変遷


私は、保育士からスタートしました。初めて調理場に入ったのは、保育士として働いていたときに手伝いで入ったのがきっかけです。その後、調理師として働き、さらに栄養士、管理栄養士として複数の保育園で勤務してきました。再び声をかけてもらい、同じ園に再就職したこともあります。アルバイトや実習生として働いた経験もあり、保育園給食においてさまざまな立場で食事を作ってきました。

資格とは、履歴書などに書いたりすることで、誰かに認めてもらうツールとして機能することが普通ですが、私にとっては、振り返ってみると、「見える景色が変わる」ということ。でもあります。

最初は、ただ「おいしいものを作る」ことに夢中でした。特にお菓子作りが好きで、ふわふわのロールケーキやかわいいお菓子を作って子どもたちや保育士さんたちに喜んでもらうのが嬉しかった。そうした経験から製菓衛生師の資格も取得したし、この分野で意欲的に腕を振るっていました。

でも、後になって振り返ると、それしか見えていなかった自分がいたとも感じます。そのときは、誰かがほかの部分をカバーしてくれていたのだと、今になって思います。


保育園給食の「奥深さ」に気づいたとき


離乳食の配慮や衛生管理など、保育園給食には実に多くの要素が含まれています。単に「おいしい食事を作る」だけでなく、食育や衛生、安全管理など幅広い視点が求められる現場です。初めの頃はそうしたことを総合的に意識できず、ただ目の前の仕事をこなすだけでした。

例えば、ある園ではランチルームで食事をするクラスだけにデザートが付くというルールがありました。そのとき、「栄養過多の意味で栄養のバランスは大丈夫なのかな?」と疑問を抱いたこともあります。調理の技術はあっても、栄養面の知識が不足していたため、自分の中で自信を持って提供できない部分もでてきました。(栄養士いない保育園だった)

給食を作る上で何が求められているのか。それは、保護者から?園長から?保育士から?行政から?それぞれの立場で異なる意見や要望がありますが、実際には「子どもたちのために何ができるのか」という視点が欠けていると振り回されてしまうことになります。

自分の中での「学び」の始まり


資格がなくても本や講座で学ぶことは可能だと考えましたが、当時は何をどう学べばよいのかも分かりませんでした。例えば、こんな経験がありました。
①人気のある給食が出た際、「クラスの子どもたちがおかわりをたくさんしたせいで職員がおかわりできなかった」と憤慨された保育士さんに平謝りしたことがありました。そのときは、ただ「次回は多めに作る」という対応しかできず、それでよかったのか悩みました。

また、余談にはなりますが、そういう事に応じていると、
ある職員から「副主任(保育士)は一人暮らしで、保育園で栄養をとってはるから、大盛りにしてあげて」と忖度まがいの要望がでてきます。
なんかおかしくない??

②バイキング形式の給食で、肉だけを増やして野菜を減らしてほしいという要望もあり、おかしいことはわかりますが、何をどのように伝えて理解してもらうのかが難しいなと思うことも。

③あるクラスではフォークがないと保育士からキレられ、別のクラスでは手づかみ食べの方針でフォークを使いませんと言われるなど、同じ年齢のクラスでも保育士さんのやり方による指示の違いにも戸惑いました。

こうしたことからも、「振り回されて、何かがおかしい」と感じ始め、正しい知識を持つ必要性を実感しました。そして、自分なりに学び、考え続けることで、ようやく本質的な部分に気づけるようになったのだと思います。



給食作りの「本質」と向き合うことの大切さ

給食を作るうえで、なぜ、いろいろな基準を知ったり、軸を持つことが必要なのかという説明で、次のことを挙げてみたい。

1. 給食を作るうえでの優先順位に迷ったとき
たとえば、「保育士さんの要望にすべて応えるべきなのか、それとも子どもの成長や健康を第一に考えるべきなのか」
そのためには、自分も学ばなければいけないという事


2. 子どもの食事に対する配慮の難しさ
離乳食やアレルギー対応食、手づかみ食べの練習など、年齢や発達に応じた給食を作る必要があります。しかし、それぞれの方針や意見が異なるため、現場では時に混乱が生じます。それでも、それらに関するいろんな知識を得ることは「子どもたちにとって最善の食事とは何か」に近づけるし、自分の迷いを減らせるようになるようにおもいます。

給食調理の現場で感じた「葛藤」と「成長」

保育園給食調理の現場は、時に穏やかで、時に緊張感が走る場所です。命に関わる仕事である以上、衛生管理やアレルギー対応などにミスが許されません。さらに、限られた時間と予算の中で作業を進める必要があるため、働く人の、一人ひとりの重きを置くポイント(正義の違い)がずれているとギクシャクすることもあります。

例えば、お菓子作りに力を注ぎたい人、段取りに集中する人、見た目を重要視する人、丁寧に作りたい人、スピード重視の人、園のSNSなどの発信に力を入れたい人など
どれも、子どもたちの笑顔が見たいという気持ちを誰もが持っているのに、度が過ぎると調和が保たれません。

その辺が難しい部分でもあるなと感じています

SNSで注目される保育園給食の現実

繰り返しの内容になるかもですが、最近では、SNSで保育園給食やおやつが注目されることも増えています。「かわいい」「美味しそう」といったコメントが寄せられる一方で、現場の実情を知らない人が抱くイメージとのギャップに驚くこともありますし、園長や経営者ですら、実情を知らず、映え献立こそが、保育園の給食と思っている場合もあり、戸惑います。

また、保育園の給食調理現場は、「ほのぼの」「和気あいあい」という雰囲気がないこともないですが、むしろ、時間に追われる中で効率的に作業を進める必要があり、精神的に大変な場面も多いです。「たかが給食」とは言えない仕事の重さを発信したいです。

振り返りと今後の目標

私自身何度も立ち止まったり、傷ついたりしながら、ここまでやってきました。正しい知識や経験を積み重ねることで、見える景色が変わり、少しずつ迷いやモヤモヤが解消されてきたように思います。

このnoteを通して自分が経験してきたことや学んだことを整理し、自分を含め、同じような悩みを持つ人たちの役に立てるようにしたいと考えています。また、現場で感じたやりがいや苦労を伝えることで、保育園給食の価値をもっと広められるようになればと思っています。


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