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My Sound DNA - Scott Bradley -

子供の頃、同級生がガンダムに夢中になっていたが、全く興味がなかった。松本零士のマンガを読んでいたので、宇宙空間で人型ロボットが戦うのはナンセンスだと刷り込まれていたんだと思う。「ガンダムはガキが見るもの」と思っていた。自分もガキだったくせに。

夢中になっていたのは「トムとジェリー」。お酒飲んだり、煙草吸ったり、暴力があったりと、今の基準だとR指定されそうな内容だけど、だからこその大人な笑いに惹かれた。
そして、そこで流れる音楽は、無意識のうちにどんどん自分に流れ込んだ。
クラシック、スイングジャズ、メキシコやブラジルの音楽からハワイアンに至るまで、幅広く音楽を楽しむ下地が作られたと思う。

音楽を担当したスコット・ブラッドリーは、音大で正規の音楽教育を受けておらず、作編曲については独学らしい。
独学であのレベルまで到達しているのも凄いけれど、頭でっかちな雰囲気がなく、自分の表現として昇華させているのか素晴らしいと思う。

スコット・ブラッドリーの音楽を語る時に、「トムとジェリー」の中で使用された12音技法を使ったフレーズがピックアップされることがあるけど、そのフレーズでもしっかり個性を出してきている。

12音技法と言えばバルトークの弦楽四重奏と思っていたけど、今回ウィキペディアで調べてみると、「シェーンベルクが十二音技法を確立する以前の作品であるが、冒頭3小節の間に12の音がすべて使われていることも、よく知られている。」とのこと。
知らなかった。

パルトークの弦楽四重奏のイメージから、12音技法を使うと有線放送の「怖い音楽」のチャンネルで流れてるような音楽になるという先入観があるけど、スコット・ブラッドリーはちょっと不思議で浮遊感のあるコミカルなフレーズに仕上げている。
収録時には演奏者が笑いをこらえながら演奏していたらしい。

スコット・ブラッドリーからは、過去の音楽へのリスペクトと反抗、幅広い音楽性、ユーモアのセンスなど学べるものが沢山ある。
音楽について少しばかり経験を積んだ今だからこそ、改めてじっくり聴いてみたい。

4:22, 4:42辺りのような、ジェリーが犬の被り物で歩くシーンのフレーズが12音技法を使ったフレーズ。
アニメーションとだけではなく、前後の音楽とも違和感なく調和しているのは流石。

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