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東京都民を東京タワーに誘う

数年前から同居人側の親戚から頂きものをしている。さすがに名前くらいは聞いたことはあったものの、全く付き合いが無かった彼らが、何故その年から律儀に夏と冬の年2回も何か贈ってやろうと思い立ったのかは定かでは無い。全てにおいて面倒くさがりな同居人は「こちらが贈らなければ、もう贈って来ない」という無茶な理屈を立てるのだが、届くと早々に自分の分は食べてしまうので説得力がない。

僕としては贈っても贈らなくてもどうでも良い話なのだが、後から何か言われるのはおそらく自分なので金銭で解決するのならそれで済ませたい。そこで問題となるのが、どちらが品物の選択といった事務的処理を担当するかである。僕個人としては同居人側の親戚なのだから、そちらに全て任せたい。

散々尻を叩いた結果出してきた答えが「月餅はどうか?」だった。電車の中に広告ポスターが貼ってあったらしい。潔いまでのジャストアイデアだった。その親戚は横浜周辺に住んでいて中華街も近いからそれも変かな、とも言う。それを聞いた際の第一印象は、仙台市民を牛タン屋に誘うのに似ている、だった。分かっていて何故それを挙げる? 

さすがにそれは無いと思ったので次の候補はないのかと訊くと、まだ考えていないと言う。自分の技の欠点を十分に把握しているのにも関わらず、全エネルギーを一点集中することで奇跡を起こそうとするその勇気には恐れ入るが、漫画の主人公でもなし、その勇気は蛮勇。結局、例年どおり僕が百貨店のオンラインストアから送った。何年も同じことを繰り返しているので、贈答品の内容については同居人には相談せず、何を贈ったのか教えもしない。ただ経費だけを請求する。

同居人は「ありがとう」と言う。「いつも全部やってもらって、ごめんね」と言う。大丈夫なのか、この人。プライドは無いのか? 

と、思ってはいけない。

同居人の目的はこれなのだから。こちらから見れば大したことの無い事務作業が面倒くさい。責任を負いたくない。とにかく全部、他人任せにしたい。オンラインショッピングは使わない。自分のカード情報が流出するのを極度に恐れているので、絶対に避けたい。しかし、ネットでしか手に入らないものは僕に注文してくれと頼む。



東京タワーを見たことはあっても、登ったことのない都民は意外と多いのではないか、と思う。僕は25か26歳くらいの時、人に誘われて初めて登った。とは言ってもメインデッキ(150m)と言う低い方までだが。高い方のトップデッキ(250m)と言われるところまで登るには、結構お高い料金が掛かる。
悪い人ではないのだが微妙に面倒なことになり兼ねない相手だったので警戒しながらではあったものの、彼女の言う通りなかなか良い眺めだったと記憶している。

トップデッキは現在、9月9日から10月4日までのリニューアル工事を経て、10月5日からリニューアル・オープンだそうである。ちなみにトップデッキは工事中も営業している。

東京タワーのホームページを要約

スカイツリーに高さでは圧倒的に敵わないものの、僕にとって東京のランドマークといえば相変わらず東京タワーである。そんな世代だから仕方ない。フォルム、色、そして季節で色調を変えるライトアップ。全てが素晴らしい。
とはいえ、現在でも「東京」を表現するのに東京タワーの夜景を使うのは定番の手法であり、スカイツリーにその座を譲っていない。「若い者にはまだまだ負けん」と言い出したら年寄りの始まりであるというが、そんな気負いは一切感じさせず、淡々と、そして超然と役割をこなす東京タワーの姿には、今の自分が見習うべき点を多く見い出せるように思う。



結局パクリなのだが、都民を東京タワーに誘ってみるのは、案外おもしろいアイデアだと思う。東京ばな奈、銘菓ひよ子、雷おこしを贈るよりも、ずっと良い(別にこれらのお菓子を貶めている訳ではない)。月餅は店ごとに味が違うらしいが、どれを選んでも横浜市民に贈るのは難しいと思うのだが、どうだろう。




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