志摩スペイン村 パティオ・デル・カントに関する二、三の問題
Hola~ しょた。です。
前回はベルちゃんのサインについて書いてみましたが、今回はタイトルの通り志摩スペイン村で上演されているショー「パティオ・デル・カント~ダルシネアの秘密の花園~」について少し書いてみたい思います。
はじめに
記事のタイトルに二、三の問題と入れていますが、別にショー自体に何か問題があってそれをどうにかしろ!って文句をダラダラ垂れ流すわけではありません✋
そもそもショーに問題など全くありませんし、とても素晴らしいショーです。それだけはきちんと断っておきます。
では、何が問題なのか?ということですが、個人的にパティオ・デル・カントに対してある疑問を持っています。それは「パティオ・デル・カントがいつのお話なのか?」ということです。この疑問を解決するために、様々な角度から検討をしたりしているのですが、どうしても矛盾する点が出てきてしまうんですね。その矛盾を問題と表現しています。
この記事では、「パティオ・デル・カントがいつのお話なのか?」という疑問について検討を試み、その過程で生じた矛盾点を指摘し、自分の考えを提示できればと思います。もし、可能であればこの記事を読んでくださった皆様の考えをお聞かせ願いたいです。
まぁ、ざっくりいうと研究ノートみたいな感じです。一部ショーの内容のネタバレを含むのでご注意ください。
パティオ・デル・カントはいつのお話?
さて、この記事の核となる
パティオ・デル・カントはいつのお話なのか?
という疑問。
なんでそんなことが気になるんだ?とお思いの方も多いと思います。
実はパルケエスパーニャのキャラクター達には以下のような設定があります。
ドンキーたちは、約400年前のスペインで、生まれたんだ。そこにはドンキーのいる「ドンキホーテ村」やダルがいる「ガート村」アレハンドロが住んでいる「ローボ村」などがあって、みんなそれぞれの村で暮らしていたんだ。(公式サイトより引用)
ドンキーたちが住んでいた世界と志摩スペイン村とは不思議なタイムトンネルの穴でつながっているんだって。 ドンキーたちはひょんなことからこの不思議な穴を通って志摩スペイン村に来てしまったらしいんだ。 この不思議な穴を通ると、年を取らないんだって。今では、たくさんのゲストと出会え、夢と冒険がいっぱいの志摩スペイン村が大好きになって、元の世界には帰るつもりはないんだって。 秘密だけれど不思議な穴の入り口は、志摩スペイン村のどこかにあるんだって。(公式サイトより引用)
つまり、パルケのキャラクター達は400年前のスペインで生まれ、タイムスリップをして志摩スペイン村に来たということになっています。志摩スペイン村は1996年開業なので400年前というと1596年になります。天下分け目の関ケ原が1600年ですから、当時の日本はまだ豊臣秀吉の時代で、ちょうど豊臣秀吉の息子秀頼が元服したのが1596年になります。
話が少し脱線しましたが、パティオ・デル・カントがタイムスリップする前の約400年前のスペインを舞台にしたお話なのか、タイムスリップした後の志摩スペイン村を舞台にしたお話なのか気になるわけです。
パティオ・デル・カントの概要
さて、今回取り上げるパティオ・デル・カントは、三重県志摩市に所在するテーマパーク志摩スペイン村パルケエスパーニャで昨年から上演されているキャラクターミュージカルショーです。
パティオを見たことないよ!という読者さんは、こちらの記事をご参照ください。ショーの内容がわかりやすくまとめられています。
そんなの読んでる暇ねぇよ!って方のために簡潔に説明すると、
このショーではパティオ祭りが題材として使われています(パティオ祭りについては後述)。パティオというのはスペインの中庭を意味し、ダルシネアの家のパティオは美しい花で飾られています。
「みんながこのパティオに来て、自分の誕生花を見つけて、花言葉と一緒にお祝い出来たらなんて素敵でしょう」
そう考えたダルシネアは1~12月の誕生花を自分のパティオに飾ります。
そして、開かれたダルシネアのパティオの門。パルケの仲間たちが誕生花と花言葉を紹介しながらみんなのお誕生日をお祝いしていきます。
パティオ祭りについて
さて、今後の検討に少なからず関係してきますので実際にスペインで開催されているパティオ祭りについて確認しておきましょう。
パティオ祭りはスペイン南部のアンダルシア州コルドバのお祭りです。
例年、5月の第2週と第3週に開催されているようで、今年は5月3日~5月16日までの期間で開催されました。ちなみに昨年は、コロナウイルスの影響で10月に規模を縮小して開催されたようです。
ショーの中でダルシネアが「今は5月!」と言ったり、チョッキーだけお誕生日がお祝いされる描写があるのは(チョッキーは5月生まれ)、パティオ祭りが5月に開催されるという現実の設定を忠実に反映しているからなんですね。
パティオ祭りは1921年に初めて開催されて今年でちょうど100年を迎えます。
「お祭りが開始されたのが100年前なら、パティオ・デル・カントはタイムスリップしてからのお話じゃん~」
と思った方もいると思いますが、それだけでパティオ・デル・カントがタイムスリップ後のお話と判断するのは早計だと思います。1つ前のショーであるアベセデの時もそうでしたが、キャラクターショーでは、ショーを通してスペインの文化を紹介するということが意識されているように思います。そのような意識があるからこそ、ショーの公演期間中に100周年を迎えるパティオ祭りを題材として選んだのでしょう。というのも、このパティオ祭りはかなり由緒のあるお祭りらしく、2012年にユネスコの無形文化遺産に登録されています。日本では、能楽や浄瑠璃、京都祇園祭の山鉾行事などがユネスコの無形文化遺産に登録されており、パティオ祭りもそれと同じくらい歴史・由緒のあるお祭りというわけです。
このパティオ祭りは、賞レースになっていまして、毎年50ちかいパティオがエントリーされているようです。賞レースはパティオ祭りを推奨し、古都コルドバの伝統的な街並みを保存するために、古代建築と現代建築に分かれています。お祭り中は一般の観光客もエントリーされたパティオを訪れることができるほか、街の広場でショーやフラメンコが上演され、町全体がかなり盛り上がるようです。
パティオ・デル・カントの設定
このようなパティオ祭りを題材として扱っているパティオ・デル・カントの設定についても確認しておきましょう。
パティオ・デル・カントの設定についてはショー開始時のキャラクター達の会話がポイントになると思います。なぜなら、ショー開始時のキャラクター達の会話は物語の導入部になるので、観客が話を理解できるように、ショーの設定についての解説や伏線が盛り込まれていると考えられるからです。
パティオ・デル・カント開始時のキャラクターの会話は以下の通りです。
チョッキー「ねぇ、みんな! はやくはやく!こっちこっち!」
サンチョ「こらこらチョッキー、そんなに走ると石畳で転んで怪我をしますよ」
ドンキー「それに慌てて行かなくても、パティオは逃げたりしないから大丈夫なのだ」
フリオ「慌てる誰かは貰いが少なーい」
チョッキー「だって、1年ぶりにダルシネアのパティオの門が開くんだ。一番乗りで入りたいんだよー」
アレハンドロ「ったく、あいかわらずうるさい子ウサギだな」
チョッキー「あっ!うさぎって言うな!自分だって狼のくせに。べー」
アレハンドロ「なんとでも言うがいいさ、どんなにダルシネアが頑張ったって俺様のパティオの素晴らしさには勝てっこないんだから」
トロ「まぁまぁ、年に一度のパティオ祭りなんだ。喧嘩はやめておこう。」
アレハンドロ「あ?あぁ」
トロ「それにしても楽しみだなぁ。あの美しいダルシネアのパティオが見られるなんて。」
アレハンドロ「なんだと〜!?」
フリオ「ハッハハハハ、トロヴァールの言う通りだよ。私だけじゃありませんよ。村中のみんなが1年間待ち焦がれていたんですからね」
ドンキー「そうだなぁ。また今年もあのパティオでみんなで集まれるなんて夢のようだ」
フリオ「えぇ、今年はどんな楽しいことが待っているんでしょうね〜」
ドンキー「さぁな。でも言えるのは、絶対に誰の期待も裏切らないってことだ」
チョッキー「そう!だってあのパティオはダルシネアの...」
全員「秘密の花園だから!!」
まず、ダルシネアを除くパルケのキャラクター6人がダルシネアのパティオに向かっていることがわかります。これは物語が展開していく舞台がダルシネアのパティオであるということを説明していまして、ショーのセットにも「CASA DULCINEA(ダルシネアの家)」と表記されています。
また、パティオ祭りについては、
・毎年開催されていること
・ドンキー達がダルシネアのパティオを訪れるのは初めてではなく、1年ぶりであること(パティオ祭りが開催される度に訪れている)。
・アレハンドロがダルシネアのパティオに対抗心を抱いていること。
・村中のみんながダルシネアのパティオを楽しみにしていること。
ということが読み取れます。このあたりがパティオ・デル・カントの設定になります。
それでは、いよいよ「パティオ・デル・カントはいつのお話なのか?」という疑問について考えていきましょう。
考察1:パティオ祭りの参加資格は?
パティオ・デル・カントは、たったいま確認したように基本的にダルシネアのパティオを舞台に物語が展開していきます。展開としては、ダルシネアのパティオに飾られた誕生花と花言葉を1月から順番に紹介して、みんなの誕生日をお祝いしていくというかたちです。
しかし、9月だけは9月生まれのアレハンドロのパティオが舞台になります。どうやらアレハンドロもパティオ祭りに参加していたようで、挙句の果てにはパティオ祭りで優勝までしちゃいます。
ショー開始時のアレハンドロのダルシネアのパティオへ対抗心は、アレハンドロもパティオ祭りに参加していることを暗示していたわけです。
ここで気になるのが、パティオ祭りの参加資格です。
現実のパティオ祭りは古都コルドバで開催されるものですが、自分の家の中庭を開放して見せるというお祭りの特性上、パティオ祭りにエントリーできるのはコルドバに家を持つ人だけだと推測できます。では、パティオ・デル・カントのパティオ祭りの参加資格はどうなっているのでしょうか。
アレハンドロは9月の冒頭で
「パティオ祭りを知ってるかい? 村一番のパティオを決めるコンテスト」
と歌っています。
これはかなり示唆的なフレーズです。
パティオ祭りは村一番のパティオを決めるコンテストということですので、すなわちそれは、その村のパティオしかお祭りに参加する資格がないということをを意味します。
つまり、ダルシネアとアレハンドロは同じ村の住民ということなります。
アレハンドロの性格からして、ダルシネアの住む村のパティオ祭りに飛び込みで参加したというパターンもありえそうですが、自分の家の中庭を開放するという祭りの特性からして、飛び込みで参加するのはほぼ不可能ですし、優勝してることを考慮すると、ちゃんと参加資格を有していたと考えるべきです。
このように考えると、ダルシネアはガート村、アレハンドロはローボ村、ドンキー達はドン・キホーテ村に住んでいるというタイムスリップ前の設定が成立しなくなり、パティオ・デル・カントが約400年前のスペインでのお話という考えは否定されます。
したがって、パティオ・デル・カントは、ドンキー達が志摩スペイン村にタイムスリップした後のお話で、アレハンドロがいう「村一番」は「志摩スペイン村で一番」と解釈することができます。この場合、フリオが冒頭で言っているダルシネアのパティオを1年間待ち焦がれている村人は、ショーを見ているゲストということになるのでしょうか。
考察2:優勝シャーレに刻まれたGATOの文字
しかし、この解釈に対する反証があります。
それは、優勝したアレハンドロがダルシネアから渡された優勝シャーレに刻まれたGATOの文字です。
このGATOの文字には2通りの解釈ができると思います。
1つは、シャーレのGATOの文字を素直に理解して、パティオ祭りが開催された場所がガート村とする解釈です。
もう1つは、パティオ祭りはタイムスリップした後のお話なので、優勝シャーレのGATOの文字はガート村時代の名残だという解釈です。
どちらの解釈が正しいのか。
その答えは閉ざされたパティオの門の先にあります。
ASOCIACION DE AMIGOS DE LOS PATIOS GATENSES
それぞれの意味はこんな感じ。
asociacion:協会 amigos:友達 patios:パティオ gatenses:ガート村の
スペイン語に疎いので上手に日本語訳できませんが、ガート村のパティオ協会というようなニュアンスの意味だと思います。
このように、ショーで使用される小道具やセットにはガート村と記されており、パティオ祭りが開催されているのはガート村と理解したほうがよさそうです。ガート村が舞台であるならば、パティオ・デル・カントは約400年前のスペインでのお話ということになります。
先ほどの考察1で導き出した答えと真逆であり、矛盾が生じてしまいました。
考察3:井戸に貼られたタイル
考察1・考察2では、パティオ・デル・カントの舞台は志摩スペイン村なのかガート村なのかという視点から、パティオ・デル・カントがいつのお話なのか考えてきました。
ここで一旦視点を変えて、実年代からパティオ・デル・カントがいつのお話なのか?考えてみたいと思います。
実は、ショーのセットに年代が記されたものがあります。
それは井戸に貼られたタイルです。
井戸はステージ下の両サイドに配置されていて、一見するとダルシネアのパティオの井戸なのですが、個人的に何か意味ありげだなぁと疑いの目で見ていたのですが、最近公式が更新したブログでこの井戸がダルシネアのパティオの井戸であることが確定しました。
井戸にはそれぞれ6つのタイルが貼られています。
その中に年代の記されてるタイルが3つあります。
「2°PREMIO de PATIOS 2005 ARQUITECTURA MODERNA」
「2°PREMIO PATIOS ARQUITECTURA MODERNA AÑO 2011」
「1°PREMIO papiro 2016 Votacion Popular」
日本語訳するとそれぞれ
「現代建築部門2005年2位のパティオ」
「現代建築部門2011年2位のパティオ」
「2016年人気投票1位パピルス」
という意味になります。パティオ祭りは、古代建築部門と現代建築部門があることまで調べることができましたが、人気投票が何を意味するのは勉強不足のためわかりません。パピルスについてもpapiroと検索すれば、パピルスと出てくるのですが、そのまま訳しても意味が通らないように感じますので別に意味があるのかもしれません。もし、わかる方がいたらご教授ください。
公式さんが言うように、この井戸がダルシネアのパティオの井戸と理解して良いのなら、このタイルはダルシネアのパティオが過去にパティオ祭りで受賞した賞を表していると考えられます。
村中のみんなが1年間楽しみにしており、パティオを訪れた仲間たちが「こんな綺麗なパティオ見たことないよ!」と感嘆するほどのダルシネアのパティオ。てっきり毎年のパティオ祭りで優勝しているのかと思ってしまいますが、以外にも過去の受賞歴は2005年の現代建築部門2位、2011年の現代建築部門、2016年の人気投票1位のみということになります。
タイルに記された年代はいずれも21世紀ですから、パティオ・デル・カントはタイムスリップ後の志摩スペイン村でのお話ということになります。
おわりに
パティオ・デル・カントがいつのお話なのか?という問題について、「パティオ祭りの参加資格」、「ショーに使われる小道具やセット」、「井戸のタイル」という3つの視点から考えてみました。それぞれをまとめると以下の通りになります。
「パティオ祭りの参加資格」
パティオ祭りは村一番のパティオを決めるお祭りでその村の住人にしか参加資格がない。アレハンドロとダルシネアが参加してるので両者は同じ村に住んでいることになる。→約400年前でのスペインの設定が成立しない→タイムスリップ後のお話である。
「ショーの小道具やセット」
優勝シャーレにGATOの文字があり、パティオの門の奥にガート村であることを示す文章があり、ショーのガード村が舞台であることを示している。→タイムスリップ前のお話である。
「井戸のタイル」
2005、2011、2016という年号がみられる→タイムスリップ後のお話である。
このように1つの考え方を採用すると、他方の考え方が成立しなくなってしまいます。この矛盾がタイトルにある二、三の問題です。
ここで終わってしまっては、結局パティオ・デル・カントがいつのお話なのかという疑問に対する答えが出ないので、少し乱暴でありますが、矛盾が生じることを承知して、私の考えを提示しておきます。
私は、パティオ・デル・カントの世界では、パルケエスパーニャの仲間たちがタイムスリップをして志摩スペイン村にやってきたという設定が反映されていないと考えています。そして、ダルシネアはガート村、アレハンドロがローボ村、ドンキー達がドン・キホーテ村に住んでいるという設定もあまり意識されていないものとみています。
そのように考えると、パティオ・デル・カントは現代のガート村を舞台にしたお話ということになり、今回の記事で考察した内容と矛盾せず理解することができます。
スペイン村のキャラクターの設定を無視することになってしまいますが、タイムスリップ云々の設定自体が古いものになりますし、なにより、パティオ・デル・カントについて考えているわけでありますから、古いキャラクター設定よりもパティオ・デル・カントのショーの内容・セットから言えることを重視すべきだと思います。
以上がパティオ・デル・カントがいつのお話なのか?という問題に対する私のいまの考えです。
後半少し強引なところもありましたし、自分の考えに対しての批判やみなさんの考えを教えていただき、パティオ・デル・カントに対する理解が少しでも深めることができればと思います。
Adios.