見出し画像

リスクオフトレードを背景にドルが上昇、ユーロは経済指標の悪化を受け下落  外国為替(FX)・デイリーレポート2024.10.2(2024.10.1)

株式会社B.C.Aマネージメント
市場調査室
外国為替グループ

市況概況
 1日の外国為替市場ではドルが上昇した。米東部港湾労働者による大規模ストライキや中東情勢の悪化を背景としたリスクオフトレードが活発化するなかドル買いが先行した。また、ユーロ圏経済の指標悪化を受けて欧州中央銀行(ECB)が10月の理事会で追加利下げを実施するとの観測もドル買いを支援する要因になった。
 一方、ユーロドル(EURUSD)は下落した。この日発表された購買担当者景気指数の悪化を受けてユーロ売りが優勢となり、米国時間帯にはイランがイスラエルへ向けて複数のミサイルを発射したとの報道を受けて一時1.10450ドル付近まで下落した。この日、S&Pグローバルが公表した9月のユーロ圏HCOB製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は45.0となり、速報値の44.8から上方修正されたものの、前月の45.8%から低下し、9カ月ぶりの低水準となったほか、市場予想の45.8を下回った。また、ドイツの9月のHCOBPMI改定値は40.6となり、速報値の40.3から上方修正されたものの、8月の42.4から低下し1年ぶりの低水準となったほか、市場予想の40.3を下回った。一方、9月のフランスのHCOBPMI改定値は44.6となり、8月の43.9から上昇し、市場予想の44.0を上回った。ただ、HCOBのアナリストが記載したコメント欄には需要減少やコスト上昇による下振れリスク、政治的不確実性の影響で製造業は悲観的な状況になっているとした。また、欧州連合(EU)統計局が発表した9月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)は前年同月比1.8%上昇となり、前月の2.2%上昇から鈍化したほか2021年6月以来の2%割れとなった。また、市場予想の1.9%も下回った。コアHICPは前年同月比2.7%上昇となり、前月の2.8%上昇から鈍化し、市場予想の2.8%上昇を下回った。

 この日、リスクオフトレードのきっかけとなった米東部港湾労働者のストライキは1日から開始された。国際港湾労働者協会(ILA)に加入している4万5000人が参加すると見られ、米東部海岸やメキシコ湾の物流に混乱が生じており、サプライチェーンの寸断によるインフレ再燃や供給不安が世界的に拡大することが警戒されている。尚、ILAがストライキに突入するのは1977年以来。また、中東ではイランがイスラエルへ向けて約180発のミサイルを発射したとイスラエル軍が発表した。また、ロイター通信によると、イラン革命防衛隊も国営テレビを通じてイスラエルへの攻撃を発表した。イスラエルによるハマスやヒズボラ指導者暗殺に対する報復攻撃と見られる。一方、発射されたミサイルはイスラエル軍と米軍が迎撃したと伝わっているがイスラエル軍がイランへの報復攻撃を示唆するなど中東地域での緊張が高まっており、市場の警戒感は強まっている。尚、商品市場では中東の地政学リスクを背景にWTI原油先物11月限が前日比1.66ドル高の69.83ドル、COMEX金先物12月限は前日比30.9ドル高の2690.3ドルと急騰した。

 ポンドドル(GBPUSD)も下落した。S&Pグローバルが9月のPMI改定値を発表すると、英経済の減速が意識される展開となり、ポンド売りが優勢となった。また、米国時間帯ではリスクオフトレードが活発化するなか、ドルの上昇を受けて下げ幅を拡大し一時は1.32370ドル付近まで下落した。NYクローズにかけては安値修正から下落幅をやや縮小したものの、1.32860ドル付近で上値の重い状況が続いている。尚、S&Pグローバル/CIPSが発表した9月の英国のPMI改定値は51.5となり、速報値からの修正はなく、前月の52.5から低下し、市場予想の51.5と一致した。

 ドル円(USD/JPY)は、日本時間帯は「石破ショック」の巻き戻しに144.530円付近まで円安が進んでいたが、その後はユーロ圏経済の悪化や中東の地政学リスクが警戒される展開となり、リスクオフトレードが活発化するなか、リスク回避のドル買いと円買いが共存し、143~144円のレンジ内で膠着する展開となった。また、この日は複数の米経済指標が発表されたものの、内容的にはまちまちとなり、ドル円(USD/JPY)への影響は限定的だった。
 尚、米労働省が発表した8月の雇用動態調査(JOLTS)は、求人件数が804万件となり、前月から32万9000件増加し、市場予想の766万件を上回った。一方、8月の採用件数は531万件となり、前月から9万9000件減少した。米供給管理協会(ISM)が発表した9月の製造業景気指数は47.2となり、前月から横ばいとなり、市場予想の47.2とも一致した。ただ、景気判断基準の50を引き続き下回った。新規受注が上昇したものの、雇用が低下した。

 また、シカゴマーカンタイル取引所(CME)が30日物FF金利先物から算出する金利見通し(FedWatch )にも大きな変化はなく、11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で50bpの利下げが実施される確率は前日の34.7%から37.3%へわずかに上昇した。ただ、今後、港湾ストライキの長期化や中東情勢の悪化が続き、米経済に深刻な影響を及ぼすようになると再び50bpの利下げ確率が上昇してくる可能性もあり得る。

(当レポート1時間足のチャートは全て日本時間で表記しています)

※当社の提供する情報及びレポートは、著作権法により保護された著作物です。著作権は株式会社B.C.Aマネージメントにあります。内容の一部、またはすべてを複製、流用および転載、転売することを禁じます。
※当資料は情報提供を目的としており、お取引を促すものではなく、また将来を約束するものでもございません。売買等のご判断はお客様ご自身でお願い致します。

いいなと思ったら応援しよう!

B.C.Aマネージメント
よろしければ応援お願いします! いただいたチップは弊社の活動費に使わせていただきます!