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コロラド博士のJack in The BoxNo.007 2023/12/28(GMT) 大竹まことゴールデンラジオ 大竹メインディッシュ2023/12/25出演 解説 導入・準備編
1.はじめに
去る、2023年12月25日に、文化放送 大竹まことゴールデンラジオ 大竹メインディッシュに出演しました。昨年12月12日の同コーナーに引き続きほぼ1年ぶり、4回目の出演となりました。出演は、zoomによる遠隔会議です。当日中に“「日本はコロナの最劣等生です」ナゼ今も年2回大きな波がやってきて医療がパンクするのか専門家が解説”と題して番組レポートが公開されています。なお4年にわたり私の追っかけ(つきまとい)に余念のない御方が勘違いされていますが、番組レポートは、私の手によるものではありません。
番組はかなり好評で、多く聴取者のご支持により、YouTubeでは、1万視聴を越えて週間ランキング入りできました。番組はYouTubeとPodcastでいつでもどこでも誰でも視聴できます。
番組中の持ち時間は、正味20分程度のため事前に制作した放送原稿をもとに大竹まことさんに話題を選択してもらう形式をとっており、いつもの同番組と進行が大きく異なるらしく、驚かれた聴取者も多かったようです。また用意した話題は、放送中で取り上げたものの3倍程度あり、準備段階で絞ったものを含めると10倍程度になります。
これから何回かに分けて放送原稿をもとに番組中ではお話しできなかった事や、より詳しい解説を行います。
今回は、導入・準備編です。
2. 出演日の選定
今回の出演は、9/27に番組担当の方から出演の話が来ており、勿論お受けしました。出演の想定時期は12月でした。この時第9次第3波感染期(9-3rd Surge)が収束しつつも第10次第1波感染期(10-1st Surge)が寒冷地で検出されていました。
この時点でのリクエストは次の4点でした。
・死者数等から割り出した9波の被害実態
・10波の感染予測(時期、規模など)
・抗ウイルス薬 日本と外国の運用の違い
・ワクチン接種
この後、10th Surgeの挙動を継続的に観測・分析していましたが、10月に予測したEG.5.1株再燃による10-1st Surge, GK.1.1(XBB.1.5の変異亜株)による10-2nd Surgeがたいへんに小規模で収束したことによりBA.5.2再燃による昨年8-1St Surgeと異なり2020-21年3-2nd Surgeおよび2021-22年6-2nd Surgeのように年末に新株による感染拡大期が本体であると判定したのが11月中下旬でした。
この時文化放送から連絡があり、12/4,15, 1/15以降の月曜日のいずれかと出演日を提案されましたので12/25と答えています。これが11/13-15でした。
要するに、第10次第4波感染拡大期(10-4th Surge)は、新株であるBA.2.86系統の株を支配株(ドミナント)として発生し、それが主波であると予測していたのです。但しこの時点でその到来は、24年1~2月ごろと見込んでいました。現実には、欧州で11~12月、日米で12月からと大幅に前倒しとなっており、2021年11月から世界を席捲したο株(BA.1)による感染の波に似た挙動を示しています。
本稿執筆は、12/28(JST),12/27(GMT)ですが北海道、山梨県で下水中ウイルス濃度の急伸が見られ、九州、中国、近畿、北陸でも下水中ウイルス濃度の急伸期への移行が見られるため、感染発生時期で評価すると12月中旬に10-4th Surgeは、本格的な感染の波として生じていたと考えられます。
現状評価
— Hiroshi Makita Ph.D. 誰が日本のコロナ禍を悪化させたのか?扶桑社8/18発売中 (@BB45_Colorado) December 26, 2023
北海道
Alert Condition Red-Black
年末年始にかけてCOVID-19とFluによる大規模な「ツインデミック」が予測される。
非薬理的感染対策の徹底を強く推奨する。 pic.twitter.com/OQB4rG9X2l
そういったことから、12/25を出演日とした事は系統的観測と科学的分析による結果として最適日であったと自負しています。
3. 放送原稿の準備
12/15日には、番組スタッフから概要が送られてきました。
●今年5月、新型コロナが5類化。どんな影響があったか?
データ(感染者数、死者数)の劣化、「コロナは終わった」というイメージの悪影響、ノーマスクの増加、検査費用、治療費の増加
●第9波どんな波だったか?被害は?
3月末からはじまり、長期間続いた、支配株は?、実際の死者・感染者数は?
●第10波の感染予測
第10波は既に始まっているのか?、いくつもの波になるか?エピデミック(エンデミック?)になる可能性
●日本と諸外国のコロナ対策 どこが違うのか?
PCR検査、抗原検査の運用、ワクチン接種、抗ウイルス薬の運用、マスク、換気など、他国も「コロナとの共存」に失敗している?
●いま私たちが個人でできる対策は?
これはたいへんです。とてもとても20分には収まりません。かつて出演していたインターネットでの生放送では、4時間くらいかけてお話する内容ですしラジオですから書画(図表の画面への投射)が使えません。
そこで番組のスタッフに箇条書きにした図表なしの粗稿を送りました。スタッフは粗稿をもとに放送原稿案を作ります。
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この後、番組スタッフが放送原稿を制作し、3往復させてスタジオの大竹さん始め皆さんが共有する放送原稿ができ上がりました。
完成稿は約5000文字と図表で、20分にこのような分量の放送原稿を用意する事はあまりないと思いますが、内容が人の命と社会の安全に関わる事ですし、なにより大竹さんと聴取者が関心を持つ話題がどれかは判りませんので、出来るだけ広く深く素材を用意して、放送本番で取り上げてもらうため、かなり大きな原稿を用意する事にしています。番組スタッフには大きな負担をかけますが、快く引き受けてくれてたいへんにありがたいです。
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原稿は多ければ良いと言う訳でなく、図表も多ければ良いと言う訳ではありません。筆者は学者としての一連の教育と実務を経ていますのでたとえ専門外であっても厖大な文献から必要な資料を選択し、読解、理解、解説する事が出来ますが、社会一般にそのような事ができるひとは稀ですし、大量の資料があるとむしろ混乱してしまいます。
このため構成作家さんが削り、筆者が加え、更に削り、加えるという工程によって全9頁の放送原稿と3葉の図表がスタジオの方々に渡ります。この原稿に大竹さんは目を通し、短い時間で要点を抽出して放送中に触れ、筆者が答えます。したがって、番組が始まるまで実際に何をどの順番で話題にするかはわかりません。
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4. リハーサルと本番
当日、事前にzoomの接続試験を行います。これは大丈夫だったのですが、久しぶりのzoom会議ですのでやはり事前準備でいくつかの動作不良がありましたが、それらは解決できました。
残念ながら放送中に音声が20秒途切れるインシデントが生じましたがこれは、通常zoom会議では絶対に使わない無線ヘッドフォンになっている事を見落としていたために、不意に音声処理落ちしてしまった為です。Mouse以外の無線を追放すれば再発しません。
本番では、大竹さんが選んだ話題に添って無事に進みましたが、とにもかくにも時間管理がたいへんで、減算タイマーを見ながらの出演でしたが、結果として早口となります。
番組中で、大竹さんの質問は的確でした。最後に10th Surgeへの市民の対処については、咄嗟の機転で大竹さんが読み上げる事で時間に収まりました。
5. 解説記事の必要性
COVID-19パンデミックも丸4年となり、流石に学術的な合意事項が増えてきています。また日本を除く中進国以上の世界各国では、エンデミック化と見做せる状況になっており、合衆国など日本を除く世界の多くの中進国以上の国々では、約18ヶ月にわたって「コロナ後」といって良い状況が続いています。
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日本も2023年冬季にはエンデミック化に移行する可能性がありました。しかし感染獲得免疫を回避すると言われるBA.2.86系統の株が支配株になった結果、先行する欧州や東南アジアでは、エンデミック状態が破れて大きな感染拡大が観測されています。結果として日本でも今シーズンのエンデミック化は達成されない見込です。残念ながら日本でのエンデミック化の達成は、早くとも2024年夏季になる見込です。
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但し、エンデミック化と言うのは2021年12月にロシェル・ワレンスキーCDC所長(当時)やアンソニー・ファウチ博士などが主張したもので学術的に厳格に合意されている用語ではなく多分に政治的な用語です*。
*例えば、2022/01/24 CNN AC360Degreeでは、ゲストにより厳しい批判が為されている。
こういった大きな変化について番組中では言及できませんでしたが、放送原稿では言及しており、また放送中に言及したことも時間の制約から不十分なものが多々ありますので改めて放送原稿を基本にnoteで解説して行く事にしました。
次回から、各項目について放送で言及した事の詳細、放送で言及できなかった事などを記して行きます。