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ゆとり世代 /2000字ドラマ
ミライ「せんぱーい」
ぼく「だからお前近けぇーよ。そのアメリカ人の距離感日本でやると嫌われるぞ」
ミライ「はい、でたー。帰国子女差別。羨ましいのはわかりますけど、僕にあたらないでください」
ぼく「いや、俺別にお前を羨ましいと思った事ないんだけど?」
ミライ「またまたぁーーw冗談はよしこちゃんにしてくださいよ」
ぼく「‥‥。そのボケなのかなんなのか知らんが、俺も知らないボケされてもつっこめないんだけど、、」
おれは、今年30になる、日本の文部科学省が行った、戦後最大の駄作とも呼べる政策の被害者世代だ。
そう、僕はいわるゆる「ゆとり世代」だ。
ある意味プライドもなければ欲もないから別名「サトリ世代」とも言われている
ゆとり政策のせいで、ぼくたちが受けた影響は、学力低下だけでなく、何となく若者が空気を読めない行動や馬鹿げた行動をすると、とかく「あぁまたゆとり世代かー」という感じで、都合の悪い事は全て「ゆとり」のせいにされてきた
ミライ「あ、でもあれですよ。僕は先輩は政府の政策の被害者だなとはおもいますけど、先輩をみて、このユトリが!って思ったことないですよ」
ぼく「‥帰国子女のお前にゆとりの事で励まされるなんてな。ってかもう俺30だし、久々にそのキーワード聞いたわ。」
ミライ「元気だしてくださいね」
ぼく「いや、俺別に気にしてないし!お前が勝手にゆとりをいじってきてるだけだから」
ミライは6つ下の後輩で、小学6年までNYで育ったから、英語はもちろん、父方がスペイン系らしく、スペイン語も話せるトライリンガルだ。
なんでそんなハイスペック君がうちの会社に入社したのかは疑問だが、兎に角僕はミライの教育係りを任されていた
会社に到着。
二人「戻りましたー」
女「お疲れ様です。ちょっとミライくん。この書類の記載間違ってるんだけど、前も同じこと注意してるからね。やり直し。今日中に直して持ってきて」
ミライ「‥はーい。直しまーす。」
女性が立ち去るのを見送る。
ミライ「せんぱい、この会社ってめんどくさいルール多くないですか?大体なんで外回りの交通費申請がいちいち紙申請なんですか?今時ありえないっすよー」
しかもあの人、replyのスペルも間違えるレベルの人ですよ?なんで、ぼくがあの人に小言言われないといけないんですかねー」
ぼく「おい。お前が世の中舐めてるのは別にお前の育ってきた環境のせいもあるだろうから、別に俺は否定しない。だけど、お前がこの会社に自分で希望して、入社した以上会社のルールに従うのは当たり前だ。三浦さんは一つも間違った事は言ってない。むしろ当たり前の指摘をしているだけだ。例え彼女が英検3級レベルの英語が出来なかったとしても、そんな事は今どーでもいい。お前が100%悪い」
ミライ「今日先輩怖いっす」
アライ「いや、俺も三浦さんもいつも普通の事しか言ってない。」
三浦さんは俺よりも5つぐらい確か上で、ギリギリ昭和に産まれてしまった世代で、確か土曜日も第二、第四だけ休みになったりとか、戦後最大の不況とも言われたり、親世代が大量リストラにあったり、世の中の変化に揉まれてきた世代だ
だからなのかどんな理不尽な状況に置いても、特に騒ぐ事もなく順応対応できるというか、人当たりが良い人が多い。だけど、三浦さんはあんまり笑わないから会社の中では「女帝」として恐れられていた
だけど、ぼくは密かに三浦さんに憧れていた
いや、、多分気になっていた
ある日セクハラ癖が強い部長が彼女の指摘に逆キレして
「そんな小姑みたいな事言ってるから結婚できないんだぞ」とフロアに響き渡るぐらいの大声で言った
すると三浦さんが
「部長この書類の誤記は、私が結婚するしないとは全く関係ありません。部長が早くこの書類を修正して頂けないと、私はこの書類を一から作り直す必要があり、そうすると申請が遅れ先方への納期も遅れ結局困るのは部長になります。
それでも貴重な時間を無駄にして私が何故結婚できないのかについて、雑談しますか?」
と真顔で部長に言っていた
フロアの空気が凍りついたのを今も覚えている。
僕は内心かっけぇえええー!と思った
この小さな会社ですら暗黙のルールみたいなものがあって、上の人の言葉を下の人間が抗議してはいけない。みたいなところがあった
もちろん上の人がみんな間違っているわけじゃないけど、下の意見が通りにくいのは確かにあった
だけど考えてみたら、三浦さんの行動が普通なのだ
彼女が特別なことをしたわけじゃないのだ
彼女は普通に真っ当に仕事をしただけだ
僕たちが勝手に言われてもいないのに勝手に上に遠慮して話を合わせて、自分を苦しめていただけなのだ
ミライ「あー俺三浦さん苦手っす。なんか頭悪いのにはプライドだけ高い感じしません?」
俺は一瞬殺意を覚えてた。が、違う。
俺が今しなきゃいけないことはわかっている。
ぼく「ミライ。お前にはこれから俺がこの会社で働く上で必要な事は全部教えてる。絶対わからせてやる」
ミライ「分からせる、、?」
ぼく「とりあえず、早くそのやり直し書類直せ」
ミライはスペックが高い
この会社に絶対必要な人間なんだ
スペックが高い彼らが仕事を辞めないようにサラリーマンに育てるのが僕たちの仕事だ
令和のこの先の時代を支えるのは、彼らなのだから