解析入門I - 実数の連続性1


この記事は解析入門I (杉浦光夫 著)の読書ノートです。


ここからは連続の公理からいくつかの命題を導く。これらは実質的に連続の公理と同値であり、実数の連続性を様々な角度から見た表現になっている。

実数列$${(a_n)}$$に対し、 $${\forall n, a_{n} \le a_{n+1}}$$が成り立つとき、単調増加するといい、一方で$${\forall n, a_{n} \ge a_{n+1}}$$が成り立つとき、単調減少するという。また上記二つにおいて、すべての$${n}$$に対して等号が成り立たないとき、狭義単調増加する、もしくは狭義単調減少する、という。

単調増加と単調減少

連続性の公理から、単調列に対して次が導かれる。

数列$${(a_n)}$$が上に有界でかつ単調増加するとき、これは収束し、$${\lim_{n \to \infty} a_n = \sup \{a_n : n \in \mathbb{N}\}}$$となる。同様に下に有界でかつ単調減少するとき、これは収束し、$${\lim_{n \to \infty} a_n = \inf \{a_n : n \in \mathbb{N}\}}$$となる。

これを示す。$${A \equiv \{a_n : n \in \mathbb{N}\}}$$は空でなく、仮定より上に有界だから、連続性の公理より$${s \equiv \sup A}$$が存在する。上限は上界でもあるから、すべての$${n}$$に対して$${s \ge a_n}$$が成立する。

一方、任意の$${\varepsilon \gt 0}$$に対し、$${s - \varepsilon \lt s}$$となるから、$${s - \varepsilon}$$は$${A}$$の上界ではない。つまり、ある$${n_0 \in \mathbb{N}}$$が存在して$${s - \varepsilon \lt a_{n_0}}$$が成立することになる。このとき単調増加性によって、任意の$${n \ge n_{0}}$$に対し

$$
s - \varepsilon \lt a_{n_0} \le a_n \le s \lt s+\varepsilon
$$

が成り立つ。つまり、有限個を除く無限個の$${n}$$に対して$${a_n}$$が$${s}$$の$${\varepsilon}$$-近傍に収まるから、$${\lim_{n \to \infty} a_n = s}$$が導かれる。

同様の議論を下限・下界、単調減少列について議論すれば、下に有界な単調減少列についても$${\lim_{n \to \infty} a_n = \inf\{a_n : n\in\mathbb{N}\}}$$が導かれる。

さて、上記の定理では単調列を扱ったが、単調増加(減少)列が上(下)に有界でない場合、非有界性からどんなに大きな(小さな)実数$${M}$$を取ってきても、$${a_{n_0} \gt M}$$($${a_{n_0} \lt M}$$)になるような$${n_0}$$が存在し、単調性からすべての$${n \ge n_0}$$に対して$${a_n \gt M}$$($${a_n \lt M}$$)となる。つまり、$${n}$$が大きくなるにしたがって、限りなく$${a_n}$$の値は大きく(小さく)なっていく。このように収束せず、数列が限りなく大きく(小さく)なっていく概念を次のように定義する。

実数列$${(a_n)}$$に対し、どんな実数$${M}$$に対しても、ある自然数$${n_0}$$が存在して、$${n \ge n_0}$$なるすべての$${n}$$に対し$${a_n \gt M}$$が成り立つとき、数列は$${+\infty}$$に発散するという。同様に $${a_n \lt M}$$が成り立つときは$${-\infty}$$に発散するという。

無限への発散

さて、この$${\pm \infty}$$は実数ではないが、数列や関数の極限としてしばしば数学的対象として扱われる。$${\pm \infty}$$と任意の実数との大小関係を次のように定義しておくと都合がよい。

任意の実数$${x}$$に対して$${-\infty \lt x \lt +\infty}$$

無限と実数との大小

この定義により、先ほどの議論は次のように書ける。

数列$${(a_n)}$$が単調増加列でかつ上に有界でないとき、$${\lim_{n\to \infty }a_n \equiv +\infty}$$、単調減少列でかつ下に有界でないとき、$${\lim_{n\to \infty }a_n \equiv -\infty}$$とおく。


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