20年間推しを拗らせた限界夢女子が人生初の文庫同人誌を作った話

はじめに

 初めまして。ユリと申します。
 表題の通り、人生初の同人誌を作ったので、自分の覚書も兼ねて一から何をやったのかまとめておこうと思い筆を執りました。お付き合い頂ける方はお好きな曲でも聴きながら眺めて頂ければ幸いです。

※注意※ ほんの少しですが、夢小説と呼ばれる文章の本文画像があります。受け付けない方は申し訳ありませんがここで引き返して頂きたく思います。

 とある20年以上前のゲームに人生の最推しがいます。それについてはアキネーターでも出てこないようなキャラなので割愛しますが、まぁ所謂限界夢女子というやつになってしまい、当時から大学ノート二冊を長編の怪文書で埋めたり古の個人サイトでそちらを書き直してみたり、そんな事をしておりました。そうして長らく放置し、色々あって2023年11月末に一旦の完成版をpixivに上げる事ができました(諸事情により現在は非公開)。本当に自分の、自分による、自分の為だけの夢小説です。
 この時点での20年分の幻覚は13万字程。ここまでやったからには、一度人生初の本を作ってみても良いんじゃないかと思い、色々調べつつ2024年2月頭くらいから本格的に本の制作に取り掛かりました。原稿を整えたり、既存部分の書き足しや修正、新しい話を書き下ろしたりして、最終的には450P18万字、厚さ2cm弱の本が完成したのが4月中旬くらい。書き下ろしだけで5万字程度を2か月弱で書いたらしいですね、その合間にも他の話やここに入れられなかった話も同じくらい書いているので生き急ぎが過ぎる……。

 そんな話は置いておいて、原稿に取り掛かってからやった事や環境、手こずった事などをざっとまとめてみたいと思います。
 忘れてましたが大前提。私は同人誌など作った事がない。A5の所謂同人誌は大量に持っていたけど文庫同人誌はほとんど手に取った事がない。けれども字書きの端くれとして、作るなら文庫同人誌が良い。欲を言えばカバーも付けたい。こんな人間でもちゃんと本が作れたんだよという話です。誰かの勇気になると良いな。

やった事

 さて、まず何をするか。ジャンルがマイナーだったり夢本の需要の無さだったりと障壁が多すぎるので、イベント参加どころか頒布すらハナから考えていませんでした。この時点で締め切りという概念が存在しないので、人によってはスケジューリングが難しかったりするのかな。私は本当にぼんやりですが、4月末を入稿の期限に定めてみました。2月頭からおよそ3ヶ月あれば何とかなるかなという感じで。
 期限を決めた所で、次は環境を整えるべく原稿のテンプレートやら何やらを揃えました。

①原稿用のテンプレート

 自分はPC環境があるので、メインの執筆はスマホでポチポチ、それをGoogleドライブに適当に上げて原稿本体はWordで、こちらの2種類のテンプレートを併せて使わせて頂きました。特に後者のテンプレートは章見出しのヘッダー反映の所とかが本当に助かりました……。

②フォント

 皆大好き源暎こぶり明朝。私も大好きです。多分表紙とかも含めて全部このフォントで行ったと思います。ありがとうございます。

③PDF周り

 WordのPDF出力や、Microsoftの仮想プリンタでは上手く出ない部分があったので、こちらの仮想プリンタを使用しました。とりあえずこれを使えば間違いないんじゃないかと思ってます。

 出力したPDFをこちらのアプリ版で確認する事もありました。見開きで確認ができる、マーカーが引ける等色々便利です。ただ自分は普通にPC上でPDFも確認したのでそこまでは使わなかったかな。

④表紙、カバー周り

 なんでこれが無料で使えるんですかね??? 絵は描かないのでその辺の使用感は分かりませんが、表紙やカバーのデザインをちょこっと頑張る程度なら何の問題もなくスムーズに使えました。一応大昔にフォトショで遊んだ事くらいはあったので、「レイ……ヤー……?」みたいな事にはならなかったのが幸いでしたね。それでもきっと慣れた方から見ると度し難い使い方をしていたのだとは思いますが。

 実際の作業について書いていきます。

①pixivのテキストをWordテンプレートに落とし込む
 コピペするだけやん? と思うかもしれませんが、結構手を加える必要がありました。横書きと縦書きで色々とお作法が異なる部分が多いので、それらを抜けなく縦書き仕様に落とし込むだけで割と大変でしたね。

②誤字脱字表記揺れ誤用の撲滅
 一生かかりました。最初から最後までやってました。それでもきっとまだどこかには潜んでいるのかもしれません。特に表記揺れの撲滅がしんどくて、「問題ない」「問題無い」とか「二人とも」「二人共」とか、とにかくそういうのをどちらかに統一する作業を一生やってました。

③章扉、目次、奥付、注意事項等の作成
 センスなんて無いので、適当にシンプルに作りました。ただ奥付と注意事項は何を書くべきかちゃんと調べて書くようにはしました。

④ネタ出し、執筆
 これもずっとやってました。完全新規の話もあれば、既存の部分に追加したり派手に加筆修正したり、とにかく書きたい事は全部書こうと突っ走っていました。しかし思わぬ所でストップがかかります。それは次項目で。

⑤印刷会社の選定、用紙・装丁の決定

 印刷会社の選定についてはこちらが非常に参考になりました。極少部数しか刷るつもりがない、そこまでのこだわりはない、文庫サイズでカバーが付けられれば御の字という事で、今回は印刷通販ちょいのまさんを利用しました。ブックカバーは当初別の所にお願いしようかと思っていましたが、ちょいのまさんもオプションでやって下さっていたので併せてお願いする事に。

 用紙見本は印刷会社を決める前にスタブさんとちょいのまさんに請求してみました。用紙見てるだけでめちゃくちゃわくわくしてモチベ上がりまくりでしたね。

大きさはスタブさんがB7くらい、ちょいのまさんがA7くらい

 どちらも無料で結構なボリュームの見本を頂けて有り難いばかり。実際触ったりしつつ、最終的な装丁は以下の通りになりました。

・A6、右綴じ、無線綴じ
・本文用紙:淡クリームキンマリ57kg
・表紙:新・星物語180kg パウダー
・カバー:マットコート紙110kg、クリアPP

 ちょいのまさんは表紙やカバー等の自社のテンプレートというものがなく、他社さんのテンプレートを使用して良いとの事だったのでスタブさんのテンプレを使わせて頂きました。問題なく入稿できたので良かったです。
 先述した執筆ストップの件ですが、ちょいのまさん、元々激安なのですがページ数が450を超えると値段が少々上がります(それでも決して高くはないのですが)。それもあり、じゃあ450Pで作るかと一種の縛り条件が得られてある意味良かったです。際限なく書いていたらそれこそいつ終わるかわからなかったですしね。

⑥余白弄り
 今回一番やらかした所です。先述の通りWordのテンプレートに栄光さんのを使っていました。初めはデフォルトの余白のままでやっていたのですが、なるべく詰め込みたかったので最終的には下記のようになりました。

41文字16行、本当に詰め込みました

 ここで罠がありました。栄光さんのテンプレートは上下左右3mmずつの塗り足しあり。つまり実際の余白は上記より3mm少ないのです。
 ノド、足りてなくない?? これに気付いたのがなんと入稿後。もうそれなりに読める事を天に祈るしかありませんでした。
 しかもこの余白弄りを始めたのが章扉等の作成後。苦労して配置した章扉のテキストボックスやら隠しノンブルやらが全部ずれる。あまりにも愚か。皆さんは余白弄りは極力原稿の初期にやっちゃいましょう。私も次は真っ先にやろうと思います。
 ちなみにちょいのまさんは隠しノンブル不要でした(あっても良い)。まぁつける癖はつけておいた方が良い気がするのでこれについては気にしてないです。

⑦表紙作成
 ページ数がほぼ決まっていたので、ちょいのまさんの背幅計算で計算した所16.9mmとの事。けれどもなにぶんこちらは初心者。1mm毎にテンプレートが用意されている世界においてどの程度きっちりやるべきなのか、あるいは余裕を持たせるべきなのか、全く分からない。新星物語の厚みが0.25mmとの事だったので×2で0.5mm足して17.4mm程度。なら18mm想定で作れば良いのかな…? という感じで手探りで作ってみました。さしてずれが影響するようなデザインではなかったので多少は良いだろうと思う事にしました。

⑧カバー作成
 フリー素材を使わせて頂き、こちらも何mmのテンプレートを使うべきなのか物凄く悩んで結局19mmのテンプレートを使う事に。塗り足しだの折り返しだの慣れない考慮ばかりで頭を抱えていましたが、どうにかそれっぽいデザインのカバーができました。素材さまさまです……。

⑨校正
 地獄。一生終わらない。表記揺れを見つけては潰し、重複表現を見かけたら直し、同じ言葉が続いていたら言い換え、主語が足りないと思ったら足し、その合間にも追加のネタが降ってくる。いくら内容全部理解しているとは言っても、流石に18万字ともなると一周読むのも一苦労。それでもどうにか終わらせられたので良かったな……。

⑩入稿
 この辺りは印刷会社によってよりけりだと思うので割愛。特に不明点やこちらの不備もなく、スムーズに事が進んで安心しました。

困った事

①PDF変換時、訳の分からない現象が発生する その一
 下記2つの画像を見てもらった方が早いです。

やりたかった事
何故か発生した事象。何で??

 未だに何が起こっているのか全く分かっていません。恐らく源暎こぶり明朝の「?」二文字が一文字に変換される系の処理が悪さをしているのかなと思っていますが、結局原因究明はできませんでした。ただ、何故か一度入力し直すと一枚目の正しい見た目で出力できたので、それでどうにかしのいだ形です。入稿データもおかしな事にはなっていなかったようでホッとしました。

②PDF変換時、訳の分からない現象が発生する その二

 こちらの「何度設定してもサイズ設定がリセットされる」の現象がバッチリ発生しました何でだよ!! ですがありがたい事にこちらの方と同じ解決策でしのぐ事ができたので良かったです。いや本当に良かった。先の現象といい何が悪いのか全く分かりませんが、どうにかやりたい事をやりたい形で実現できてホッとしましたね。

完成

 色々ありましたが、2024年4月某日に満を持して本が手元に届きました。

RGBとかCMYKとかさっぱりわからんちんですが、綺麗に印刷して頂けたと思います
一番危惧していたノド。思ったよりは余裕で耐えました

 これが本当の本当に幻覚の集大成だと思うと感慨深いものがありますね。キンマリの手触りがものすごく良くて感動……。
 上で書いてますが、ノドは思ったより普通に足りてて安心しました。本が分厚いのと紙が薄いので開きやすいというのもありそうです。ざっと何周か読みましたが、多分誤字の類もなさそうで胸を撫で下ろしています。

おわりに

 最後の方は駆け足になってしまいましたが、こんな感じで人生初の文庫同人誌を作ったという話でした。何も分からない所から始まった割には比較的スムーズに行けたように思います。PDF周りのよく分からないトラブルだけは手強かったな……あれ本当に何なんだ……。
 ともあれ一度こうして物を作れたというのは良い経験になったし今後にも活きると思いたいです。いつか頒布できるような本も作れたら良いですね。流石にこの物量にはならないでしょうが……。

 それでは、ここまで読んで下さった方はありがとうございました。何か心に残るものがありましたら幸いです。
 またどこかでお見かけした際にはよろしくお願いいたします。では。

2024.11 ユリ


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