佐野元春 名盤ライブ「Sweet 16」2022.11.23 KT Zepp Yokohama(ネタバレあり)
2013年から始まった名盤ライブと言うプロジェクト。海外でも著名なミュージシャンが自身の代表的な作品を曲順そのままに再現するライブが多く開催されましたが、日本でもそのような流れが続きました。しかし名盤ライブの特徴としては、アルバム再現ライブだけでなく、その作品を関係者らが紐解くドキュメンタリーのDVDとブックレットまで含めた企画であると言うものでして、それによってチケット代+αになってしまいかなりの高額なコンサートに。熱心なファンの方だと全公演参加される方もいらっしゃいますし、個人的にはドキュメンタリーDVD+ブックレットはチケット代と別に物販にして欲しいとは思いますが、名盤ライブのコンセプトはあくまでライブ+ドキュメンタリーグッズまで含めてのコンセプトであると以前とある関係者からお聞きした事がありますので、それさえも受け入れた方に向けたマルチメディアであると思うようにしています。今回は横浜と大阪のみの開催ですがかなりのお客様が集う事に。名盤ライブの1回目は佐野元春さんが「Someday」全曲再現ライブを行いましたが、その衝撃は今年映像作品としてリリースされた事もあり、それにより今回の「Sweet 16」再現ライブにも期待が高まったとも思えます。
そう言えば今回の名盤ライブは11月27日の大阪公演が収録され、後日配信されるとの事。配信の際もドキュメンタリーグッズ付きでの販売(来場者には会場で配信のみの販売も受付)となります。微かな期待としてレコーディングにも参加され尚且つ自身のジャパンツアーも間近な矢野顕子さんが共演は無くとも、大阪公演に来場されたら嬉しいなと思います。
入場時の電子チケットの手続き、来場特典のドキュメンタリーグッズの配布、グッズ売り場やドリンク交換所など諸々あり、客入れの段取りが大幅に遅れていました。名盤ライブ「Someday」の時は一階スタンディングで整理番号での入場でしたがあの時も段取り悪かったので、要改善事項だと思います。ホール内に入るとステージ上では巨大なスクリーンと両脇に赤い幕が設置。スクリーンにはオレンジ色のデザインの静止画が映し出されていて、アルバム「Sweet 16」のイメージカラーを演出していたと思います。
ホール内では洋楽のナンバーが客入れBGMとして流れてました。Shazamのアプリで調べられた範囲ですと、
Beautiful Girl / INXS
Shake Your Hand / WAS(NOT WAS)
Step It Up / Stereo MC'S
Tennessee / ARRESTED DEVEPLOPMENT
Mrs. Robinson / Lemonheads
The Sidewinder Sleeps Tonite / R.E.M.
でした。R.E.M.の曲の時に場内は暗転。約16分押しでスタートしました。
スクリーンも真っ暗になり、架空のストーリーとして、ある方の自宅に宅配便でリリース直後の佐野元春「Sweet 16」が届き、宅配業者とのやり取りの会話に。生ものですのでお早めにお聴きください、と言う当時の初回限定盤の特製BOXに記載されていた文言を業者が言って帰ってしまった後に動画が映し出され、梱包された封筒を開封して初回限定盤の「Sweet 16」を取り出す購入者。アルバムは当時のチャートで2位まで上昇、30万枚以上のセールスを上げたと言う説明から、佐野元春さんの1992年頃に撮影された写真の数々がスクリーンに登場。佐野元春さん自身のコメントも映し出されてました。そして購入者はCDコンポにCDを挿入し、再生ボタンを押す所までで映像は終了。その映像が流れてる間にスタンバイ完了していたバンドのメンバー。アルバムの冒頭で印象的な雷のSEが流れ出した後にようやく佐野元春さんもステージに登場。
1.ミスター・アウトサイド
から始まりました。スクリーンは閉じられ、アルバム「Sweet 16」ジャケットのタペストリーがステージ上から吊るされて登場。以前は名盤ライブのマークがステージ上から吊るされてましたが、佐野元春さんは2022年春〜初夏に行われた全国ツアーでも印象的な楽曲が収められたアルバムジャケットのタペストリーを吊るす手法をされていましたので、味をしめたのかと思います😅。佐野元春さんはスタンドマイクの前で楽器を持たずにパフォーマンス。独特なジェスチャーも交え歌う仕草が格好良いです。一部ヴォーカルエフェクトをかけてたみたいでしたが、今の声で歌う力強いシャウトも健在。曲や演奏の世界観を考えても良かったなと思います。
2.Sweet 16
長田進さんが奏でる印象的なギターのイントロに合わせて、佐野元春さんもキャンディレッドのストラトのギターを装着。イントロ時にピックを落とすアクシデントもありましたが、歌には間に合い問題無し。この曲の印象的なリズムパターンを、当時のバンド、ザ・ハートランドの古田たかしさんが刻むのを目の前で拝見し、CDで聴いたあの空気感に一瞬で引き込んでくれました。このアルバムの再現にあたり長田さんと古田さんの参加は必要不可欠だったと思います。
ここで佐野元春さんのMC。集まってくれた事への感謝を述べつつ、30年前に出したアルバムの再現ライブが出来て嬉しいとの事。当時聴いてくれた方は今は40代から50代。ステージ上から客席の皆さんを見ると、人生の荒波を乗り越えてきたみたいで。今夜は皆さん、あの時代に戻ったように楽しんで下さい。みたいな流れから、次曲をサラッと解説。
3.レインボー・イン・マイ・ソウル
ここでステージにはブラスセクションの山本拓夫さんと西村浩二さんが登場。佐野元春さんは当時のツアーで使用していたセミアコのギターを弾きながら歌いました。女性コーラス隊だけでなく、男性メンバーの数名もコーラスに加わり楽曲に厚みを加えていました。ラストはお馴染み♪レインボー・イン・ユア・ソウル♪とオーディエンスに向けて佐野元春さんが熱唱して締めました。
演奏後には今回のライブを一緒に演奏してくれているSweet 16 グランド・ロッケストラと名付けられたバンドの紹介。しかし個別のメンバー紹介はまた後でとの事😅。アルバムの中で1番ファンキーな曲をやりますとタイトルコールして
4.ポップチルドレン(最新マシンを手にした陽気な子供達)
アルバムではイントロがフェードインしながら始まりますがライブではそれは出来ないのでドラムのカウントからイントロの演奏が開始。オリジナルに忠実な演奏なので違和感なく楽しめました。佐野元春さんはギターを抱えずスタンドマイクでパフォーマンス。「ミスター・アウトサイド」同様にジェスチャーが豊富。特にサビの♪天国が〜♪のあたりから両手でピースサイン✌️を作り、指を何度も折り曲げる仕草が印象的でした。間奏のSAXソロから更にヒートアップ。古田たかしさんのドラムも大暴れでした。
5.廃墟の街
ステージの足元から上に向けて緑のライトが照らされ、雷のSEが再び。スクリーンには楽曲のイメージを表したと思われるデザインらしきものが映し出されてました。古田たかしさんのドラムと、スパムさんのパーカッションのリズムだけに合わせて佐野元春さんが歌う序盤から、藤田顕さんのエレアコ、長田さんのエレキが加わって楽曲を仕上げていきました。古田さんはこの曲のみマレットらしきスティックの先端に白いモワモワしたものを付けたやつを使用しでして、ティンパニのような響きで表現しておりました。
6.誰かが君のドアを叩いている
先程の曲から間髪入れずに演奏。ここでも佐野元春さんはセミアコを使用。女性コーラス隊の存在感が強かったです。イントロやアウトロでのマンドリンみたいな音色はキーボードの渡辺シュンスケさんが再現してくれてたと思います。オリジナルではフェードアウトですが、今回ならではのエンディングでした。
ここで佐野元春さんのMC。感謝を述べつつ、皆さんの中には気付いている人もいるかもしれません。今夜のライブの為に、当時のツアーで使用していたタカミネと言うセミアコを用意しました。セミアコは30年前には画期的な楽器ですぐに手に入れた。実は裏話があり、このギターはあるバラエティ番組に出演した際に景品としてプレゼントしたもので、今回のライブの為に一時的に戻してくれました。ココリコの田中さん、ありがとう。久々に(ギターに)対面できて嬉しかったです。と仰っていました。
2009年の「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで」内の企画「クイズ佐野元春の500のコト」と言う伝説的な番組ですね😅。リンクは貼りませんけど動画サイトにアップしてる方もおりますので、これは未見の方には是非とも見て頂きたい内容ですし、大事に保管して下さっていた田中さんにこちらからもありがとうと伝えたいです☺️。続いてはエピフォンと言うメーカーのセミアコで
7.君のせいじゃない
アルバムの中ではブルージーな曲で、アルバム「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」収録の「俺は最低」に通ずる世界観。むしろアンサーソングと言ってしまっても良いような気がします。
間奏のギターソロは藤田さん。しっかりと決めてくれました。
8.ボヘミアン・グレイブヤード
バグパイプのようなイントロが鳴っている間に楽器チェンジなども行いスタンバイOK。アルバム「Sweet 16」のジャケットのモチーフにもなったチェリーパイが歌詞に出てくる曲で、佐野元春さんもキャンディレッドのストラトにチェンジ。この曲でもピックを落とすアクシデントあり。歌う時ではなかったので良かったですが、初演ならではの光景でした。ブラスセクションによる間奏のソロの際は、間近にいたDr.Kyonさんが山本さん、西村さんを指差してアピールし、ステージ上も楽しんでいるのが伝わりました。
「ボヘミアン・グレイブヤード」のイントロではバグパイプが用いられてますが、このSweet 16というアルバムは色々な音楽にチャレンジしました。次の曲は北アフリカのミュージシャンと一緒にやりましたと言う説明から
9.ハッピーエンド
が披露。この曲はスパムさんがパーカッションで終始リズムパターンをリード。スパムさん大活躍でした。目立ちはしないけど、Dr.Kyonさんと渡辺シュンスケさんのツインキーボードでどの楽曲もアルバムの世界観を損なわない音色を作り上げていたんだなとこの曲の時に実感しました。♪Hold Me,Love Me♪のコーラス時にはオーディエンス含めてのクラッピングもあり、とても盛り上がりました。
10.ミスター・アウトサイド(リプリーズ)
一旦アルバムの締めに入るかのように始まりましたアルバム一曲目のリプリーズ。佐野元春さんは歌う時以外はタンバリンを披露。一曲目と違い佐野元春さんのヴォーカルエフェクトが殆ど無い生々しいシャウトが聴けました。コーラス隊の佐々木久美、TIGERのお二人はこの曲でくねくねダンスをしてました💃。
11.エイジアン・フラワーズ
レコーディング自体は1990年のもので、アルバムのボーナストラック的な扱いであるとは思いますが、再現ライブで聴くとアンコールの一曲目のような気持ちにもなります。ブラスセクションの荘厳なイントロや、赤い照明が印象的でした。終盤の佐野元春さんのシャウトが圧巻で、個人的にはこの日のハイライトはこの瞬間でした。アウトロでは何度も転調してエンディングを引き伸ばしていたので、佐野元春さんもバンドもこの曲を終わらせたくない、余韻にもっと浸りたいみたいな気持ちもあったのかもしれません。
最初にも言いましたが、リリースから30周年。このようなライブが実現できて本当に嬉しい。実現してくれたソニー・ミュージックの皆さん、この会場に来てくれた皆さん、それから集まってくれたミュージシャンの皆さんと言う事でメンバー紹介。先ずはザ・ハートランドから古田たかしさん、長田進さん。ザ・ホーボー・キング・バンドから井上富雄さん、Dr.Kyonさん、ザ・コヨーテ・バンドから藤田顕さん、渡辺シュンスケさん、ブラスセクションから山本拓夫さん、西村浩二さん、バッキングヴォーカルから佐々木久美さん、TIGERさんと言う順番で紹介されました。
12.また明日...
佐野元春さんと長田進さんは椅子に座って演奏。とてもメロウに優しく歌う佐野元春さんも素敵です。またコーラス隊のお二人の存在感が素晴らしく、矢野顕子さんが居なくても問題無いくらいでした。佐々木久美さんの格好は30年前に佐野元春さんのツアーに参加されたメロディ・セクストンさんみたいで、それも良かったと思います。演奏後には今回のバンドの皆様がステージ前方に集合。そのままステージ下手に引っ込んでいきました。
アンコール待ちの間に舞台は暗転し、スタッフの方が準備をしている間に、ステージ上のアルバムジャケットのタペストリーが変化。アザージャケットであるチェリーパイが最後の1ピースしか残っていないやつに切り替わっていました。準備が整いステージが明るくなりバンドの皆様が再登場。佐野元春さんが「Happy Birthday! Sweet 16❗️。みんなとお祝いしたい曲です」と仰って
13.約束の橋
が始まりました。近年の1番の後にギターソロがあるコヨーテバージョンではなく、あの当時ドラマの主題歌としてシングルカットされたバージョンに近い演奏でした。この曲はやるだろうと予想していた方は多いと思いますが、想像以上に素晴らしく、ラストのクラッピングまで含めて感動的でした。
このアルバムは当初1年前(1991年)にリリースする予定でしたが、父が亡くなり制作が遅れてしまった。亡くなった父に捧げた作品だが、今やその父の年齢を超えてしまった。これからもどこまで行けるか分かりませんが、皆さんの為に良い音楽を届けていきます。と言う佐野元春さんのMCにもグッときました。ラストの曲は
14.ヤング・フォーエバー
この曲は1992年当時と全く関係ない曲ですが、ある意味今後の音楽に向き合う決意表明みたいな意味合いで選曲されたのかと。佐野元春さんだけでなくDr.Kyonさんもエレキギターでしたので、長田さんと藤田さん含めて4本のギターロック。素晴らしかったです。
演奏後には再びメンバー全員がステージ前方に集合。佐野元春さんは雨の中集まってくれたオーディエンスに感謝を述べつつ、Sweet 16、無事に誕生日を迎えられた事を喜んでいました。客出しBGMにチャック・ベリーの「Sweet Little Sixteen」が流れる中、規制退場に従い会場を後にしました。
以前どこかのインタビューで楽曲の主人公の年齢は様々で、歌えばその年齢になってしまうから、佐野元春自身の実年齢は関係ないと仰っていたと思います。それゆえ、佐野元春さんがマジックナンバーと呼ぶ16歳の頃をテーマにした楽曲だったりを再現するライブだからステージ上の佐野元春さんはじめとするメンバーの皆様のフレッシュさ溢れる姿に感激でした。さらに、近年の楽曲よりも高めのキーで作曲されたものを佐野元春さんが当時のキーのままで歌われる事にも意味があるなと。今回の名盤ライブが過去だけでなく、未来に向けての重要なイベントであったと思える日が来ると信じています。残念ながら観られなかった方は、配信ライブを是非ご覧頂きたいです。
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