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#110

今朝、てんとう虫が天井からいなくなってた。
遂に出ていったのか、特になんの世話もせず毎日「今日もいるなぁ」とフワッとした感想を持っていただけでも、いざいなくなると寂しく感じる。
それにしても今日は随分寒いけど、大丈夫なのかな。どうせ出ていくならもっと暖かい日を選べば良かったのに。そんな事を思いながら就労移行支援事業所に向かい、つつがなく帰宅すると、てんとう虫がいた。リビングのラグの上で、逆さまになってバタついていた。
ちょうど昨日確認した天井の真下くらいの位置なので、出ていったのではひく単に落ちただけみたいだった。天に向かう虫が聞いて呆れる醜態だと思った。というか、朝方僕がボケっと天井を見ていた時点でこいつは床(ラグ)の上に落ちていたはずなので、よく踏まずにいられたなと感心した。
不憫になったので外に逃してやろうかと思ったけど、越冬する為にウチに入り込んできたやつを、東京とは言えまだまだ肌寒い真冬の空に放ってやるのも気が引ける。ただ、自然の虫をあんまり世話をしてやるのも違う気がする。そもそもてんとう虫だから見逃してるだけで、虫自体は全く好きじゃない。もっとキモい虫だったらとっくにプチっとやってる。

餌について調べた。てんとう虫はアブラムシを好んで食べる、というよりアブラムシ以外殆ど食べないらしい。アブラムシ以外も与えれば食べるには食べるけど、どうもてんとう虫の体には良くないらしい。贅沢なやつだ。そして当然僕は家にアブラムシなんて飼ってない。飼いたくもない。他の食べ物を与えてかえって弱らせても良くないので、こいつの健康について考えるのは諦めた。
こんな事を考えてる間もラグの上でひっくり返りながらもがいているので、一先ずティッシュで掬って姿勢を戻し、ティッシュに乗せたままリビングテーブルの上に逃した。食事するテーブルだけど、どうせ僕以外の人間が使う事は滅多にないから別にいいや、の気持ちで。安心してお風呂に入ってあがると、今度はティッシュの上でひっくり返っていた。どんだけ不器用なんだろう。
凹凸が良くないのかもしれない。でも自然界なんて家の中以上に平面が少ないんだから、こいつを外に放ったとき、果たして自分で餌を探せるくらいの力を持てるんだろうか。まあ散々社会福祉の世話になっている僕があれこれ言える立場ではないんだけど。
とりあえず平たい紙の上に乗せて姿勢を戻した。攻撃されてると思われたのか、最初は足を閉じてジッとしていたけど、今は紙の上をジワジワと歩いては止まり、歩いては止まり、そして元の位置に戻ってくる。何がしたいんだろう。馬鹿な事やってないで冬を越すまで大人しくして、体力を蓄えてほしい。春を待たずに気が付いたら踏みつけられてました、なんて結末は本望じゃないだろう。僕も少し悲しくなる。

今まで生きてきて、こんなにてんとう虫に思いを馳せたのは初めてだと思う。一生分くらいてんとう虫のことを考えたのでこれからてんとう虫について考える機会は多分一生来ないと思う。花粉症が辛いので個人的には冬のままでいいけど、こんなにてんとう虫の事を考え続けるのも不毛なので、早いところ春になってほしい。

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