「５」魔法のエリクサー

「ロハン！」
彼が黄金の廊下を歩いていると、後ろから声がかかった。振り返ると、彼女が駆け寄ってきた。
「姫様！」
彼女が近づくと、息を整えながら抗議した。
「何てことなの！ここでそんな呼び方しないで！バカなの？」
ロハンは皮肉な笑みを浮かべて答えた。
「バカじゃないよ、僕はロハンだ。」
彼女は拳で彼を軽く叩き、そして微笑んだ。ロハンは尋ねた。
「また彼のことを聞きに来たわけじゃないよね？」
彼女は恥ずかしそうに後退し、ロハンは驚きと苛立ちの表情で彼女を見た。彼女は言った。
「実は、今回は兄として話したくて来たの。」
「何のことだ？」
「あなたが黄金騎士団の会議を避けているという噂が広まっているの。だから、注意しなければならないと思って。」
ロハンは優しく微笑み、彼女の頭を軽く撫でながら言った。
「心配しなくていいよ、必要なら必ず出席するから。」
「でも、最近の出来事について知ってるでしょう？」
ロハンは不満そうな表情を見せた。彼女は励ますように言った。
「父はあなたに多くを期待している。それは、あなたへの信頼の証なんだから。」
彼は彼女の輝くルビー色の瞳を見つめた。皆が語る彼女の魅力的な目、その穏やかな輝きを前に、ロハンは微笑みを浮かべたが、彼女はそれを見逃さなかった。彼女の心配と疑念は彼の表情に影響を与え、真剣で刺すような視線に変わった。彼は諦めたようにため息をつき、優しく言った。
「僕も兄として行動してもいいかな？」
彼女は不思議そうな顔をした。ロハンは続けた。
「少し頭の荷を下ろしてごらん。早く老けちゃうよ。」
彼女の目が驚きで大きく開き、ロハンは彼女の頭を軽く撫で、立ち去った。彼女はその場に立ち尽くし、ぼんやりと彼の背中を見送った。
＿
侍女は部屋に入り、手に持っていた服を床に投げ捨て、恐怖で叫んだ。
「お嬢様！！」

彼女はテーブルの上に倒れている酔っ払った主人のもとに駆け寄った。顔色は蒼白で、頬は赤く染まり、目の前には完全に空になった二本の瓶があった。
「お嬢様！」
侍女は不満げに呟いた。
「定められた用量を守ってください！どうして私たちの言うことを聞いてくれないのですか？」

しかし、彼女は酔っ払いのようにふらつき、意味不明な言葉を呟きながら立ち上がろうとしたが、足が彼女を支えきれなかった。侍女はすばやく彼女を支えた。
「お嬢様！」
「うう……」
侍女は彼女をベッドに連れて行き、水を注ごうとしたが、彼女は半開きの目でカップを見つめ、それを払いのけた。
「お嬢様！」
侍女は懇願した。
「用量を超えるとどうなるか、わかっているでしょう。自殺するつもりですか？」
「黙りなさい！」
彼女は寝ぼけた声で言った。
「息子を呼んで。」
「お嬢様！」
侍女は再び懇願した。
「この状態でルーカス殿下に会いたいのですか？」
「構わないわ！」
彼女はうとうとしながら言った。
「息子を呼んで。」

侍女は苛立ちと哀れみのため息をついた。幸運なことに、医者がもう一人の侍女を連れて駆けつけた。
侍女は安堵の表情を浮かべて叫んだ。
「ララ、先生！」

ララは答えた。
「ここで騒ぎが聞こえたから、またお嬢様がやらかしたと思ったの。」
医者はため息をつきながら道具を広げた。
「幸いにも、これはハーブ薬です。でなければ、ひどい状態になっていたでしょう。」
「先生！」
若い侍女が尋ねた。
「今、どうすればいいですか？」

医者は脈を診た後、二人を見て言った。
「まずは陛下に知らせなければなりません。しばらく薬を止めることを提案します。」
「でも、それでは元の状態に戻ってしまいます！」
ララがコメントした。医者は寝ぼけたまま笑っているお嬢様を見て、厳かに言った。
「今の状態が良いと思いますか？」

彼女は腕を上げ、寝ぼけた声で言った。
「息子を連れてきて！」

若い侍女はララに話しかけた。
「かわいそうに……彼がまだ赤ん坊だと思っているのです。」
ララは驚いて言った。
「本当なの？」
「ええ、最後の決闘で負けて、最後の称号を剥奪された後、毎晩彼の名前を呼ぶようになったのです。」

医者は難しい状況に直面していた。お嬢様は彼のシャツを掴んで、寝ぼけた声で叫んだ。
「息子を連れてきてと言ったのに！」

若い侍女は彼女を落ち着かせようとした。
「ご安心ください、殿下。すぐにお連れします。」
「本当？」
彼女の体はすぐにベッドに倒れ、深い眠りに落ちた。

ララはコメントした。
「今から最悪の事態に備えなければなりません。陛下はこれを黙って見過ごすことはないでしょう。」

三人は強い不安を抱えていた。

＿

「さあ、全員集合！」

温室の責任者が呼びかけた。
「重要な話があります。」

すべての女性が彼女の周りに集まったとき、彼女は言った。
「王宮がフィーナ姫の薬の管理を監督するハーブ医師を必要としています。」

大きなざわめきと各方向からの囁き声が起こり、彼女はみんなを静めるために手を叩いた。
「静かに！」

沈黙が支配した後、彼女は続けた。
「みんながこの件について疑問に思っていることはわかっていますが、彼らは聡明な女性を必要としています。姫の薬を定められた時間と用量で与えることができる人です。今まで誰もそれをうまく管理できておらず、彼女は制御不能です。」

「かわいそうに！」
「誰がそんなことをするの？」
「王宮だなんて！これは狂気だ！」
「そんなことをするのは命を危険にさらすことだ！」
「フィーナ姫だって？ミスをしたら命がないってことだろ？」

責任者は彼女たちの反応に苛立ち、冷静さを保とうとしたが、ささやき声は別の方向に向かい始めた。
「ノラスを送ればいいのでは？」
「そうだ、確かに！」
「彼女はミスをして首を切られるだろう。」（笑）

「やめなさい！」

責任者が叫んだ。

みんなが注意を向けると、彼女は言った。
「ノラスを送ることはできません。彼女は騎士たちの薬の責任者であり、誰も彼女の代わりを務めることはできません。」

みんなは不満げな表情を見せた。責任者はマルワ夫人に目を向けた。
「マルワ夫人、どう思いますか？」

彼女は戸惑いながら答えた。
「ああ、確かにその通りです。」

責任者は軽蔑の目で彼女を見た後、厳かに言った。
「コンテストを開催します。負けた者が王宮に行くことになります。」

みんなが驚きの声を上げた。
「ええ！」

彼女は狡猾な笑みを浮かべ、皮肉っぽく言った。
「勝った者を送ると言ったら、全員がわざと負けるでしょうからね！」

みんなは驚きのあまり目を見開いた。彼女は続けた。
「これで、あなたたちは自分の地位を守るために倍の努力をする必要があります。」

抗議の声が上がり始めたとき、彼女は再び手を叩き、叫んだ。
「静かに！」

再び沈黙が訪れ、彼女は言った。
「異議は認めません。この件は決定事項です。明日の朝、候補者の名前を発表します。」

彼女は再び手を叩いた。
「さあ、全員作業に戻りなさい。」

みんなは不満げに散り、温室には不満の空気が漂っていた。
＿

「ローハンのオフィスでは、彼が仕事をしている。助手のマロンも手伝っている最中、ローハンが突然立ち上がり、尋ねた。
「ところで、マロン！」

本を整理しているマロンが顔を上げ、驚いた表情で彼を見た。
「蜂の巣にいる口の利けない女の子を知っているか？」

マロンは驚き、尋ね返した。
「温室のことですね、ご主人様。」

「そうだ。」

二人は仕事を続けながら、マロンが不思議そうに言った。
「そんな人物について質問するなんて奇妙ですね。その少女は何か関係があるのですか？」

「いや、ただ存在が気になっただけだ。」

マロンは考え込み、説明を続けた。
「おそらく彼女はラファティン家の一員でしょう。ラファティン家は暗い歴史を持っていますが、王家が再興した際に大いに貢献しました。彼らは代々ハーブ医学を学んでおり、特に戦時中に飲む薬の秘密を守っています。」

マロンは天井を見上げ、深い声で続けた。
「彼らは長年王家に仕え、非常に強い影響力を持っています。」

ローハンは書類に目を通しながら心ここにあらずの様子だった。マロンは彼を不思議そうに見つめた。ローハンの声が謎めいて響いた。
「あの薬のことか、飲むと無敵の力を感じると言われているやつだな。」

「そうです。そのおかげで騎士は通常の何倍もの力を発揮し、無敵になります。」

「なるほど。」

ローハンはマロンを見つめ、尋ねた。
「それで、彼らの暗い歴史とは？なぜ王家はそんな危険な家族を側に置くのか？」

マロンは頭をかきながら、躊躇して答えた。
「まあ、違法な行為をしているわけではありません。」

彼は真剣な表情でローハンを見つめ、静かに続けた。
「ただし、内部の規則は非常に厳しいです。誰もそれから外れることは許されません。」

「ハーブ医学のことか。」

マロンの声が低く、恐ろしい響きを帯びた。
「彼らは子供たちにその秘密の薬のレシピを教える前に、喉を焼く毒を飲ませると聞いたことがあります。それが秘密を保つための方法です。」

ローハンの目が恐怖で見開かれ、体が硬直した。彼の頭皮が震え、冷たい汗が流れた。

＿
「

回想シーン

その夜、月は爆発するかのように輝いていた。空には星一つなく、黒い空は全くの虚無だった。暗い雲が辺りを覆い、その中で月光だけが古びた部屋にかすかな光を差し込んでいた。小さな少女が横たわり、その隣には優しい若い女性がいた。彼女は手に奇妙な緑色の液体が入ったグラスを持っていた。その液体からは泡が立ち上がり、膨らんでは弾けていた。少女の目にその泡が映り込み、涙がこぼれそうになっていた。

女性はグラスを少女に差し出し、優しくささやいた。
「一息に飲み干してね、小さな子。」

少女は唾を飲み込み、やがてその液体を喉に流し込んだ。途端に喉に焼けるような痛みが走り、彼女の目は充血し、涙が溢れ出した。血管が浮き出し、首が緊張で硬直していく。青い静脈が浮き出る中、彼女の喉から裂けるような音が響き、続いて絶叫が闇夜を切り裂いた。彼女は力尽きたようにベッドに倒れ込み、顔は蒼白で、汗が彼女を窒息させるかのように流れた。

女性は少女の額にそっとキスをし、涙で頬を濡らしながら囁いた。
「これは君の未来のためなの、愛しい子よ。」

彼女は少女の頭を優しく撫で、再びキスをし、ささやいた。
「ごめんね、愛しい子よ。」

」

つつき