【3DCG】デジタルで作る! フィギュア・スタチュー制作(守護龍編)【Tech】
お久しぶりです。
株式会社Black Beard Design Studioクリエイティブディビジョン
アートディレクターの中村です。
今回は【Tech】カテゴリの記事第4弾になります!
【Tech】では、ツールや自習内容など技術に関する情報をお届けしております。
どうぞよろしくお願いします!
さて、今回の題材は今までと少し方向性が異なり
デジタルでのフィギュア、スタチューの制作となります。
筆者自身フィギュア制作の専門家というわけではないのですが
日頃向き合っているデジタル造形という観点から
アプローチをさせていただければと思います!
近年優れた3Dプリンターが流通してきてはおりますが
各種機材、器具の設備や費用、付随する様々な
専門知識や着彩、調整技術、求める完成度によっては
デジタルとアナログを行き来する最終作業なども必要となり、
まだ少し敷居が高いなと感じられる方も多いのではないでしょうか。
※勿論現実に出力された造形物の魅力は格別ですよね!
その中でデジタル、アナログに関わらず基本的な技術力や知識を
向上しておくことは間違いないポイントだと感じております。
などなど幅広い方に参考になりましたら幸いです!
▼今回の完成イメージ
※動画は【4K(2160p)】での再生をおすすめします。
●作品のテーマ
今回の制作にあたり、下記のようなテーマやコンセプトを設けました。
今回の使用ツールは下記となりますが、他ツールでも代替可能かと思います。
・造形→ZBrush(一部Maya)
・着彩→Substance 3D Painter
・ターンテーブル動画→Marmoset Toolbag
●工程、構成&ミニテック集
【工程や流れ】
以前の記事でもお伝えしている『単純化からの細分化』ですが、
非常に万能で、別物に思える今回のようなケースでも非常に有効です。
①アイデアと構成
この時点では形状重視ではなく、
ざっくりとコンセプトやアイデアをまな板の上に揃えるイメージです。
②完成像のラフイメージ制作
形状のバランスやボリュームを調整し、おおよその完成イメージを構築します。
③形状の詰め作業とディテール入れ
詰め切れていなかった流れの調整や細部の調整を行っていきます。
基本的には
テーマ→材料→※構成→ラフ→ディテール
※構成に関しては次の項目にて更に解説いたします
と進めつつ、
その道中での良いアイデアは臨機応変に取り入れて進めます。
(完成像やビジュアルが先行した場合でも
上記のような整理をしておくと、アイデアの肉付けや資料集めの役に立ちます)
【構成の詳細&解説】
構成に関してはこのようにしたら必ず正解というものはなく、
作品ごとの伝えたいテーマや意図通りになることが特に大切かと思います。
そして、その作品テーマが動的であるか静的であるかの違いはあれど
第三者の方へ何かしらのストーリー性を感じられるような作品になることが理想としてはあるのではないでしょうか。
今回のケースでは
中心のアイテムに対して龍を螺旋状に巻き付かせることにより
適度に動きがある構成としました。
(左右の非対称性も動きが出やすいポイントとなります)
またトラディショナルで落ち着いた雰囲気も出したかったので、
ある程度動きは感じさせつつも、丸太から削り出せるような構成も意識しました。
なお、塊や削り出しが意識された造形は一体感を生み、作品の力強さを演出します。
現実に出力するケースの場合、強度の向上、支柱を分かりにくくするという観点からも良いかと思います。
その他の要素としては
龍の体の他にも、取り巻く雲やサブアイテムの鎖なども
螺旋状に配置することにより多層構造にしました。
(日常では固定化されていないように感じる気体や液体を
造形に落とし込むところも醍醐味ですね)
加えて、金属など目の引く要素をポイントで配置して
絵にアクセントが生まれるようにします。
【造形ミニテック集】
メインキャラクターの制作方法は、
ゲーム制作であるようなTポーズからの変形ではなく別途の四肢を配置する手法をとりました。
造形や形状に関してはフィギュアらしい処理やまとめ方を意識し
なるべくどの角度から見ても表情がある形状になるように進めます。
例えば毛に関してCG制作ではファー機能を用いたり、板を並べることも多いですが、
量感のある塊と捉え、
最初から一本一本というイメージではなく
①全体→②パート→③細分化
(作品やテーマによってはここから更に作りこむ)
という流れで、束感や全体のうねりを意識していきます。
毛先の表情や雲の渦感はZBrushの『Spiral』ブラシが有効です。
その他、雲のコツとしては作業中にしぼんでしまった箇所は
『Inflat』を使用して膨らませます。
◇◇◇ブレイクタイム◇◇◇
雲を成形している時期、川に浮かぶ桜を見かけました。
花びらが流れることにより
普段は見る事が出来ない川面のダイナミックでありつつも
微細な表情やリズムを観察することが出来て
同じ流体現象として、とても参考になりました。
雲などの気体を造形に落とし込むにはかなり距離があるので
先人達のスタイライズ(記号化)されたアイデアを
ベースとして頂く必要がありますが、
原体験的な物も大切だなと改めて感じさせられました。
(要するにどちらも大切ですね!)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
鱗等パターンに関してはUV展開をしておくと、自動で入れる事が出来るので便利です。
(『Tool』→『Surface』→『Noise』)
また、体は単調にならないように下地に表情を入れておきます。
下地は鱗で見えにくくなりますが、有無を比較してみると下図のような差が生まれます。
(規則化され過ぎると有機物と認知出来なくなるので注意が必要です)
作業中は何度も回転をさせて退屈な箇所(カーブやシルエット不足等)を減らしていきます。
メインで見せたい角度以外も注意して調整を進めます。
【テクスチャ&カラー】
※他パートも同様ですがこちらの工程や手法が正解というわけではなく、一つの例として参考にしていただけますと幸いです~!
①
ベースは上から重ね塗りする事を考えてこの時点ではランダム感
強めにしておきます。
※デジタル制作の弱点として不規則さや不確定的な良さが
発生しづらいという事がありますのであえてランダムな
濃淡や色相を仕込んでおきます。
②
現代的なフィギュアとしては、はっきりとした彩色や
陰影を入れる方向が多いかと思いますが
今回は伝統風な仕上がりにしたかったので
配色や陰影は控えめにしてアート性を感じるような方向で進めます。
③
重ね塗りやあえて落としたような味わい(ウォッシング)を少し出しつつ
補色同士が引き立て合うように仕上げます。
今回は伝統風であって本物の古物ではありませんので汚し(ウェザリング)
は基本的に入れておりません。
【マテリアル&レンダリング】
完成イメージとして、もう少し工芸品のようなテイストを出したいので
Substance 3D Painterの
『Fresh Rough Concrete Slab 02』にてディテールを追加しました。
(画材の粘土に紛れ込んだ大き目の粒子と不純物をイメージ)
また、質感は透過の設定を行う事によってやや温もり感を持たせました。
続いて少しピンポイントかつ基礎的な内容となりますが、
Marmoset Toolbagでの
・回転設定(ターンテーブル)
・カメラアニメーション
・動画出力
の工程をご紹介いたします。
まず、ターンの設定ですが
『Scene』→『Turntable』をクリックし、制作したオブジェクトを
『Turntable』直下に格納すると回転をしてくれます。
次にカメラアニメーションの設定ですが
今回は縦長のオブジェクトなのでカメラを足元から上へ移動させます。
①鍵マークで好みの高さでキーを打ち
②必要であればグラフをリニアに設定します。
最後に動画の出力に関しては、
『Render』→『Render Options』→『Video』にて
出力先や出力サイズ、サンプル数等を調整し
『Render Video』をクリックすればOKです!
●まとめ
いかがでしたでしょうか?
人それぞれ題材の好みはあると思いますが
キャラクターをダイナミックに配置したり
他アイテムと構成してヴィネット感を出してみたり
フィギュアやスタチューの制作は
ものづくりの原点的な楽しさがありますね!
また今回もそうですが完成してみると己の拙さを感じつつ・・。
そこに成長の余地と、次こそより良い物が作れるようにという意欲が湧いてきました。
理想ではありますが
『造形なので造形の範囲』という認識ではなくて
『それを超えた何か(人の心を動かす)』
という部分をより発揮出来るように
実際のお仕事、自主制作に関わらず
これらも精進して行きたいなと思いました!
それではまた次回お会いしましょう~!
●おまけ
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