講義室の前で立ち尽くす
春、新学期、暑すぎて春じゃない、学費が払えない、bayc。
学校が始まった。
昨年度までは感染症対策で入口が制限されて、かつ検温をしないと入校できない寒いルールがあったけど、今学期からは全部なくなった!
みんなウジャウジャ登校してきて、コロナ前よりも活気がすごい。6年も通っていると、その中に入っていくというより、それを見守る親の心が芽生える。みんな今までご苦労さん。楽しそうでええね、頑張りや。
大学院の方もほぼ対面授業に変わって、毎日登校になった。
オンライン授業は周りの雰囲気とか服装とか気にしなくていいし、講義を聞きながら調べ物したりできたから好きだったけど、まあ仕方ない。
授業時間じゃなくてもレポート出せば大丈夫っしょ、みたいな怠慢でいくつも授業を落としてきたし、こういう自堕落な人間は対面の方が合っているんだと思う。
そんで今私は、講義室の前に立ち尽くしている。
理由は怖くて入れないから。
さっきちょっとだけドアを開けたら、
先生と生徒たちが仲良さげに話しているのが見えた。すぐ閉めた。
デザインの授業。
私は映像専攻だから、他学科の授業。
初めて入るデザイン棟の地下の小さい部屋。
地下の踊り場に大きな彫刻を見つけた時点で、アブナイ匂いがしていた。恵比寿の都会風吹かせた人間とすれ違った時に嗅ぐキメ〜匂い。
彫刻の前で私の服装を確認した。
でっかい岸大介の下に
七十八時間
AKIJIKAN
ってプリントされているTシャツ。
すんごいオキニの。
映画学科の棟には、私みたいな陰気なガキしかいないからこのTシャツでも浮かない。逆に褒めてもらえる。けど今ここはデザイン棟。
迷い込んだ子羊のようにプルプル震えながら教室に向かう。すれ違う人みんな、Tシャツを着ていない。オシャレな布切れ纏っている。は?なんで?
で、ドアを開けて心が折れて閉めて立ち尽くして、今。
先生も生徒もおしゃれな布切れきてたなあ。
そんで小さい教室に収まってて、もう席も空いてなかったなあ。
受けたかった、デザイン史。
おしまい。