
数学的な見方・考え方final?
学習指導要領では全ての教科で「見方・考え方を(子どもが)働かせる」ことが明記されています。学習指導要領が告示された当初、「見方・考え方を働かせるとはどういうことなのだろう?」と悩んだことを思い出します。では、実際にどうなのでしょう?
そこで、参考になるのが齊藤(2021)の主張です。
子どもたちが今、何ができるのか、そしてそれを使うとさらにどんなことができるようになるかということに常に意識をもてる
まさに既習を用いて問題解決を進め、最終的にはこれまでの見方・考え方を統合する姿だと言えます。さらに、この見方・考え方を発展させて次の問題を解決していきます。学習指導要領解説算数編に載っている数学的活動を行うということです。
黒﨑(2018)は、数学的な見方・考え方を働かせる上で教師が注意すべきことを述べています。
課題の質によっても異なるが、課題に直面すれば、直ちに数学的な見方・考え方を働かせて適切な見通しをもつことができるわけではない。
どんな見方・考え方でアプローチすればよいか思いつかない場合があり、これを放置すると学びからの逃亡が生じてしまうため、教師は臨機に応じて支援する必要がある。
算数では、問題解決型学習の中に「自力解決」と呼ばれる時間があります。
私はこの時間は自分の考えを持つことができればよいと考えていますが、 なかなか手がつかないといった様子も見受けられることがあります。
以前、ヒントカードや黒板の前に集めるといったアドバイスを受けたことがありますが、それもどうなのかと思っていた次第です。
上記の課題を克服する方法の1つに「発想の源」に着目した加古(2019)があります。
子供が発想の源を自分で見つけることができれば、問題解決をするための計画を立てることができる。計画を立てることができれば、自分で問題に働きかけ、解決に向かって動き出すことができる。その際、「既習の内容に立ち返れば、計画を立てることができる」ということを知っていれば、何度でも計画を練り直すことができる
発想の源を言語化すると、1時間の中で最も大切な本質的な考え方を言葉で理解することができる。その結果、多くの子供が、次の問題を解決する際にその考え方を使えるようにする。
「発想の源は、見方・考え方に通ずるものである」と私は捉えています。
友達の発想の源に触れることで、「この問題はこうやって考えればいいのか」と見方を働かせるきっかけを得ることができます。
転移はしにくいことを踏まえると、単元を通した見方・考え方を子どもたちが働かせることができるようにする必要があります。
繰り返し、繰り返し見方・考え方を働かせることで定着していくのだと思います。
そのためには、教師が価値づける、子どもに見方・考え方を意識させるといったことが不可欠だと思いますが。
では、具体的にどのような取り組みが考えられるのでしょう?
3つの段階に分けた方法を齊藤(2021)は示しています。
まず、子どもが有する見方・考え方を顕在化させること、そして数学的活動において見方・考え方を明示的に指導することでそれを成長させること、さらに一段成長した見方・考え方で子どもに何ができるようになったのかという資質・能力を自覚させていくこと
この方法で注目すべきポイントは3つあると思います。
・子ども発でスタートしている
→見方・考え方が顕在化するように教師は教材や発問を工夫する必要がある
・教師の指導があること
→教師が本時や単元で働かせる見方・考え方を理解しておく必要がある
・振り返りで見方・考え方に触れること
→視点を定めない、感想のような振り返りでは振り返りとして薄いものになる可能性が高い
また、見方・考え方を意識させるための取り組みの1つとして、加古(2019)は振り返りに言及しています。
振り返りの一番の価値は、「共通する考え方を見つけ、本質的な考え方を顕在化させること」
共通する考え方をいうのは、1時間の授業だけでなく、単元を通して、そして、学年を超えても現れる。
算数という教科が、他教科と比べても系統性が強い教科であることを踏まえると、教師が広い視点で見方・考え方を把握しておく必要があります。
普段の授業でなかなかできないかもしれませんが、最低でも単元の見方・考え方を意識しておかないといけません。
発想の源を問う授業を構成するための手順を、加古(2019)は次のように示しています。
1 本質的な考え方が何かを考える
2 発想の源を問う場面を考える
3 発想の源を板書に残す
こういった授業を繰り返し、子どもが見方・考え方を働かせることができるようになると、内田(2022)が提唱する「未決状態に耐える能力」が身につくのではないでしょうか。
中腰に耐える。「座るか立つかどっちかにしろ」というのに対して、「ちょっと待ってください。もう少し中腰でいさせてください」という構えです。