スーパーボウル2023!後編
さて、後編です。
*前編の記事はこちらよりご覧ください。
【スーパーボウル 2023年ニュース 後編】
・ジーザスの広告が登場
ジーザスの広告?思わず、ジーザスっていう飲料ブランドか何かあるの?と思った方もいるかもしれませんが、名前の通りジーザス(神)の広告です。
広告を出したのはNPO財団のサーバント財団で、福音主義のキリスト教のウェブサイト"He Gets Us"のCMになります。
今回広告を出した背景にはアメリカでのキリスト教信者が年々減少しており、特に若い世代が信仰離れしていることから若い世代をターゲットにしています。
30秒と60秒のCM2本を制作し、対照的なアプローチをしています。
30秒のCMは幼い子供たちが抱き合い、仲良く会話をしたり助け合う心温まるストーリー。
映像の最後は"Jesus didn't want us to act like adults / 神は私たちに大人のように行動して欲しくなった"というメッセージが流れ、偏見や差別などを抱かなかった幼い時の純粋さや思いやりの大切さを伝えています。
反対に1分間のCMは、大人たちが争い、叫び、抗議しているモノクロの静止画が流れ、映像の最後に"Jesus loves the people we hate / 神は私たちが憎む人たちも愛する"というメッセージが登場します。
さてHe Gets Usの反応はいかに?
神の宣伝に1億ドルつぎ込んでCM2本を放送するよりも貧困を助けるべきという意見やスポーツに政治と繋がりが強い宗教を持ち込むべきではないなど、否定的な意見が目立っていました。
ただ、He Gest Usの認知度を高めることが目的であると述べており、その点では成功したと言えます。
放送直後、He Gets UsはSNSやネットでも話題になり、放送されたCMのYouTubeでの再生回数は英語版とスペイン語版を合わせて2000万回以上再生されています。
・Z世代向けのブランドはTikTokトレンドに注目
Ad Meterが発表した広告ランキングで飲料部門のトップはBUD LIGHT。
カスタマーサービスに問い合わせをし、永遠を待たされてしまう事はどの国でもよくあること。
BUD LIGHTのCMでは長時間待たされている間、夫婦でダンスをして楽しむ様子が流れていますが、CMで流れている音楽は実際にアメリカでよく使われる保留音というところがポイントになります。
というのも、その保留音を使ってアメリカのTikTokではダンスをする投稿が2年前から流行っており、hold music(保留音)でTIkTok検索すると投稿の視聴回数は1200万回以上。
若い世代をターゲットにしているBUD LIGHTはそんなTikTokでの人気の投稿をCMで取り入れており、高評価を得ていました。
タグラインも"EASY TO DRINK, EASY TO ENJOY"に変更したことで、BUD LIGHTの軽い飲み心地を伝え、CMでは保留で待たされる時のイライラも、BUD LIGHTなら気軽に飲みながら楽しめることを伝えています。
他にもTikTokを絡めたCMでは、韓国の自動車メーカーKIAのCMは違ったエンディングをTikTokで見ることができます。
・ノスタルジックは今年も安定の人気ぶり
もちろん、NFLのファンを占めるのはミレニアル世代以降なので、ミレニアル世代、X世代をターゲットとしたノスタルジックなCMは今年も人気でした。
T-Mobile、Michelob Ultra、Rakuten、Remy Martin、Uber Eats、Popcorners
懐かしの映画、ドラマ、音楽を取り入れたCMを1970年〜2000年代の時系列で並べてみましたが、全てお分かりでしょうか。
Popcornersは割と最近のドラマですが「Breaking Bad」の役者達が出演しており、Ad MeterやAdweekの人気投票でも上位にランクイン。
・11年ぶりにスーパーボウルに登場したDowny
P&Gの洗濯用洗剤のDownyは開催日の2ヶ月前からティザーを公開。
ティザーでは、フードを顔に被せた男性がDowny Unstopables の香りが 12 週間持続することを証明するまで自分の正体を明かさないと言い、男性が誰なのか、本当に12週間香りは持続するのかなど、SNSやネットなどで視聴者が対話をすることを狙いにしています。
また、公開されたティザーの中には去年最も話題を集めた暗号通貨の
CoinbaseのCMをパロディにしたものも登場しました。
・開催前から色々仕込んでいたM&M'S、結果はいかに?
最後にご紹介したいブランドはM&M'S。
2023年1月23日 M&M’Sはキャラクターを無期限で休止し、女優兼コメディアンのマーヤ・ルドルフをブランドの新しいスポークスパーソンとして発表。
発表直後はSNSのアイコンを一時的にma&ya'sというロゴに差し替えた他、M&M’Sのキャラクターにちなんだプレイリストの公開やM&M'Sを取り扱うマース社の別ブランドのSNSに登場したりなどひっそり活動。
そもそも何故キャラクター休止を発表したのか?
その理由として、M&M’S のキャラクターの描き方に関するジェンダー論争があります。
スポークスキャンディーとしてM&M'Sのキャラクターが初めて登場したのは1990年代でしたが、当時はブルー、イエロー、レッド、グリーンの内、女性キャラクターはグリーンのみでした。
そこから2012年に女性キャラを1名追加、2022年にはさらにもう一人追加しているだけでなく、時代に合わせてそれぞれのキャラクターをアップデートしていますが、アメリカではかつてよりM&M'Sのキャラクターに対して共和党(保守派)と民主党(進歩派)の価値観が二分し、カルチャーウォー(文化戦争)にまでたびたび発展しています。
ただ、そういったトラブルが原因でキャラクターを無期限で休止宣言したのではなく、これはあくまでもスーパーボウルに向けた宣伝パフォーマンス。
M&M’Sは30秒のCMでマーヤ・ルドルフが登場しますが、キャラクターはブランドの中心的存在でありCMに登場することもコメントし、スーパーボウルのCMで何かしらのサプライズがあることを示唆していました。
そして肝心のスーパーボウルのCMがこちら
スーパーボウルで放送されたCMでは、あさり味のma & ya’s を発表をしていますが、CMの最後に人質に囚われたM&MがHELPというカードを掲げています。
スーパーボウル試合後半ではグリーンとイエローのM&Mが "We're back!"と書かれた看板と一緒に登場する5秒間の広告と、試合後にすべてのキャラクターが登場する記者会見形式のCMが放送されました。
残念ながらCM自体はそこまで話題にならずランキングは下位でしたが、CM公開前でのTwitterやInstagramでは共に注目を集めることには成功*。
*M&M'Sがマーヤ・ルドルフを公開後にTwitterとInstagramに投稿した4件に対し、Twitterは合計5,300万回以上のビューを獲得、Instagramは69,000の「いいね!」を獲得
今回スーパーボウルの広告では空振り気味でしたが、マース社は昨年発表したM&M'Sのグローバル規模の取り組みでM&M'Sのキャラクターにおけるジェンダー論争に向き合い、ブランドパーパスに活かしています。
以上、スーパーボウルで放送されたCMのハイライトをご紹介させていただきました!
みなさまはどの広告が印象的でしたでしょうか?
昨年と広告を出していた企業や業界がガラッと変わった印象があったので、去年のスーパーボウルの広告が気になった方は是非去年の投稿も読んでいただけると嬉しいです!
執筆:高嶋