大学生のファーストキャリアは、もう始まっている
ー 学生のうちに、キャリアを積むという選択 ー
社会人になって初めて就く仕事は「ファーストキャリア」と呼ばれていますが、今やこの言葉に違和感を覚える人もいるでしょう。新卒学生=キャリアを積んでいないまっさらな未経験者、という前提が包含されているように感じとれてしまうからです。
今回、3名の大学生を座談会のゲストに迎えました。学生のうちからキャリアを積んでいる彼・彼女らの姿を通して、多様な学生生活のあり方をお伝えします。(聞き手:BBT大学 キャリア開発室 石渡)
野地怜耶
野地 怜耶(のじ・れいや)2000年、神奈川県鎌倉市生まれ。文化服装学院 中退。2020年、ビジネス・ブレークスルー大学 入学。ファッションを基軸に複数のプロジェクト&インターンを掛け持つ。
金子隆大
金子隆大(かねこ・りゅうた)1999年生まれ。日本外国語専門学校中退。2019年、ビジネス・ブレークスルー大学 入学。合同会社Roofarm 創業メンバー。NEWSTANDARD株式会社 インターン。
狩俣 梨乃彩
狩俣 梨乃彩(かりまた・りのあ)2000年生まれ。Camosun College(カナダ)中退。2021年、ビジネス・ブレークスルー大学入学。2021 Miss Progress International日本代表。PR会社(東証一部上場)インターン。
学ぶこと、働くこと、生きていくことは、ぜんぶ地続き|野地怜耶
石渡(聞き手):順番に話を聞かせてください、まずは怜耶さんから。
怜耶(れいや):ファッションを基軸として複数のインターンシップやプロジェクトをしています。1つ目は車いす利用者専用ジーンズのプロモーション。2つ目はファッションの魅力や豊かさ伝えることを目的としたメディア発信・イベント開催を行う学生ラボ「CULTURAL LAB.」の活動。
3つ目は同じく学生ラボ活動の一環としてCASIOと共同で開発した新しい電卓のプロモーション。必需品から嗜好品になってきた電卓を、ファッションと掛け合わせることで新規のユーザーに届ける、というプロジェクトです。
4つ目は表参道にあるハウス@ミキリハッシンというコンセプトショップのインスタ分析。そして5つ目はファッションディレクター・山口壮大さんのインターン。ファッションショーのモデルのフィッティングや撮影のサポート、資料作成のフォローやリサーチなどです。他にも、父親が経営するうどん屋でアルバイトをしています。
石渡(聞き手):色々なことに携わっていますね(驚)
怜耶(れいや):はい、元々色んなプロジェクトを学生のうちから経験したかったんです。以前に所属していた学校・文化服装学院の頃から少しずつ始めました。チームで取り組むことがどれも楽しくて。どんどん挑戦の幅を広げていきました。自分の裁量で学ぶペースをコントロールするために学校を変えましたが、それくらい、もっとやりたい!という気持ちが強かったですね。
梨乃彩:本当に多様なプロジェクトに関わっているんですね。なかなかできませんよ。
隆大:たしかに多いんですけど、どれもご縁・つながりがあって、そこから仕事が拡がっていっているのかなと感じました。
怜耶(れいや):そう!実際にこれらは全部つながっています。文化服装学院に在籍していたからこそ関われたプロジェクトです。そしてファッションディレクターの山口壮大さんが立ち上げたラボであり、コンセプトショップなんです。自分にとってロールモデルになるような人のそばで仕事ができることがとてもありがたいです。この人みたいになりたい!という目標ですね。いまやっていることをそのまま仕事にしていきたいと思いますし、自分の興味分野であるファッションを仕事にしていきたいです。
石渡(聞き手):キャリアに対する怜耶さんの考え方が表れていますね。
怜耶(れいや):大学を卒業したときにどんな大人になっていたいか?どんな自分の未来をつくるか?ということを考えるためには、自分の身近にあることから、今やりたいことをやってみることがまずは大事だと思っています。
石渡(聞き手):そう考えるようになったきっかけはありましたか?
怜耶(れいや):周りの影響ですね。特に親や尊敬している方たちからの。
梨乃彩:尊敬できる人を見つけられたっていうのが素晴らしいですよね。見つけることも簡単じゃないですし。何かコツってあるんですか?
怜耶(れいや):うーん、やっぱり興味のある分野で行動を起こすことだと思いますね。ありきたりですけど。文化服装学院に入学したこともまた僕にとっては一つの大切な行動だったと思いますし、それがご縁で尊敬する山口さんとも出会えましたからね。
石渡(聞き手):そしてその行動を起こした先で、いろんな経験ができていますよね。大学を卒業する前からキャリアを積み始めています。その実感はありますか?
怜耶(れいや):はい。自分のキャリアはもう既に始まっていると思いますし、もっと言えば、僕は学ぶこと、働くこと、生きていくことは別個ではなく、ぜんぶ地続きだと思っています。
プロジェクトやインターンをしていて思うことは「仲間と一緒になって挑戦すること」も「クライアントに謝ること」も、あらゆることが生きている実感に満ちています。
今この瞬間が続いていくことが未来をつくります。ですから大学卒業してから何かしようではなくて、自分の身近にあることからまずはやっていこうとするのは自然なことだと思っています。
一同:おおお(一同、拍手)
怜耶(れいや):えっ、そんな拍手してもらえるなんて(照笑)
石渡(聞き手):拍手喝采ですよ、とても共感できますから。隆大さん、いかがですか?
車いす利用者専用ジーンズのプロモーションイベント。文化服装学院の学生たちと協力して開催した。(野地怜耶)
行動した先に、やりたいことが見えてくる|金子隆大
隆大(りゅうた):僕も怜耶さんと近い考え方です。自分の好きなことや、やりたいことは人それぞれ違いますが、何か行動していくことで見つかると思います。自分の知らない、意外なところで発見できる場合もあります。
実際、自分に合う仕事を求めていろんなインターンをしてきました。大企業からベンチャーまで規模の異なる組織で働いてみたり、営業力をつけるためにコンビニ店の前でクレジットカードの成約をする仕事をしたり。
その中でも特に、会社の立ち上げ期に関わる仕事が楽しかったです。組織が作られていく過程、顧客との信頼関係をつくりあげていく方法を目の当たりにすることができました。
自分の内面を見つめることに加えて、外側の世界を経験すること。そうやって自分の好きなことが見つかるんだなと実感しています。
石渡(聞き手):大学を卒業してから何か始めるのではなく、在学中にやりながら見つけるという考え方が怜耶さんと共通していますね。隆大さんが今、やりがいを感じていることは何かありますか?
隆大(りゅうた):都内に屋上農園をつくる、というプロジェクトに挑戦しています。もともと農産物を販売していた経験から、若い世代の人たちに食の魅力や問題点を伝えていきたいと常々思っていました。
そんな折、知り合いの農家に誘われてやった農業体験がきっかけになりました。
農業体験は、きたない、つらい、というイメージを持たれることもありますが、実は自然と心が整うためマインドフルネスの意味合いがあるなと思ったんです。
梨乃彩:とてもわかります!私は観葉植物を家で育てているのですが、毎朝水をあげるだけで心が整うなって感じます。
怜耶:僕は牧場に行ったりします。牛と触れ合う、鶏の卵を取る、トマトを摘む。
梨乃彩:とてもいいですね!どこの牧場で経験できるんですか?
怜耶:千葉県にある牧場です。水牛の前でモッツァレラチーズを食べるのはおすすめです!
全員:いいですね(笑)
石渡(聞き手):このメンバーで牧場にいきましょうか(笑)
隆大(りゅうた):そうして農業体験の魅力に気が付くことができた一方で、そのために遠方に出向くことのハードルの高さも感じました。それ以来、もっと気軽に農業体験ができないかと考えるようになりました。
そこで始めたのが都内の屋上農園です。このきっかけは、都内で農産物を自分で販売していたとき、となりで出店していた方との偶然の出会いです。屋上の緑化に携わってきた経験者。彼と出会って以来、渋谷の東急百貨店の屋上や、都内の幼稚園の屋上に農園をつくるという取り組みを始めています。
梨乃彩:幼稚園の屋上に農園をつくるって、とてもいいですね。
隆大(りゅうた):実はちょうど昨日、ある幼稚園に農園を設置しにいってきました。この苗って何だろうとか、水をあげすぎるとよくないよねとか、子供たちが食物を育てることに関心がもてる教育プログラムを幼稚園と一緒につくろうとしています。
石渡(聞き手):とても面白い取り組みですね。隆大さんには何かこれからの目標はあるのでしょうか?
隆大(りゅうた):都内の屋上をぜんぶ緑にしたいです。環境が守られることはもちろん、災害時やこころが病んでしまったときに地域コミュニティのセーフティネットになっていってほしいです。
都内の幼稚園での農園設置。子供たちが食物を育てることに関心がもてる教育プログラムをつくりたい。(金子隆大)
多様な生き方があることを子供たちに伝えたい|狩俣梨乃彩
石渡(聞き手):梨乃彩さんは隆大さんのお話についていかがでしたか?
梨乃彩(りのあ):子供たちの教育に関して共感しています。特に「体験してから学ぶ」ことの大切さ。私がカナダへ留学していた時の学び方がそうでした。学習する前にまずは自分で体験することから始めると、なぜそれを学ぶ必要があるのかを実感することができました。
石渡(聞き手):留学中の経験から、共感することがあったのですね。
梨乃彩(りのあ):はい。怜耶さんや隆大さんのように色々とチャレンジするほうが人生は楽しいし、視野も広がると思います。でも、日本の学校や家庭ではそれが推奨されづらい。いい学校に行っていい会社に就職すること、安全な道を進むことを期待されてしまいます。
そうではなくて、自分のやりたいことに挑戦する楽しさ・やりがいがあると思います。それが私が海外に留学して気が付いたことなんです。
石渡(聞き手):やりたいことにチャレンジする人が増えていくといいですね。梨乃彩さんは感染症のパンデミックをきっかけに留学先から帰国し、大学編入されましたね。
梨乃彩(りのあ):そうですね。感染症拡大の怖さもありましたが、せっかく留学しているのに帰国してオンラインで学ばなければならず、それは勿体ないなと思いました。また、大学に縛られず、色々と挑戦したかった。そのためにオンラインで学べるBBT大学に編入しました。自分の好きなことをしながら興味のあることを学ぶのは大切だと思います。
石渡(聞き手):梨乃彩さんが今取り組んでいることについて伺えますか?
梨乃彩(りのあ):大学、インターン、ミスコンテストの3つです。朝起きて大学の学習をして、日中にインターンをして、その他の時間を使ってミスコンテストの日本代表と大会運営に関わる仕事をしています。
石渡(聞き手):ミスワールドの日本代表ファイナリストの経験もあると伺っています。梨乃彩さんは芸能活動をしていきたいのでしょうか?
梨乃彩(りのあ):いいえ、誤解されやすいところなのですが、私は将来的に起業家になりたいと考えています。家庭環境に恵まれない子供たちのためのセカンドスクールを世界各地につくりたいです。
ミスコンは世の中に向けて発信力を高めていくための方法のひとつです。またPR会社でのインターンは言葉を使ってコミュニケーションすることに対する苦手意識を克服するためにやっています。
石渡(聞き手):教育への関心が高く、ミスコンテストやインターンをやっている理由もそこにつながっているのですね。
梨乃彩(りのあ):そうですね。世界的な教育格差に対して問題意識をもっています。本来、教育機会は平等に与えられるべきですが、実際には難しい。でもだからこそ、大人たちはそれを手助けする役割を担っていると思います。カナダ留学中に目の当たりにしてきたヘロイン中毒の子供たちは、親や育つ環境に影響を強く受けていました。そういう子供たちを支援してあげたいです。
石渡(聞き手):教育に関して、取り組んでいることはありますか?
梨乃彩(りのあ):絵本を制作しようと思っています。「せかいのひとびと」という絵本に私は影響を受けました。人間の多様性について学ぶことができる本です。子供たちに読み聞かせができる本を制作していく準備をしているところです。そうして多様な生き方があることを子供たちに伝えていけたら嬉しいです。
イタリアのミスコンテスト、2021 Miss Progress Internationalに日本代表として出場。2022年には大会運営も一任されている。(狩俣 梨乃彩)
キャリアはいつから始まるか?
石渡(聞き手):みなさんが学生のうちにキャリアを積んでいることが伝わってきます。みなさんのキャリアはもう始まっているんだなと。
梨乃彩(りのあ):キャリアって何でしょうね。言葉の意味としては「経歴」「積み重ねてきた経験」ですが、その意味では誰しも生まれた時からキャリアを積んできているのではと思います。
バレエを習っていたこともキャリアですし、留学もボランティアも全てキャリアです。自分がやってきたことで無駄なことは一つもありません。成功も失敗も、仕事や恋愛も、全ての事に対して。
ですから、キャリアは生まれた時から始まっていると思っています。
学生のうちにキャリアを積んでいる3人。やりたいことに純粋になって挑戦している姿から、多様な学生生活のあり方を知ることができました。どんな学生生活にしたいか?という自分の心の声が、大学生活そして卒業後の未来をつくる出発点になるのではないでしょうか。(BBT大学 キャリア開発室 石渡)