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四半世紀ぶりのノルウェイの森

Audible村上春樹ノルウェイの森を聴きました
初めて読んだのは確か高校一年生の時で、それ以降に再読はしていないため四半世紀以上が経過していました 村上春樹が38歳の時の作品なのですが、こんなにもわかりやすく、こんなにも面白かったかと改めて驚きました Audibleなので通勤とか散歩とか家事とか買い物とか、いろいろな時に少しずつ聴いたのですが、早く続きが聴きたくなるほどにずっと楽しい時間を過ごすことができました

当時、ライ麦畑でつかまえては先に読んでいたと思うけど、グレート・ギャッツビーに関してはまだ読んだことがなくて、こんなにもノルウェイの森がこの2作の特徴を色濃く取り入れているとは気がつきませんでした 村上春樹の作品は10作品以上は読んでいて、その中でもノルウェイの森は特に好きな作品ではなかったのですが、今回改めて読み直してみて、なんなら一番楽しい作品なんじゃないかと思い直しました 色々ととっ散らかしてる部分もありますけど、とにかく読んでいて愉快な文章なので純粋に楽しいです(村上春樹風に言えば、なかなかに読ませる作品)それから、全てがハッピーな物語では無いですが、私は終わり方も結構好きです

他に好きな部分はというと人間描写ですね、主要な登場人物はもちろんのこと、モブキャラもいちいち印象的で、誰も彼もクセが強いんだけど非現実的とまでは行かない、ギリギリ想像が可能なラインの変を攻めているのがいいです

話がぶっ飛ぶけど、似たような例としてシンプソンズのキャラクタも好き

どいつもこいつもクセが強くてボコボコの顔をしているんだけど、思いの外現実世界にも似たような人がいるから不思議で、電車に乗っていたりすると「あなた、シンプソンズにいましたよね?」って人が一両あたり7,8人はいますから

さて、話をノルウェイの森に戻します まだ記憶に新しいので、愛らしいノルウェイの森のキャラクタたちを列記し紹介します

僕(ワタナベ トオル)、直子、緑、レイコ、キズキ、永沢、ハツミ、突撃隊、緑の父親、療養所の門番 などなど

みんな違くてみんないいです 思い出せない人がいて悔しい方は、是非ググってみてください さすが1000万部も売れた人気作品だけあって、細かいことまでネットで何でも検索できます

また、一緒に懐かしんで頂くために、どうということのない会話の一部を引用しコピペしてみます これは直子とレイコが暮らす精神疾患の患者が暮らす療養所「阿美寮」の食堂での3人の会話です

「あの人は医者なんですか、それとも患者さんですか?」と僕はレイコさんに訊いてみた。
「どっちだと思う?」
「どちらか全然見当がつかないですね。いずれにせよあまりまともには見えないけど」
「お医者よ。宮田先生っていうの」と直子が言った。
「でもあの人この近所じゃいちばん頭がおかしいわよ。賭けてもいいけど」とレイコさんが言った。
「門番の大村さんだって相当狂ってるわよねえ」と直子が言った。
「うん、あの人狂ってる」とレイコさんがブロッコリーをフォークでつきさしながら肯いた。
「だって毎朝なんだかわけのわからないこと叫びながら無茶苦茶な体操してるもの。それから直子の入ってくる前に木下さんっていう経理の女の子がいて、この人はノイローゼで自殺未遂したし、徳島っていう看護人は去年アルコール中毒がひどくなってやめさせられたし」
「患者とスタッフを全部入れかえてもいいくらいですね」と僕は感心して言った。
「まったくそのとおり」とレイコさんはフォークをひらひらと振りながら言った。「あなたもだんだん世の中のしくみがわかってきたみたいじゃない」
「みたいですね」と僕は言った。
「私たちがまとな点は」とレイコさんは言った。「自分たちがまともじゃないってかわっていることよね」

村上春樹『ノルウェイの森』

物語には何も影響しない素朴な会話ですが愉快です 3人とも真面目な顔して冗談を言うけど決して歯を見せて笑うようなことはない、そんなシニカルな様子が愉快なのです なお、ノルウェイの森村上春樹作品の中でも特に淫靡な表現が多いイメージがあったのですが、思っていたよりは少なかったかなと思いました

村上春樹が好きな人、嫌いな人、好きだった人、嫌いだった人、いろいろいると思いますが、私にとってAudible×四半世紀ぶりの村上春樹は、しばらく癖になりそうな予感です スッと頭に入りやすい短い文というのも耳から読むのにあっているんだと思います 次は海辺のカフカに行ってきます


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