ルポ 偽海外FX業者 国内に巣食う影
みなさんは「偽海外FX業者」をご存じだろうか。
「偽」というのがどういうことか説明する。
通常、海外FX業者というものは、日本国外の居住者が、日本国外でFX会社を運営している。
しかし、ここで紹介する「偽海外FX業者」というのは、日本国内の居住者が、日本国内にいながら、海外のFX会社を運営しているのだ。
こういうことは、実際に可能だ。どういうことかを詳しく書こう。
偽海外FX業者の運営の仕組み
運営の仕組みはこうなる。
日本国内の居住者(実質のオーナー)が、日本国外の居住者(ノミニー)に依頼し、会社を設立してもらう。
ノミニーは取締役に就任し、会社を維持する代わりに、売り上げから報酬をもらう。
その残りの売上を実質のオーナーがもらう。
こうすることで、日本居住者が、日本国内にいながら会社を設立、運営することが可能な訳だ。
本来、日本居住者が海外に会社を設立することは、かなり複雑な法的な手続きなどをクリアしないと、設立することはできない。
しかし、上記のようにすることで比較的簡単に海外の会社を運営することができる。
違法・合法などそこは詳しく話さない。
ただ、会社を設立しただけでは、FX業者として活動することはできない。
ここで出てくるのが一般には知られていないとあるサービスだ。
ホワイトラベル
ホワイトラベルとは、既に存在している海外FX業者、主にMT4やMT5を扱うFX会社からシステム一式を借りて、独自の名を付けてFX業者を運営することができるサービスだ。
ゼロからFX会社を設立するには、相当な資金と、人が必要になる。
しかし、このホワイトラベルという仕組みを使えば、実質数百万、数名の運営者からFX業者として活動することができるようになる。
ホワイトラベルを利用すれば、通貨ペアのスプレッドを自由に上乗せして手数料を得ることができる。
これが、主な収入源となる。
独自のFX業者に見えるものはあくまで子会社、その上にはレートを卸す親会社の存在がある。
これは、ユーザー側からは一切知ることができない。
このように日本国内の居住者は、素性を隠しながら、比較的簡単に「偽海外FX業者」を運営することが可能なのだ。
ユーザー集め
偽海外FX業者ができたものの、ユーザーが集まらなかったら意味がない。
ここで使うのが
入金ボーナス
日本国内のアフィリエイター
この2つだ。
入金ボーナスを用意することで、ユーザーの入金を促すキャンペーンをし、それを日本国内のアフィリエイターに拡散してもらう。
こうすることで、短期のうちに数億円を集めることが可能になる。
アフィリエイターたちもIB報酬を受け取ることができるため、ウェブページやSNSなどでどんどん拡散をする。
アフィリエイターへのIB報酬は、スプレッドから支払われることになる。
ユーザーが取引する毎に、スプレッドの一部を手数料として受け取ることができるのだ。
つまり、MT4で表示されているレートには、親会社の利益分のスプレッド、偽海外FX業者の利益分のスプレッド、アフィリエイターの利益分のスプレッドが上乗せされていることになる。
ホワイトラベルを利用することで、ユーザーにとっては業者分のマージンが余計にとられ、ユーザーたちは、不利な状態で取引をしているのだ。
さらに、アフィリエイター側には、IB報酬などを確認する管理画面がある。
ここでは、ユーザーの氏名、MT4の口座番号、メールアドレス、電話番号などが表示され、アフィリエイターへ個人情報が丸見えの状態になる。
悪用しようと思えば、アフィリエイターからユーザーに対して、商材を売りつけたりすることも可能だ。
金融ライセンスがしっかりしている業者であれば、MT4の口座番号のみが表示されるなど、個人情報が隠されている。
出金拒否
このような、偽海外FX業者は、出金拒否になることも非常に多い。
なぜ出金拒否が起きるのか、理由は2パターン考えられる
入金された元金などを持ち逃げするためにわざと出金拒否する
運営状況が著しく悪化し金策ができなくなり出金拒否する
前者は、ある程度は出金させて信頼を得ておいて、どこかのタイミングでいきなり飛ぶ。ポンジスキームなどで利用される手口だ。
後者は、例えばユーザーからの総入金が5億円あったとしよう。
その後ユーザーがどんどん勝ち始め、ユーザーの利益が5億円出たとする。
元金と合わせれば、ユーザーから見た金額は10億円ある。
ここで、一気に、元金+利益の出金申請が来たとする。
10億円のうち5億円はユーザーたちから集めた元金を返せばいいかもしれないが、残り5億円は会社の利益から出さなければいけない。
本来、業者側はこのようなことも起きるであろうと想定し、ユーザーの元金を別で保管したり、会社側の自己資金として数十億持っておけば、すぐに出金にも対処できる。
しかし、ノミニーやホワイトラベルを利用して数百万~数千万程度で設立された会社に、それらの支払い能力はない。
スプレッドから得られる手数料売上がユーザーの利益額を大きくした回っていれば、完全に運営が困難な状態だ。
FX業界での経験が浅い者が、安易に業者を設立することで、こうも簡単に出金拒否は起きてしまうのだ。
個人情報流出
わざと出金拒否するような業者、金策に苦しむ業者は、個人情報の売買に手度染めることも十分に考えられる。
世界的な金融ライセンスをもっていれば、一応は個人情報の管理や入出金の管理はかなり厳格に定められている。
しかし、ここまで何度も説明している個人レベルが頑張って設立したような偽海外FX業者に、まともなライセンスが取れるはずもない。
第三者の監査もまともに働いていない状態だ。
そんなところに、顔つきの免許証、住所、氏名、電話番号、メールアドレスなど全てを預けているのだ。
ましてや、3Dの顔認証スキャンなどは、銀行作成時の認証にも使われている確実にヤバイ情報だ。
入金ボーナスだけで取引すればリスクがないという人もいるが、たった数千円~数万円のボーナスを基に、自分の個人情報を全て渡しているのだ。
僕らがアクセスできないディープウェブ、ダークウェブというところでは、危ないクスリ、臓器、武器などが売られている。
そんなところに、個人情報が一旦流れてしまえば、どうなるかは容易に想像がつくはずだ。
詐欺にあわないために
僕たちにできることは、目先の利益にとらわれて安易に情報を渡す、お金を渡すということをしないことだ。
本来、自由な生活を手に入れるはずのFXであったはずが、目的が負けを取り返すことになっていて周りが見えていない人が多い。
詐欺を行う者はもちろん悪いに決まっているが、自己防衛力を高めなければ、いつまでも「養分」「情弱」と言われるがままだ。
今の僕たちに必要なのは、見抜く力であるに違いない。
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