僕にメジャーリーグを魅せてくれたある男について
2023年3月。
マイアミでの歓喜を目撃した日本人は、メジャーリーグへの憧れを抱きました。あの大会が大きなきっかけとなったのは言うまでもありません。
ただ僕が芯から好きになるメジャーリーグの世界がアメリカ中西部Minneapolisの街にある事は、その時知る由も無かったと…
Joe Ryan
彼の名前を知ったのがいつだったのかは忘れましたが、どこで知ったかは今でも覚えています。
メジャトピさんという方がVAAについてまとめたこの動画をYoutubeで見たのが全ての始まりでした。
Vertical Approach Angle
いわゆる「速く見えるストレート」「キレのあるストレート」と言われるようなふわっとした概念を、ある一つの視点から数字で解説してみせる指標は、当時の僕にとって少なくとも衝撃でした。
ライアンは2022年に147イニングを投げ、3.55 ERA, 25.0 K%, 3.99 FIPの好成績でルーキーイヤーを終えました。
注目すべきは彼の平均92マイル, 14.8 IVBのフォーシームが生み出す特異なバリューです。投球の6割を越えたフォーシームは25.8 whiff%/.174 BA/.267 wOBAを記録し、BaseballSavantの算出するRun Valueでは+20を記録してフォーシーム全体で5位につけました。この成績の理由は、彼のフラットなフォーシームと高めへの卓越したコマンド力に他なりません。
そのようなライアンのフォーシームを、僕みたいな素人でさえ具体的なデータを用いて説明ができるMLBの整った環境への感動が、今の自分のMLB観戦の楽しみに繋がっていると言うことをまずは伝えたかったです。
Weird guy
投手は得てして変人であるものですが、その中でも際立つモノを持つライアンはツインズファンの中で大きな人気があります。
選手をアイコンにしている現地ツインズファンアカウントの画像は大体Joe Ryanです。知らんけど
彼の進化とその先
2022年のライアンの投球は、6割のフォーシームにスライダーとチェンジアップを加えた3球種が全体の約9割を占めていました。
2023年以降はチェンジアップを削って完全にスプリッターに置き換え、オフスピードピッチの投球割合をアップさせました。そして2024年シーズンには前年83.9 mphだった球速を4.6 mph増加させ、より速球に近い球速や軌道で落ちる強力なスプリッターをモノにしました。
スプリッターへの完全移行は、StuffとLocationの両視点から見ても納得でしょう。
また同じく2023年以降、横成分が小さく球速が速いジャイロ系スライダーも投球割合を落とし、代わりに横成分が大きく球速が遅いスイーパーが台頭しました。そして2024年シーズンにはこれまた球速を2.1 mph増加させ、質が良化しました。
デビュー以降のスライダーのPitching+の推移は以下の通りです。
FangraphsのグレーディングはSweeperとSliderを区別しないようですが、いずれ質は格段に良いです。
そんなライアンは2023年以降もジャイロスライダーを完全に削ることはしていません。
ほぼ初球や浅いカウント、ボール先行のカウントにおいて鋭く曲げウィークコンタクトを狙うような目的をもって使い分けているように見えます。↓
しかしながら被xwOBAは453、被xSLGは.684と散々な結果でありGB%でさえスイーパーの方が高いという点は、完全移行の理由になり得るかもしれません。
進化の代償
Jacob Degromがフォーシームの高みを目指してスペランカーの代名詞となったように、大いなる進化は代償を伴います。
8月7日の投球中に肩の痛みにより降板したライアンは、検査の結果Grade 2の大円筋損傷を認めたと発表されました。
ツインズ球団社長Derek Falveyによる怪我に関する最新情報は以下の通りです。
回復は期待通りで、スプリングトレーニングで投げられるだろうという旨が上記記事に書かれています。
怪我に関しては自分の知識では何も言えませんが、肩の損傷がキャリアに大きな打撃を与えたいくつかの例を我々はよく知っています。
とにかく健康に投げられる事を祈ります。
最後に
ライアンは間違いなく僕にとってのMLB沼への扉を開いてくれた選手だと思います。
彼がきっかけで投球に興味を持ったのは明らかですし、平凡なフォーシームの価値をコマンドで高める投手が多く在籍するツインズという球団を好きになりました。
余談ですが、ピッチングに少しでも興味が湧いた日本人はメジャトピさんの動画を絶対見るべきですね。
ありがとございました。