美城常務を振り返る
お疲れ様です。
バウアーです。
2024年8月20日。
声優・田中敦子さん死去のニュースが
世界を駆け巡りました。
アニメファンならこの方の名前を
知らない方はいないでしょう。
「攻殻機動隊」のアニメで
草薙素子を担当し、
その名を轟かせました。
近年でも重要なキャラクターの声を担当し、
衰えぬ存在感を示してきただけに、
その死を悲しむ方は多くいると思います。
自分もその一人です。
この記事ではそんな田中さんが担当し、
シンデレラガールズの中で存在感を示した、
美城常務を振り返ることで、
自分なりの田中さんへの追悼をしたいと
思って記事を書きました。
①美城常務とは
常務の出自はシンデレラガールズのアニメ、
2ndシーズンまで遡ります。
米国から帰ってきた346プロダクション会長の娘で、
帰国後直ぐにアイドル部門統括重役を務めることに
なりました。
登場直後からキャリアウーマンの雰囲気たっぷりに、
辣腕を振るうことでアイドル部門に
大きな刺激を与えることとなりました。
それは部門内で進行中のプロジェクトを白紙にしたり、
職権乱用とも取られないようなほどの
強引なプロジェクト進行があり、
効率化を推し進める様子が描かれました。
しかしながらこれらの強権発動の行為は、
アイドルの個性を伸ばすために行った
効率的な采配が目的としてあります。
それまでのプロジェクト進行は
遅いと感じていた常務は、
徹底的な効率化を図ることで
個性の伸びるスピードを高めようと
していました。
またシンデレラプロジェクト担当の武内Pと
度々ぶつかることがありましたが、
彼の個性を伸ばす方針そのものは評価していました。
常務は常務のやり方で、
アイドル個人個人の才能を伸ばすための
最短ルートを進もうとした。
それがアニメ内では裏目に出るシーンが
描かれましたが、
意図としてはアイドル自身の活躍を願っての
行為です。
②「才能を伸ばす」と「アイドル自身の思い」の乖離
裏目に出るシーンとしては、
アイドル自身が歩みたい方針と、
常務のプロデュース方針の乖離が描かれました。
その中でも、
高垣楓と常務の会話シーンは明確でした。
常務は楓の実力を高く評価して、
音楽番組での出演を多めにする方針を示し、
一方でミニライブ開催は縮小。
これは楓のやりたいこととは逆で、
最終的に楓から常務に対して
拒絶の姿勢を見せることとなりました。
常務の路線はアイドル自身が持ち合わせている、
「才能」の考え方がプロデュース方針に
現れていると感じました。
それは哲学者のジョン・ロールズのように、
個人の才能は「集団的資産」として、
それを持つ人だけがひとり占めしてはいけない。
そんな姿勢が見られます。
仮に才能を会社の「集団的資産」とした時、
その才能を伸ばすことは会社にとっての
大きなプラスとなります。
才能を持つ本人の才能をより伸ばすことに加え、
金銭的、
ブランド的なリターンが見込めるでしょう。
プロジェクトの重役として、
楓を音楽番組に沢山出演させようとしたのは、
至極真っ当と言えるでしょう。
ですが楓はそれに対して拒絶反応を示しました。
本人が歩みたいのは音楽番組だけでなく、
ミニライブも含めてファンとの近さを
大事にしていました。
常務の方針で切り捨てようとした中に、
楓にとっての大事なものがありました。
「アイドルの個性を伸ばす。」
「会社の利益も出す。」
「両方」やらなくっちゃあいけないのが、
「重役」のつらいとこなのです。
③キャラクターとしての役割
何故美城常務は出てきたのか。
それはアニマスこと、
アニメ版「アイドルマスター」で登場し、
悪役としてシナリオを大きく盛り上げた
961プロの黒井社長の存在があるでしょう。
黒井社長は765プロの高木順二朗と
過去にプロデュース方針を巡って対立し、
袂を分かった過去があります。
結果的には961プロを起ち上げ、
業界トップクラスのプロダクションを育て上げたものの、
順二郎社長へのヘイトは止まらず、
アニメ内ではあらゆる手段を使って妨害しようと
しました。
この黒井社長がシナリオに良い刺激を与えたことが、
デレアニでも悪役が必要と思ったのは
自然な流れかもしません。
勧善懲悪の路線は盛り上げ方の王道ですし、
視聴者にもスッキリ感を出すことが出来るでしょう。
しかしながら美城常務は悪役に
なり切れなかったのではと思う時があります。
武内Pの方針を完全には否定しておらず、
既存のプロジェクトを白紙にするものの、
配置転換して人員配備の再整理をしています。
パワーハラスメント上等の
最悪上司ではないのです。
また効率的な才能を伸ばす行為そのものは、
否定できるものではありません。
鉄は熱いうちに打て。
才能を伸ばせられる時に徹底して伸ばし、
アイドルとしての才能を開花させるのは、
どのPでも願うことでしょう。
悪役ポジション、
シンデレラ的に言えば、
継母のポジションでしょうか。
そんな立場での活躍が想定されていたのでしょうが、
振り切れていたかと言われたら、
もっと振り切りが必要だったかもしれません。
ただ単純な悪役ではなく、
あくまで方針の方向性の違いでのぶつかり合いで
アイドルを愛する心そのものは一緒。
これが悪役として伸びきれなかったのではと
思うことがあります。
④愛すべき常務
ストーリー上の役割としては
振り切れなかった悪役かもしれない常務。
しかしアイドルを誰よりも大切にし、
才能を伸ばそうとする姿勢は
武内Pの姿勢を一致しているが故に、
あのポエマーな会話シーンがあったのでしょう。
会社内での立場、
権力がある故にパワーを感じるのでしょうが、
行動の根幹は同じ。
根から伸びた芽や枝の伸びる先が、
他の人と違う。
ただそれだけなのではと思う時があります。
だから憎み切れないのです。
あの方を。
きっとあの人にはサイドキック、
相棒が必要なのかもしれません。
あの人が豪腕を振るったその後を、
ケアするような人間がいたら、
部下の人たちとの軋轢が少なくなると
思うのです。
自分はその立場に立候補します。
あの人の考え方自体は自分は好きですし、
もっと人間味のある触れ合いがあれば、
あの人の考えが346プロ内で
正確に伝わるのではと思うのです。
自分は常務の思いを伝える役割を
やりたいと思うのです。
おわりに
人はいつか死ぬもの。
ベテラン声優さんも、
いつかはお亡くなりになります。
人によっては病気を公表せず、
真実は親族しか持たないこともあるでしょう。
こっちはいつだって得られる情報は
限られているものです。
ならば自分が出来るのは何か。
自分にとって大事な作品の
重要なキャラクターを演じてくれた方への
尊敬の念を表現する方法を考え、
追悼するのが方法の一つなのではと
思うのです。
今回はバウアーはこのような形で
美城常務への思いを書き綴りました。
田中さんのお力によって、
常務は魅力的なキャラとして、
シンデレラガールズで立場を築き上げました。
もう新しい常務としてのボイスは
望めませんが、
キャラクターとしての生き続けます。
シンデレラガールズのPとしての自分の
永遠の上司である美城常務。
そして担当声優の田中敦子への
感謝の気持ちを込めて、
ここで筆を置きたいと思います。