枯れたパレスチナ:盗まれた水を盗人から買う不条理

パレスチナの水問題は、以前から重要な問題のひとつである。今回は、Al-JazeeraでMohammed  Najib記者が公開した西岸地区の水不足を訴える記事を翻訳した。

Palestine runs dry:
‘Our water they steal and sell to us’
枯れたパレスチナ:
「彼らが盗み、売りつける、私たちの水」

イスラエル当局は、イスラエルの治安管理下にある地域でパレスチナ水道局が水を管理する許可を承認拒否。

パレスチナ人が灼熱の夏に深刻な水不足に苦しむ中、近辺に位置するイスラエルの違法な入植地の住人は上限なしの水を満喫している。飲料水利用だけではなくスイミングプール、農地の灌漑、洗車などその用途は様々である。

白黒の水タンクは西岸地区の市街のパレスチナ人の住宅の屋根に偏在する。これは水道が数週間にわたって止まってしまう時に備えたものだ。

対照的に、このようなタンクは近隣の入植地では滅多に見られない。入植地の水は24時間体制で利用可能で、「不足」が利用で止まることはありえないからだ。

イスラエル当局はパレスチナの水道局がCエリアで水を管理するために必要な許可証の申請を拒否している。Cエリアは新しい井戸の掘削や給水ポンプの設置なども完全にイスラエルの治安管理下にある。

パレスチナ側の行政官らによれば、イスラエルは西岸地区の水資源のうち85%を直接管理し、残りの水資源に関しても分配に影響力を持つという。一方パレスチナ当局は、莫大な水の需要のために西岸地区で追加の井戸の掘削を行うための許可証をイスラエルに求めている。

パレスチナ水道局のアデル・ヤシン戦略計画局長がアルジャジーラに伝えるところによれば、占領地に水を供給するイスラエルの水道会社Mekorotが42の井戸を管理しており、そのうち34はヨルダン渓谷に位置するという。

ヤシン局長は「問題は水不足ではなく占領軍による水の管理の方だ」という。

「我々は利用可能な水の量を増やしイスラエルの管理下に置かれなくても良いよう、新しい井戸の掘削を求めている。水は安定と自由の基礎のひとつであり、水のない国家は主権のない国家だからだ」


「15日に一度だけの水」

パレスチナ当局は最近、イスラエルに水の販売量を増やすように要求した。イスラエルは供給量を増やすためにはインフラが不十分だと回答したが、より水の価格を上げれば増量が可能だとした。

「2018年の夏から今まで、15日に一度しか水を受け取れない村がある。今年の夏はこれまでよりさらに深刻な水不足に苦しむが、どうにかしなくては」
Jerusalem Water Undertaking社(ラーマッラーの水道事業会社)のエンジニアであるバッサム・サワルヒ氏はそう伝える。
同社はイスラエルから水を引き、56のコミュニティ、40万人のパレスチナ人に独自に水を供給する。

灼熱のパレスチナの夏季の1日の平均水使用量は6万から6万5,000㎥だが、Jerusalem Water Undertaking社は顧客に対し5万3,000㎥の水の供給しかできない。

「エルサレムとラーマッラー県の人口は急速に倍増しており、このような水の需要増加も前代未聞だ」とサワルヒ氏はいう。

彼によれば、イスラエルのMekorot社は昨年まで1日3万8000㎥を供給していたが今年は3万5,000㎥に減った。

減った3,000㎥は「ラーマッラーを取り囲む入植地に送られた。彼らはラーマッラーが枯渇しても気にしない。重要なのは入植地の人々が必要な分の水を全て満喫することだからだ」とサワルヒ氏は説明する。

「彼らが盗み、私たちに売りつける、私たちの水だ」

可動タンカーに頼る

Jerusalem Water Undertaking社 は1千万シェケル(約300万ドル)を注ぎ込み、井戸の修理や復旧、ネットワークの更新、ポンプ場の設置を行なった。しかしそれでも十分ではない。

「以前は、水が止まったのも1週間ほどだ。しかし今年の夏は15から25日間連続で水が届かないこともある」とラーマッラー近郊のアルラ村の地方議会のアリ・カシブ議長は伝える。

「怒った住民から立て続けに電話があり眠れなかった。ラーマッラー県とJerusalem Water Undertaking社に苦情を入れようとしたが、人々が欲しいのは水そのもので、断水を正当化する理由ではない。彼らは可動タンカーから250ℓで61ドルという価格で水を買う羽目になっている」

ムハンマド・アブーカテル氏はラーマッラーの近郊のアイン・アリク村でパレスチナ人に水を運んで売るタンカートラックを所有する。
「水不足は毎年、4月に始まって11月頃まで続く。その期間、私たちは家々やカフェ、レストランなどに水を売るのに忙しい。しかし今年は例年に比べても水不足の危機はより深刻で強烈だ」とアブーカテル氏はアルジャジーラに答えた。

ハンナ・シャミヤ氏(38)はベツレヘム出身で、同じく水タンクの事業を所有する。
「今年の夏は水の需要が前代未聞な様子で増加している。コロナウイルスのパンデミックの影響もあって個人の衛生や除菌のために水の需要が大きく増した。

「パレスチナ当局に責任がある」

バッサム・ラヤン氏(34)はラーマッラーの5つのビル、約60室のアパートの管理人をしている。

「毎日、5〜6件ほどの電話がテナントからかかってくる。彼らは3日以上、自分たちのアパートの水タンクが空の状態だ。私自身も、今は水が家にない。彼らには(個人の)水のタンクを買うように勧める」

イスラエルの域内政府活動コーディネーター(COGAT、パレスチナ問題に対処するイスラエル国防省の機関)はアルジャジーラに、ラーマッラーのパレスチナ政府が人々への水の供給を管轄すると伝えた。

「合意によればパレスチナ当局が(占領下の西岸地区で)パレスチナの人口に水を供給する責任がある」とCOGATは声明で述べる。

「パレスチナ当局に加え、イスラエルも一年に7,600㎥の追加の水を200の接続ポイントを利用して提供している。ここから当局はパレスチナ人の消費者にも水を供給する」

Translated by Y.S.



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