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探索的な対話

大学院の講義やリワークでは、当たり前のように対話・交流の時間が設けられていました。見知らぬ人と話すことを初めは苦痛に感じていました。しかし対話してみると、思いもしなかった考えに触れることができたり、相手が話したことから考えさせられたりすることが多々あります。これが対話の良さであり、こういった経験を積むことで「相手の考えを聞いたみたい」と思うことができるのでしょう。

学習内容を深める探索的な対話について志田(2024)は次のように述べています。

学習内容を深めるのは探索的な対話が行われているときであり、方法を揃えたときは発表的な対話になりやすく、揃えないときは探索的な対話になりやすい

「算数授業のパーパス思考」(2024)志田倫明,東洋館出版社

間違いなく私が行なっていた対話は探索的な対話であり、学習内容が深まっていました。こういった対話を授業で行うことができるのが望ましいでしょう。

一方で、授業中なかなか話すことができない児童がいます。課題の難易度や教室の心理的安全性など、教師側に課題がある場合が多いと感じています。では、黙っている児童は何も考えていないのでしょうか。そんなことはなく、具体的に鈴木(2019)で触れられています。

ほとんどの子どもは、黙っていても、熱心に考えているものです。それに、いつどこに飛んでくるかわからない「対話のボール」は、クラス全体によい意味での緊張感を生みます。これは全員味方で挑む学びのゲームなのです。

鈴木有紀(2019)「教えない授業」英治出版

熱心に考えている児童の考えを全体に取り上げることで、探索的な対話をさらに展開していきたいものです。では、具体的にどのような取り組みをすればよいのでしょう。

・課題を見直す
・見通しを持てるように足場かけする
・教室の心理的安全性を高める

全く具体的ではありませんが、大きく分けると対話を妨げる原因は3つではないかと思います。話したい・聞いてみたいと思えるような課題、自分の考えを持つことができる、間違いなどを言っても安心、ここをクリアできると探索的な対話が展開できるはずです。

ペア・グループ・クラス全体で探索的な対話が展開される中で、必ず誤答に出会うことがあります。誤答はデリケートに扱わないと、もう二度と発表しないということにもなりかねません。しかし、誤答は学びを深めるチャンスでもあります。そんな誤答の扱い方で参考になるのが志田(2024)です。

子どもが誤って答えてしまったとき、その場で無理に修正に向かわせず、一旦受け入れることにしています。そして場面を変えて適用させていくのです。すると、今回のように子ども自身が違和感や矛盾を認識し、問題を明らかにしていきます。

「算数授業のパーパス思考」(2024)志田倫明,東洋館出版社

この誤答の扱い方は、まさしくスキーマの修正と言えます。スキーマを修正する上での教師の役割を大島純・千代西尾祐司編(2019)は次のように示しています。

学び手が自身の理解では説明できない観察またはデータに直面し、認知的葛藤の状態から自身の考えを修正する必要性に気づかせる教師の役割が重要となるのです。

「主体的・対話的で深い学びに導く 学習科学ガイドブック」
(2019)大島純・千代西尾祐司編,北大路書房

こちら側が一方的に教え込んだり、伝えたりしてもスキーマを修正することは難しいです。やはり、探索的な対話をきっかけとして、自分たちで乗り越えていくしかないのでしょう。

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