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秋月のヘッドホンアンプ作りました


初めに

秋月通商が販売していたポータブルヘッドフォンアンプキットAE-HPPMLを組み上げました。

手元にあった部品箱を、ごそごそしていたら、秋月通商で販売していた「ポータブルヘッドフォンアンプキット AE-HPPML」が出てきましたので、作ることにしました。このキットは、2009年7月の発売で、本体が3600円、金属ケースが2400円の合計6000円の値段でした。今、オーディオテクニカのAT-HA2というヘッドホンアンプがビックカメラで5920円で売られているので値段的には微妙です。しかし。AE-HPPMLは電池駆動で完全ポータブル化となります。一方、AT-HA2は、電源がACアダプターで、移動に制約を受けるというところで差異があります。なお、2024年8月現在、AE-HPPMLは、秋月通商では販売されていません。

良い音が出るといいな。

ちなみに、2024年8月号の雑誌Stereoに「禁断のヘッドホンアンプ」という記事が出ていて、その製作基板が千石電商 秋葉原本店で一番売れているそうです。noteで「ヘッドホンアンプ」と検索すれば、紹介記事が出てきます。

秋月通商が言うAE-HPPMLの特徴
・ 低歪オペアンプ OPA2353(OP AMP 2回路入り)を2個使用。
・高性能フィルムコンデンサー"PMLCAP"を使用。
 入力カップリングコンデンサーに某オーディオメーカー限定記念モデルに採用されたルビコン社製高性能薄膜フィルムコンデンサー"PMLCAP"(10μF 25V)を使用。このため、非常にクリアな音質を実現。
との事でした。

私の目的

・普段使っているPCの中に、音楽データ(主にCDからクリッピングしたもの)をPCのイヤホン端子にヘッドホン(SONY MDR-CD900ST、これしか持ってません)を繋いで聞いているのですが、音が非力です。アンプを入れてどうにかしたいと思います。

・そのPCのイヤホン端子からLINE出力させて、プリメインアンプ(LUXKIT A807改造あり)を経由して、 スピーカー(Infinity Reference 51mkII)を元気に鳴らしたい。

・最近、購入したCDプレーヤー YAMAHA CD-S303の出力端子から、このヘッドホンアンプを直接つないで、どんな音が出力されているのか確かめたい。
以上が、私の目的となっています。

バーブラウン社OPA2353について

基板に実装されたOPA2353(IC1)

データシートは、インターネットでググるとすぐ見つかります。見てみました。
可動電圧は、2.7Vから5.5V。最小可動電圧が2.5Vとなっています。今回の片電源、単4電池2本の3Vは、十分は値となっています。また、ニッカド電池(1本1.34V、2本で2.68V)でも動かせるようです。

RAIL-TO-RAIL OUTPUT(within 10mV)。なので供給電圧の±3V(引く10mV)の間まで出力を振らせることができます。

HIGH SLEW RATE 22V/√HZ。有名なOPA627のSLEW RATEが、55V/√HZ。私が昔、OPA627を入手できるようになる前までに、良くアンプ改造に使っていた4558系の改良品であるJRC2114が15V/√HZなので、それよりも早いです。JRC2114も秋月で売っていたのですが、今は廃番なのか番号を検索しても出てこないようになりました。

THD+NOISE:0.0006%の歪率です。JRC2114が、THDで0.0005%なので、ノイズ分を含めて問題無しです。

LOW NOISE:5nV/√Hzです。OPA627が10KHzで4.5nV/√Hz。2114が3.3nV/√Hzですが、5nV/√Hzは低雑音といって問題はないでしょう。

UNITY-GAIN STABLEと書いてあります。これはボルテージフォロアー回路にしても発信しないということ。実際、AE-HPPMLは、ボルテージフォロアー回路を採用していました。

PMLCAP 薄膜高分子積層コンデンサーについて

実装されているPMLCAPコンデンサー(C11,C21)、カップリングコンデンサーとして使用されている。

PMLCAP薄膜高分子積層コンデンサーですが、私は知りませんでした。今回OP2353の入力にカップリングコンデンサーとして10μFを入れています。詳しくは、以下のURLを見てください。
薄膜高分子積層コンデンサ(PMLCAP) – ルビコン株式会社 (rubycon.co.jp)
カップリングコンデンサーの性能については、以下、マルツ電子のwebから引用します。
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理想のコンデンサは電圧と電流の位相差が90°です。
しかし、実際のコンデンサは b 「R成分」が存在し、これにより損失が生じます。R成分が大きいほど角度δ(D)が大きくなり、tanδを「誘電正接」(ゆうでんせいせつ)と言います。この値が小さいほど損失が少ないことになります。(つまり、良質なコンデンサ)と言えます。
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私は、昔、インピーダンスアナライザーを開発する部で働いていたので、色々な種類のコンデンサのtanδ(D)を計りました。その結果、コアキシャル型のタンタルコンデンサーのDが一番小さいことがわかりました。なので、4.7uFのタンタルコンデンサーの極性を向かい合わせにして直列に繋ぎ無極性の2.3uFにして、オペアンプ2114の入力の前に、挿入する改造をプリメインアンプのA807 にしました。タンタルコンデンサーの故障モードはショートで危険ではあるのですが、経年変化がないので、今でも、その改造をした、LUXKIT A807で音楽を聞いてます。はたしてPMLCAPは、どのように音に影響を与えるのでしょうか?

回路図について

AE-HPPML回路図

 説明書について来た回路図を見ました。この回路図は部品番号が小さく書いてあり、部品定数も書いておらず読みづらいものでした。部品表の部品の値を回路図に書き込んでいきました。
 信号入力のところのボリュームが50kΩのB型でした。ん、A型ではないのかと一瞬思いましたが不都合はないのでしょう。次に、信号はカップリングコンデンサーのPMLCAP 10uFに入ります。次に、最初に反転回路のOPA2353に入ります。反転回路のR1にあたる抵抗は10kΩです。R2にあたる抵抗は、27kΩです。電圧利得は、理論値で20Log(27k/10k)=8.6dBになります。
オペアンプを反転回路、非反転回路のどちらで使うのが音が良いかですが、一般に反転回路の方が音が良いということになっています。理由は、(ネットからの受け売りなのですが)
反転回路だと初段の差動回路の電位が変動しないためです。非反転回路だと差動回路の電位が入力信号に追従して変わるので、差動回路の周りに付いている回路に影響を与えるからです。
この反転回路からの出力は、もう一つあるOPA2353をボルテージフォロアアンプ(利得1のバッファアンプ)の入力に入ります。そして2つのオペアンプの出力は、直列に入れた47Ωの保護抵抗を通った後に合流し、そのまま出力端子に接続されています。

 なお電源回路は、3つのトランジスタで、スイッチ回路が形成されており、プラス側の電圧がスイッチトランジスタのベースに、スイッチONで電圧がかかるとプラス側のトランジスタとマイナス側のトランジスタがONになり、全体に電流が流れるようになっています。プラス側、マイナス側も、2つの1000uFの電解コンデンサーで平滑されオペアンプ等に電圧を供給しています。

実際の作製

AE-HPPML基板裏の表面実装部品

 殆どの部品は、表面実装で、既に実装されているので、後、半田付けするのは、電解コンデンサー4つ、スイッチ付きボリューム、青色LED、入力ジャック、出力ジャック、電池ボックス(単3電池2本入りが2つ)からの電源の線4本だけです。1時間もあれば終ります。
 私は、最初15Wの半田ごてでRoHS対応の半田を使い、半田付けしていたのですが、半田が、なかなか広がっていきません。「RoHSの半田は、温度を上げなきゃだめ」と聞いていたのですが、頭にきて30Wの半田ごてで、鉛半田を使い半田付けをしました。今度はうまくいきました。

諦めたところ

 青色LEDは、先を90度まげて、フロントパネルの穴から頭を出すようにするようですが、キットに最初に付いてきた青色LEDを「点くかいな」と可変電源に保護抵抗なしで直接つなぎ、電圧をあげて、「点いた、点いた」と喜んでいたら、電圧を上げすぎたのか壊してしまいました。Amazonで、3㎜径の青色LED10本入りを買って、今回使ったのですが、足の線が、硬いようで、フロントパネルに向かって90度曲げられませんでした。曲げないで上を向いたままにしてあります。フロントパネルからは、覗けば点いているのがわかるので、そうしています。
どうも、私は、小学生の時に赤色LEDが出てきて、それから何十年、やっと青色LEDが出て来たのを経験しているので、青色、それと白色LEDには、あこがれが強く、点いているだけで、楽しいと思ってしまいます。

 キットについて来た電池ボックス2つは単4電池2つを入れるものでした。それを使えば、筐体の中に電池ボックスは納まって、上蓋も閉められるのですが、私は、自分で、単3電池2本を入れるボックスを使うことをしました。電池交換の時に、わざわざネジを外して、寿命のおそらく短い単4電池を入れ替えるのが面倒だと思ったからです。上蓋が開いているのでバラック状態ですが、それでも構いません。アルカリ乾電池、ニッカド電池と取り換える実験もすぐできます。

AE-HPPML基板部分
ケースに入れる前のAE-HPPML


ケースに納めた基盤と電池ケース。電池ケースが大きいので上蓋は閉まりません。

火入れ

 ボリュームに連動しているスイッチが切れているのを確かめて、単三電池を4本セットしました。入力端子に自作のショートバーを入れて、出力端子にヘッドホン(MDR-CD900ST)を繋いで、火入れ。スイッチONです。パイロットの青色LEDが点きました。無音です。
そのまま、ボリュームを最大の方へ右に一杯に回します。
無音です。
ヘッドホンアンプからノイズは聞こえません。ひとまず、ノイズの確認は、無事終わりました。
 ボリュームを元に戻して、スイッチを切り、PCのイヤホン端子とヘッドホンアンプの入力をケーブルでつなぎます。PC側でWindows Media Playerを立ち上げておいて、PC側のボリュームは最大にしておきます。何聴こう? 中島みゆきの「寒水魚」でも聴こうか。PC側で再生して、ヘッドホンアンプをON。聴こえました。ヘッドホンアンプ側でボリューム調整できるのがいいですね。曲間に、PCから発生するホワイトノイズがわずかに聴こえます。音は、力強いです。OPA2352が回路図のように動作している。カップリングコンデンサーPMLCAP 10uFも良いようです。
wav file, mp4 file, mp3 fileと色々と聞き進めました。結論は、悪くありません。但し、音が太くなっているだけだ(それでも、ありがたいのですが)。繊細さが増すわけではない。これはPCで出来た音を忠実に増幅しているだけなので、当然です。その他には、ボリュームが外についているので、音量調節が便利である。と感じました。

このヘッドアンプの出力をプリメインアンプのライン入力に繋ぎ、スピーカーを鳴らしました。結論は、ヘッドホンで聞いた時と同じでした。

CDプレーヤー YAMAHA CD-S303の出力端子から、このヘッドホンアンプを直接つないで、どんな音が出るか確認しました。CD-S303の出力レベルは、1kHz、0dB、Fs 44.1kHzで、2.0±0.3Vなので、ボリューム半分以下ほど回したところで、聞きやすいところがくるかなと思い聞き進んでいくと、繊細で、重厚、のびやかな音が聴こえました。これが、このヘッドホンアンプの実力なのでしょう。
じっくり聞いたのは以下のCDです。
・ブラームス、ピアノ協奏曲第2番、ピアノ ポリーニ(ポリーニ亡くなられましたね)
  第2楽章の疾走感が好きです。
・ムソルグスキー 展覧会の絵 ピアノ 弓張美季 
  ピアノ NEW YORK STEINWAY CD-135を使用(日本ピアノサービス(株)調律)
  私が神戸にいる時に、ロシアで勉強していた弓張さんが年に数度帰国す 
  る時に行うコンサートに行っていました。会場で売っていたCDなのです
  が、一音一音に意思が感じられて、このCDを聞いていると胸が一杯にな
  ってくるのです。
・ラヴェル 水の戯れ ピアノ マルタ・アルゲリッチ 1960年7月録音
  3人娘がいて、父親が全員違うマルタ・アルゲルリッチさんですが、こ 
  の1960年の録音、ノイズも乗っているのですが、打鍵正確なアルゲリッ
  チの水の戯れ、好きです。
・ラヴェル ピアノ協奏曲 ト長調 マルタ・アルゲリッチ 1967年5月録
 音
  第2楽章のピアノとオーボエの絡みが、美しい。
・バッハ ゴルトベルク変奏曲 ピアノ グレン・グールド 1955年
  モノラルです。ノイズも乗っています。でもアリアが終わった後からの 
  グールドの解釈、ハイタッチ奏法はすごいですね。
・木住野佳子 Time scape
  Jazz session なのですが、ベースがブンブンなるところとかヘッドホン
  で再現できて嬉しいです。
・PFM JetLag
・Led Zeppelin Led Zeppelin IV
・渡辺美里 My Revolution、青空
・中島みゆき 空と君の間に、あした、ひとり上手、狼になりたい、
       ファイト、歌姫
・小比類巻かほる Tonight、I'm Here、 Hold On Me
などを聞いていました。ここら辺は笑ってください。

終りに

 もう廃番で、買えない製品の製作と評価に最後まで、お付き合い、お読みくださりありがとうございました。次は、ヘッドホン端子付USB DAC+ハイレゾ音源に行くしかないのかもしれません。でも、当面、この有線ヘッドホンアンプと付き合って音楽を聴いていきたいと思います。電池駆動、好きです。

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