伝説のダメ人間がスーパーヒーロー級の活躍

まずはじめに注意しておきます。
今日のお話は、ウソくさい話が多いこのブログの中でも、最もウソくさい話です。
これを越える話は今後も出てこないと思います。

私が1歳になる前に、私の両親は離婚しました。私は母に連れられて、母の実家の地方に移住しました。
私は母が20歳のときの子供でした。母は地元で働きはじめ、私が小学校に上がるときに、同じ職場の男性と結婚しました。それが私の父親です。私は小さい頃から変わった子供だったので、育てるのは大変だったと思います。中学の終わり頃から非行してたし。
しかし、父は、種違いの弟二人と分け隔てなく私を育ててくれ、大学まで行かせてくれました。父は頭が良く、仕事ができる人ですが、高卒です。ガチで感謝していますし、尊敬しています。自分に同じことができるのか? と考えたとき、男としての器の違うなあ、と思います。

しかし、今日の話の主人公は、私の遺伝上の父親の方です。区別するために、ここでは、「パパ」と呼ぶことにします。
まあ離婚したので仕方がないことですが、パパは母や母方の親戚の間では「伝説のダメ人間」として語り継がれていました。
とにかくパパは女癖が悪くて浮気ばかりしており、何度か母が実家に帰って、それを迎えにきたパパが、母兄や祖父から説教されるということを繰り返していたようです。
最終的に離婚のきっかけになったのは「指輪事件」でした。毎月、貯金通帳から一定金額が引き落とされていたのを母が問い詰めると、どっかの女の人に指輪をプレゼントしたと白状したのでした。まあ、パパはそういうキャラです。

さて、話はいったん、私の大学生時代の出来事になります。当時はまだ私は発達障害というものを知りもしなかったので、「自分という人間の謎」を知りたいという気持ちが強かった頃です。そんなこともあってか、自分のルーツであるパパに会ってみたかったわけです。

私は0歳の頃に住んでいた家を訪れ、祖父と再会し、パパの再婚相手の「おばさん」や、腹違いの妹、弟、その他、何人かの親戚とお会いしました。

そのとき、皆さんが私に口を揃えて言っていたのが喋り方や雰囲気が「パパとそっくり」という言葉です。私はこれまで生きてきて、誰かと似ているなどと言われたことはほとんどありません。

私はどうしても「おばさん」に「指輪事件」のことをききたくなってしまいました。「おばさん」が指輪をもらった女の人だったのか。
それは衝撃的な答でした。
「それあたしじゃないよ。多分、誰かわかる」
「パパは昔、自動車学校の先生してて、あたし達はそこで知り合ったんだけど」
「同じ頃に自動車学校に入って女の子達で仲良くなって、5人のグループができたのね」
「卒業したのはちょっとずつ時期ずれてたけど、みんな無事に免許取ったから、一回集まって飲もうって話になってね」
「で、集まって発覚したんだけど、パパは5人全員に手を出してたの。その中に、1人、すっごいキレイな子がいたから、たぶん、その子じゃないかな」

絶句。おれよりクズやんww

しかし、そんなパパですが、私はその後、パパ方の祖父達から信じ難いエピソードを聞かされることになったのです。

それは、まだ寒い時期の夜。法事か何かで親戚が集まった帰りでした。皆で街灯の少ない、暗くて狭い道を歩いていたそうです。道は川に沿っており、川は雪解け水で増水していました。
母は0歳の私をしっかり抱いて歩いていました。

そんな時でした。母が、道のぬかるみを踏んで、思いっきり足を滑らせてしまったのです。

そして私はハンマー投げの要領で川に飛んで行きました。

母が叫び、皆んなが川に入って、暗闇の中、必死の捜索が行われました。しかし、普通に考えて、夜の川に落ちた赤ん坊がそう簡単に見つかるわけがありません。どこまで流されたかも分からないのです。誰も時間を計っていなかったので、正確には分かりませんが数十分程度の絶望的な時間が流れたそうです。

しかし遠くからパパの雄叫びが聞こえました。パパが水中から私を見つけたのです。

エスパーか? 

と言いたくなるのですが、パパは素潜りで10mいけるほど泳ぎが達者で、運動神経抜群、陸上部で県記録をもつほどの男だったのです。

更に信じ難い展開が続きます。パパはすっかり冷たくなってしまった私を抱え、とにかく一番近い民家にダッシュし、そのまま中に突入して、「フロー!フロどこじゃー!」とわめきちらして、フロを発見し、戸を開けると中に入っていた若いお姉さんが「キャーッ!」と悲鳴をあげました。パパは、

あっためてくれ!

と言って私をそのお姉さんに手渡しました。そして温めてられた私は、無事に蘇生していたようです。

何からツッコんだら良いのかわからないほどムチャクチな話ですが、この話の信憑性を高める出来事がありました。

○母は、私にこの話を一回もしなかった。
○元奥さんを実家に連れて行った歳、母はこの話を元奥さんにこっそり教えた。

無理矢理解釈してみると、
極端な低体温で、仮死状態になったことにより、代謝が殆ど止まり、酸欠による後遺症が残らなかったっていうことになるのかな?

どうやら調べてみると、似たような事件が無いわけではないようです。
「伝説のダメ人間」が一回だけ「スーパーヒーロー」になって赤ん坊の頃の私を救った、というお話でした。

事実は小説よりも奇なり。


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