無職日記12/29(水) 「カテゴリー5」の私でも、1週間ずっと電話を待っていた。 Even I, who is in "Category 5", has been waiting for a call for a week.

 12/22(水)の面接の結果の電話を1週間待ったけれど、結局かかってこなかった。「採用の場合のみ連絡します」と面接担当32歳(推定)Fさん(名札に書いてあった)のショートカットの元気な女性の、面接終了間際の眩しい笑顔に期待したわけでもないが、正直、若干落胆している。電話がないのだから不採用なのだろう。それはそれで仕方ない。なぜ不採用なのですか?などと野暮なことは、いや野暮というレベルではなくて、ルールというかマナーとして、Fさんに聞くわけにはいかない。もちろん私だって聞こうとも思わない。

 その代わりである。ここからは私の勝手な推理である。担当者Fは面接で「採用について年齢性別経験の制限がない(つまり、それらが理由で不採用になることはない。ただし高校生は不可)」と何度も力説していた。
 ではなぜ私は不採用になったのか? 詳細はわからないが私なりに推理すると、まず4つのカテゴリーがあるとする(性別については、ここではあえて触れない)。1若くて経験者、2若くて未経験者、3若くなくて経験者、4若くなくて未経験者、である。カテゴリーの順に採用を決定していって採用枠に達したから、私は不採用になったのだろうと思う。
 採用枠は何人なのかわからないから仮に20人とする。応募は私を含めて21人だったと仮定する。カテゴリー1で10人、カテゴリー2で5人、カテゴリー3で4人、カテゴリー4で1人を採用した。
 私はカテゴリー4だから、私と同じカテゴリー4の、私以外の人が採用され、私が不採用になったのだ。これはこれで残念だが納得はできる。

 私はここで、よせばいいのに、その店の採用サイトをのぞいた。募集を締め切っていることを確認するためにである。すると、まだ来年も募集しているではないか。
 この店は実は、まだ開店していない。来春2月?開店に向けてのオープニングスタッフ募集なのだ。面接時の担当者Fの口ぶりでは「年内に決めたい。年明けから研修をしたい。いつから働けるか」という勢いを感じた。だがしかし募集は続いている。どういうことなのか。

 ここからは、また私の勝手な推理である。担当者Fは、4つのカテゴリーの中の、カテゴリー1の「若くて経験者」のみで採用枠20人を満たしたいのだ。もっと邪推すれば性別はずばり女性である(理由は長くなるので省くが、簡単に言えば、その店は「その店にお客として来てほしいと想定する人を採用する」のだ。たとえば容姿や年齢や性別において)。
 この私の推理はきっと大きく外れてはいないと思う。だとすれば、カテゴリー4の未経験おじさんに対して、その旨を非公式に耳打ちして「だからあなたは無理ですよ」と引導を渡してほしかった(公式には無理なことは諸事情から理解できるし、私はそう言われても訴えたりしないから、だからこそ、ささやかな親切心として)。確かに、これはこれで残酷(?)だが、逆にスッキリしていて納得する。
 もしも、耳打ちがあれば1週間も待たずに、期待せずに、その日のうちに私は次の仕事を探したはずだ(その有無や採用不採用は問題外)。時間を返してくれとは言わないが、残念だったな、と思う。

 私が応募した最大の理由は「採用について年齢性別経験の制限がない」という以前に、この店のコンセプト(物語)とプロダクツ(商品)に共感(共鳴)したからだ。
 私は、この店が、まだずいぶん小さいころから知っている(親戚のおじさんみたいに)。ずいぶん大きくなったね。頑張っているね。これからも頑張ってね。もし私が食うに困らないおじさんなら株を買って援助したいくらいだ、と本気で思った。
 たまたま今私は無職で、歩いて通える距離に新店ができるし、オープニングスタッフの募集があって、それに応募した。縁があれば働きたいと強く思った(無謀にも)。商品以外で初めて採用面接という形でこの店と接点を持った。そして物語の内部を少し知ることになる。それってバックヤード的な感じかもしれない。バックヤードには、その善悪は別としても(私は耳打ちがなかったことを「悪」だと断定はしないが)親切心は不足していた、と落とされた方の人間として実感する。

 ここまで書いてきて、まさかと思うことに気がづいた。「カテゴリー5」があったかもしれない。「カテゴリー5」とは以下のようなものである。

「未経験のアラカンなんて、最初から落とすと決まってる人ですよ。でもほら世の中がこんな感じで、とりあえず面接しないと、まずいし。だって面接しないわけにはいかないでしょ? 私だって、忙しい仕事の合間に(会う前から送信されたプロフィールで)最初から落とすと決まっている人に、30分も面接するって、個人的にはここだけの話ですが、はっきり言って時間の無駄だと思いますけど。でもね面接はしないといけないんです。つまり落とす人は客でもあるからですよ、仕方ないんです。面接しないで悪い評判をたてられたら、それはそれで困るんです。ええ、そのための貴重な30分です。もちろん私個人の判断じゃないですよ。上の、ずっと上の本社の人事の採用担当の方の判断ですから、いわゆる業務命令です。私も大変なんです。私がその人を落としたあとも、つまりその人が不採用になったあとでも、その人にこの店で客として買い物してもらわなきゃいけないから、相手には気持ち良く落ちてもらわないといけないし。正直、面倒くさいんです。「それも仕事だぞ」と上司からはよく言われますけど。だからこんなこと私も言いたくないけど、勢いで言ってしまいますけど、ここだけの話、落とす人に言いたいのは言えないけど、応募する前に忖度しろっていうか、空気読めっていうか、そういう気配りができないから、できてもだけど、不採用だし、だから落ちる人、落ちた人って、結局、今無職なんじゃないんですかね? どう思いますか? 私どこか間違ってますかね?」

 この推理は大きく外れて欲しい。私も過去に採用面接を担当して何人も落とした経験があるから、落とす方の大変さは理解できる。けれど私は何度も非公式に親切心で耳打ちしたタイプの担当者だったから、そういう親切心も物語に内包していてほしかった、と親戚のおじさん的に思う。
 蛇足として、もう少しだけ。落とす人も面接しなければならないとか、不採用でも1週間待たせるとか、そういうルール(それは人のためではなく会社のためのように思えるルール)が仮に存在しているなら、落ちていく人たちにとって、より残酷であるといえないだろうか。優しい残酷さという意味での親切心を求めるような私の方が「私どこか間違ってますかね?」なのだろうか。
 それからこれも、負け犬の遠吠え的に聞こえるかもしれないかもしれないけど、何となく、あの店の商品はもう買わないと思う。落ちた(落とされた)からじゃないよ、と言えば嘘になるかもしれない。けれどそれは落ちた(落とされた)「カテゴリー5」としては仕方ないよね。採用されたら社員割引で買いまくろうと思っていたわけだからさ。まあ私一人分客が減っても関係ないだろうけれども。
 まあ縁がなかったということで諦めましょうね(と妻が笑う)。来年こそ良い仕事に出会いタイガー(私、年男、寅年なもので…笑)。

 追伸 久しぶりに(つぶやきではない)長文が書けただけでも、落ちた(落とされた)意味はあったかもしれない。内容的には無意味でもね。ずいぶん何度も推敲したけれど、何度書き直しても結局、負け惜しみ的になってしまう。言いたいことの、書きたいことの、そのほとんどはどこかに消えていく寒い朝。


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