欧州通貨が下落、ドル円は拮抗も円は対欧州通貨で上昇 25日早朝からドル急落 FX・デイリーレポート2024.11.25(2024.11.22)
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市場調査室
外国為替グループ
ユーロドル(EURUSD)は続落。日本時間帯から欧州時間帯序盤まで1.0470ドルの狭いレンジ内で方向感を探る展開になった。その後はユーロ圏や圏内主要国の購買担当者景気指数(PMI)が軒並み前月から大幅に低下したことを受けて改めてユーロ圏経済の減速に対する懸念が強まるなか、欧州中央銀行(ECB)の利下げペースが想定よりも速まるとの観測からユーロ売りが膨らみ一時1.0333ドル付近まで急落した。その後は安値修正から買い戻され1.0435ドル付近まで下落幅を縮小したものの、ウクライナ情勢の緊迫化による地政学リスクや米国との金利差拡大観測が上値を抑える展開となり、戻りは限定された。
S&Pグローバルが公表した11月のフランスのHCOB総合 PMI速報値は44.8となり、前月の48.1から急低下し、今年1月以来の低水準まで落ち込んだ。市場は48.3と前月からわずかな上昇を予想していた。サービス業PMIは45.7となり、前月の49.2から大幅に低下し、市場予想の49.0を上回る落ち込みとなった。製造業PMIは43.2となり、前月の44.5から低下した。市場予想は前月から変わらずの44.5だった。
また、S&Pグローバルが公表した11月のドイツのHCOB・総合PMI速報値は47.3となり、前月の48.6から低下し市場予想の48.6を下回った。サービス業PMIは49.4となり、前月の51.6から低下し。景気判断基準の50を割り込んだほか、市場予想の48.6を下回った。一方で製造業PMI速報値は43.2となり、前月の43.0からわずかに上昇し、市場予想の43.0を上回った。これまで製造業の減速をサービス業が補ってきたが、3指数ともに景気判断基準の50を下回り、ドイツ経済の減速が改めて示された。このほか、ドイツでは国内総生産(GDP)改定値が発表されているが、速報値から下方修正された。ドイツ連邦統計庁が22日発表した第3四半期GDP改定値は前期比0.1%増となり、速報値から変わらずの予想に反し0.2%増から下方修正された。
S&Pグローバルが公表した11月のユーロ圏HCOB総合PMI速報値は48.1となり、前月の50.0から低下し景気判断基準の50を下回り、10カ月ぶりの低水準となった。市場予想は前月から変わらずの50.0だった。サービス業PMIは49.2となり、前月の51.6から低下し景気判断基準の50を割り込み、前月から変わらずの予想に反し大幅に低下した。製造業PMIは45.2となり、前月の46.0から低下した。市場予想は前月と同じ46.0だった。3指数は揃って前月から低下し、いずれも景気判断基準の50を下回る結果となった。特にサービス業が10カ月ぶりの低水準となり、ユーロ圏経済を支えることが難しい状況となっていることが示されたことで、先行きの不透明感が増す要因になった。
また、米商品先物取引委員会(CFTC)がNYクローズ後に発表したCommitments of Traders (COT) Reportsによると、11月19日時点の非商業筋(ファンド、機関投資家など投機筋)のCMEユーロ先物のネットポジションは42,557枚の売り越しとなり、前週から35,120枚売り越し幅が拡大した。
ポンドドル(GBP)も続落した。日本時間帯序盤から前日の流れを引き継ぎ弱含みで推移すると、欧州時間帯ではユーロの下落や英国のPMI速報値が前月から低下したことを受け売りが優勢となり一時1.2485ドル付近まで下落した。その後は安値修正から買い戻され下落幅を縮小したものの、上値は1.2535ドルが戻り抵抗となり上値は限定された。
この日、S&Pグローバルが公表した11月の英国の総合PMI速報値は49.9となり、前月の51.8から低下し景気判断基準の50を下回った。市場予想は前月から変わらずの51.8だった。製造業PMIは48.6となり、前月からの上昇を見込んでいた市場予想の50.0に反し低下し、前月の49.9も下回った。サービス業PMIは50.0となり、前月の52.0から低下した。市場予想は変わらずの52.0だった。
また、米商品先物取引委員会(CFTC)がNYクローズ後に発表したCommitments of Traders (COT) Reportsによると、11月19日時点の非商業筋(ファンド、機関投資家など投機筋)のCMEポンド先物のネットポジションは40,315枚の売り越しとなり、前週から15,735枚売り越し幅が縮小した。
ドルは続伸した。ドルインデックス(DXY)は日本時間帯序盤から欧州時間帯序盤までは107.00付近で膠着。前日の上昇が一巡し、欧米PMIの発表を控え様子見ムードが広がるなか方向感なく推移した。一方で、トランプ次期大統領が掲げる政策がドル高を招くとの観測やウクライナ情勢の緊迫化を背景としたリスク回避のドル買いが引き続き下値を支えた。欧州時間帯に入ると、ユーロ圏主要国のPMIが前月から大幅に低下したことを受け、米国経済との相対的比較から欧米間の先行きの金利差拡大が意識される展開となり、ユーロやポンドが売られ、その受け皿としてドルが買われ一時108.05付近まで急伸した。
その後は高値修正から107.50付近まで水準を切り下げたものの、この日発表された米国のPMI速報値が前月から上昇し、米国経済の底堅さが改めて示されたことを受け、米国時間帯は終盤まで107.50付近で安定的に推移した。
米S&Pグローバルが22日発表した11月の米総合PMI速報値は55.3となり、前月の54.1から上昇し、2022年4月以来の高水準となった。また、市場予想は54.3でこれも上回った。サービス業PMIは57.0となり、前月の55.0から上昇し、2022年3月以来の高水準となったほか、市場予想の55.2も大幅に上回った。製造業PMIは48.8で景気判断基準の50を下回ったものの、前月の48.5から上昇し、市場予想の48.8と一致した。引き続き好調なサービス業が米経済を支えていることに加え、製造業にも回復の兆しが見えている。
また、米ミシガン大学が22日発表した11月の消費者信頼感指数の確報値は71.8となり、前月の70.5から上昇したものの、速報値の73.0から下方修正され、市場予想の73.7を下回った。ただ、4カ月連続で上昇した。1年先の期待インフレ率は2.6%となり、2020年12月以来の低水準となったが、5年先の期待インフレ率は3.2%と前月の3.0%から上昇した。
これらの結果を受けて12月のFOMCでの追加利下げが見送られる可能性が高まり、市場では利下げを前提としたポジションの修正が進んでいる模様。シカゴマーカンタイル取引所(CME)が30日物(フェデラル・ファンド・レート)FF金利先物から算出する金利見通し(FedWatch )によると、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で25bpの利下げが決定される確率は前日の55.9%から52.7%へ低下し、利下げが見送られる確率は44.1%から47.3%へ上昇した。尚、今月末から来月初めには米個人消費支出(PCE)や雇用統計など普段から注目度の高い経済指標の発表が複数控えており、米連邦準備理事会(FRB)や市場にとっても、その結果は金融政策の決定やその予測に対し極めて重大な影響を及ぼすものになる。
※日本時間25日午前8時追記
日本時間25日早朝から外国為替市場ではドルが主要通貨に対し急落。DXYはマーケットオープン時に107.00付近まで下落して取引が開始された。ドル円は154.10付近まで円高が進行。22日のNYクローズ後に米財務長官に指名された投資家のスコット・ベッセント氏がドル安支持者であることや財政規律を重視していることが影響している模様。また、同氏はかつて次の米連邦準備理事会(FRB)議長を早期に指名することで、現FRB議長の発言を無力化し、影でFRBをコントロールすることが可能になるとの見解を示していた。
ドル円(USD/JPY)は日本時間帯序盤に154円を割り込む場面も見られたが、前日までの対ドルでの円買いが一巡し、全般的には154.20~154.95円のレンジ内で推移した。日銀の12月会合での利上げが意識されるなかFOMCの利下げ見送り観測を受け、対ドルでは売り買いが拮抗した。ただ、米国時間帯に一時的に155円を超えるなど、この日のレンジ上限の154円台後半での推移となっており、引き続きドルの先高観がドル円の下値を支える要因となっている。
また、米商品先物取引委員会(CFTC)がNYクローズ後に発表したCommitments of Traders (COT) Reportsによると、11月19日時点の非商業筋(ファンド、機関投資家など投機筋)のCME円先物のネットポジションは46,868枚の売り越しとなり、前週から18,034枚売り越し幅が縮小した。投機筋は日銀の利上げに対する警戒感やウクライナ情勢の緊迫化を受け、比較的地理上の地政学リスクの低い円を買い戻してる模様。
一方、円は対欧州通貨では続伸した。ユーロ円(EUR/JPY)は、欧州時間帯にユーロ圏経済の減速懸念を背景としたユーロの下落主導で円が買われ節目の160円を割り込み一時159.88円付近まで下落した。その後は安値修正から買い戻され、米国時間帯には161円台を回復したものの、週末のNYクローズへ向けて積極的な売買が徐々に減少していくなかで上値は重く161.35円が戻りの限界となった。
また、ポンド円(GBP/JPY)も下落した。ユーロ同様にポンドの下落主導で円が買われ、欧州時間帯には一時192.85円付近まで下落した。
(当レポート1時間足のチャートは全て日本時間で表記しています)
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