【日本の】RPSが隠れてきた理由
ご飯を食べる時、お茶碗を持つのはマナーとして正しいか否か。
答えとしては正しくもあり間違いでもある。今回は、そういう差異が要点になってくる話だ。
改めましてこんばんわ、今日も土壇場でのたうち回る朝右衛門です。
先日のnoteへの閲覧、いいね、RTなど、想像以上に多くの方に反応頂きましてひたすらおののいておる次第です…感謝の極み。
今回は以前の記事に載せようと思って書いていたものの、全体量が長くなりすぎてしまうために削った部分を再編集してお届けしようと思います。
まぁ削った所で長いことには変わらないので、見て下さった方々の目の負担になってないことを願うばかりですが。
おのおのがたにブルーベリーサプリお届けしたいくらいには感謝しております。本当ありがとうございます。
さてでは今回のお題をざっくりと。
「隠れろ隠れろっつーけど本国(※)や日本以外の国はホモだろうとなんだろうと大公開時代じゃん!なんでうちらだけ慎まなきゃいけないの!鎖国反対!」
という言い分について話していこうと思います。どうぞお暇つぶしにでも。
【本国】の応援の仕方って?
以前の記事でも触れた通り、私はごりごりの腐女子であり、現在はナマモノジャンルの中でもK-POPを対象に活動している。
Korean-POP、要は韓国のアイドルを対象としているジャンルなので、当たり前だがそのグループ構成は韓国を母国としたメンバーが多数を占めるし、だからなのか、ここでは彼らの母国、ホームというような意味で韓国を指して「本国」という呼び方をすることが多い。
もう10年以上にはなると思うが、K-POPアイドルが日本で活躍するようになり、注目も浴び出して以降、当然「本国」仕様のファン文化も共に日本で知られるようになった。
ペンカフェと呼ばれるファンの交流・情報交換ページは公式だけでなくファンたちによっても多数作成され、中にはFAやFF、ファン自身が撮った写真をメインにして構成・発信しているカフェもある。有名なのは後者が多いだろうか。K-POPが好きで推しがいる、という人であれば、「●●ならここのペンカフェの写真が好き!」という事もあるかもしれない。それらの写真を使い、マスターと呼ばれるカフェの管理人たちがPB(Photo Book)の略称で知られる写真集も発行したりしている。
ただこの写真、当然と言っては何なのだが、公式や本人たちの許可なく撮られた写真を使用したものだ。
撮影の場所は空港やステージ、野外イベントのリハーサルなど多岐に及ぶ。もちろん撮影禁止の場所もたくさんあるし、コンサート中の撮影禁止などその最たるものだ。そういうところでは警備員さんや関係者と大砲ヌナ(撮影者の多くはカメラに大砲のような高性能のレンズをつけているところからそう呼ばれる)とのバトルも少なくない。有名なグループのコンサートの時など、押収された数多くのカメラの画像が出回ったこともある。
それでも彼女たちは怯まず、夜討ち朝駆け宜しく様々な状況での推しの写真を撮るために、時には複数体勢で東奔西走するわけだ。
そして彼女たちの撮った写真は前述したようなPB(写真集)、うちわ、スローガンと呼ばれる小さな応援用の横幕などになり、コンサート会場や通販によって販売されたり配布されたりし、発生した金銭は次の写真集やグッズ、或いは推したちへのサポートと呼ばれる食事の差し入れや、誕生日のソンムル(プレゼントのこと)のための費用になったりする。なお、サポートやソンムルについては別途応援費用の募集を募ることもある。
個人的な意見として、私はこれを悪習だの即刻やめるべきだの言いたい訳ではない。正直、空港や撮影現場でのマナーやルール、サセンと同列になりかねない行動への対応措置などは早急に見直され整備されるべきではと思うが、ファンダムが大きければ大きい程そのアイドルの人気の指標になるのもまた事実だし、実際、公式がアイドルたちの広報としての側面を彼女たちの活動に暗に期待しているのではなかろうか、と思うところもあるからだ。
ただ、日本でやれば出禁の可能性、或いはブラックリストに載ってファン活動に制限のかかるような行動であっても、本国では明確に禁止されていない、というところがネックになる。
そしてそれは、RPSの世界でも同様である。
有名税としてのRPSの在り方(in本国)
韓国ではもともと、二次元ジャンルは公式からの規制を受ける時代が長かった。だが、三次元に関してはまずそういうことがなく、ファン活動の一環として、前述した写真の撮影やグッズ制作などと共に黙認されてきた歴史がある。どこかしら「持てる者は与えねばならない」という意識の下、そういった認識が広まったようだ。
オンリーイベント(カップリング的な意味で)のアカウントも鍵なしでtwitterに存在するし、同人誌の紹介も同様になされているのを何度か見かけたこともある。いずれも、少し韓国語が分かるならすぐに見つけられるような状態で。
なお、韓国ではカップリングとしてではなくコンビ名として名前を並べて表記することもある。一般のファンが使うタグといわゆる腐女子向けのカプ名タグが違うだとか、その点もまた、混同してしまいがちな一因であるかもしれない。
ただ、ファンダムの中にはFAは描いてもPRSは容認しなかったり(ここではソロであろうとカップリングであろうと対象となるメンバーの性的な描写を含む意味でRPSという単語を使用)、その旨を明記して活動されている方もいる。とは言え、あからさまな18禁R指定の作品でないのなら、鍵をかけろと言う風潮はないようだ。
こんな風に、性的な作品に対するゾーニングは日本より厳しいとは言え、それ以外の扱いが日本でのRPS作品の扱いとはかなり違ってくる。
また、K-POPの二次創作を行っているのはもちろん日本や韓国のファンだけではない。タイやベトナム、中国の作品なども、英語タグを使えば早々に見付けることが出来る。
イラストだけでなく、特定のメンバーをBLとして扱ったMADなどもあるし、文章や妄想ツイートであっても、例えば推しカプ二人の写真とともに、商業BLとして発信された写真(顔が写っておらず、その二人がそういう姿勢や体位をとっているように錯覚させるもの)を載せてツイートしているようなものも少なくはない。
他の国のファンたちが、そもそも彼らのホームである本国自体がこれだけおおっぴらに楽しんでいるのに、なぜ日本のファンだけ慎まないといけないのか――そう思えば理不尽にも感じるし、窮屈さもあるだろう。
そしてそこが、K-POPジャンル特有のナマモノ事情として、鍵をかけるかけないの話に関わってくるのではないか、と私は考えている。
スキンシップの濃さ=恋愛とは限らない
また、K-POPアイドルの特徴として、スキンシップの濃さが挙げられる。
これは彼らに限った話ではなく、欧米圏のアーティストなどにも見られはするのだが、手を繋いだり腕を組んだり顔が近かったりと、そういう触れ合いがファンを騒がせるのは事実だ。
運営や公式もその点は承知しているのか、特にK-POPアイドルは敢えてそういう触れ合いを強調するように振る舞うことも多い。
ステージ上のパフォーマンスも含めればなおさらだろう。テレビ番組などでも、キスリレー(薄い紙を口で吸い付けて口だけで受け取っていくゲーム)やポッキーゲームと言ったコンテンツが盛り込まれることもあったりする。
また、そう言ったはっきりしたものでなくとも普段の距離が近いとか、何気ない瞬間にスキンシップの濃さが出ることもあり、そのさりげなさをいわゆる「ガチっぽさ」と捉えて熱狂するファンも出てくるわけだ。
まぁ、末期になればどんな些細な出来事でも「こいつら付き合ってる!」に紐づけて処理できてしまうようにもなるのだが、それはともかく。
何にせよ推しカプ二人の仲良しシーンを見られたとすれば興奮するのが腐女子の人情だし、妄想しても責められないとは思っている。
私とてれっきとした腐女子であるから、推しカプがお姫様抱っこをやらかしたり相合傘だったり靴が色違いだったりお揃いのブレスレットやピアスをしていたりするたびに顔を覆い天を仰ぎこの世界に感謝した。片方が片方の実家に遊びに行ったと知った日には、ゴリラの雄叫びなのか断末魔なのか分からないツイートで鍵垢のTLを一時埋め尽くしたりもした。こんなん興奮するし感動するし妄想もするわと嗚咽ながらに床を殴った。
だから興奮するとしても妄想が止められないとしてもそれは分かるし、同じような心の動きが誰の心に生じたとしても責められない。
ただ、「二人仲良し!ありがとう!」と叫ぶのと、「二人仲良し!付き合ってる!」と叫ぶのでは、鍵をかけないとなるとやはり違ってきてしまう。
前者は事実への感謝だが、後者は事実から生まれた個人的願望による妄想だからだ。内面の感情はさして違わないとしても、そこは明確な差が出てしまう。日本であれば特に。
ざっくり言うが、ステージ上やテレビ番組などでのスキンシップは彼らにとって仕事に当たるものだし、なぜそう振る舞うかと言えばファンが喜ぶからに他ならない。運営としてはそれでファンの落とす金が増えるなら万々歳ということもあるだろう。
そしてこれもK-POPアイドル達に限らないが、彼らや彼女たちが音楽性や歌やダンスだけで勝負すると言ってしまうには付加価値が増え過ぎた。
メンバー同士のスキンシップで一人でも多く客層を確保できるのであれば、そりゃ会社としてはそう指示もするだろう。そこは彼らも商売なのだし、ファンや視聴者が好む「シチュエーション」として処理されても仕方が無い。
また、カメラの無いところでのスキンシップに関しても、そもそも韓国自体がそういう文化を持っているからと言える。
これは男女ともに差はないようで、韓国留学を経て今も日本と行き来する友人からは「若い子だけじゃなくておっちゃんおばちゃんでも肩組んだり手つないだりして歩いてるよー普通にポッポ(頬などへの軽いキス)もしたりするし。もちろん個人差あると思うけど、あと仲いい人たちは基本近い」という事も聞いた。
とりあえず何が言いたいかと言えば、彼らのスキンシップが濃いからと言って、「もう公然だし本人たちが認めてんじゃん!妄想じゃなくて事実なんだから鍵かけなくてOKでしょ!!」という理由にはなり得ないと言うことだ。
これらを併せて、「なぜ日本ではK-POPをはじめとしたRPS妄想が隠れるべきなのか」に次で言及しよう。
鍵垢奨励は「鎖国ノスゝメ」?
予めお伝えしておくが、ここでは「日本でのRPS活動」というところに的を絞った話になる。その上で「なぜ日本では鍵をつけたり限定公開したりと、RPSの扱い自体に気を配らねばならないのか」への答えを伝えるとしたら、言えることはひとつだけだ。
「本国やその他の国の仕様の活動が容認されているのは、あくまで本国やその他の国の話であって、日本ではない」からだ、と。
ややこしい上にまったく理不尽の説明になっていないと感じるかもしれないが、結論としてはそうなってしまうとしか言えない。
以前の記事でも触れたとおり、日本の二次創作におけるK-POPジャンルは、決してそれそのものが独立してはいない。あくまで「日本における三次元同人の中のジャンル」としてのひとつがK-POPであり、絵だろうと小説だろうと妄想ツイートだろうと、原則その中での活動として見なされる。
もっと雑に言えば、どんな言い分があろうと本国や他の国仕様を貫きたかろうと、「現在の日本で日本語を使ってRPS妄想するなら、相応のマナーやルールなどの制限はあることを知っておかないといけない」という話なのだ。
ちなみに、ここでいうRPSはBLに限らない。夢だろうと百合だろうと、全く関係のない第三者がアイドルに対して個人的欲求を元にぶつけた妄想であることに変わりはないからだ(この点に関してはのちに一例を挙げて言及する)。絵を描いたり小説を書いたりするだけの話ではなく、妄想ツイートも含まれることを伝えておく。作品として消化していなければ無罪という話では、決してない。
本国や、或いは他国の三次元同人でノブレス・オブリージュの意識を持って、もしくは別の理由で容認されていることでも、日本の三次元同人においては決してそうではない。
冒頭のお茶碗話はそのためだ。日本ではお茶碗を持つことがマナーとして正しいとされるけれど、韓国ではそうではない。どちらが正しいと言うよりも、「自分が今居る環境はその行為をどう捉えるか」「そう捉える理由は何なのか」、ということを知ってからの選択をどうするか。そこを考えてみてほしいと思う。
私は関係者でもなければ当人達でもないただの一ファンだ。だから鍵をかけるかけないに関わらず、これを読んだ人達に何かを強要することも指示することも出来ない。だから伝えたいと思ったことを書くだけではあるけども、今回の記事で言いたいのは日本というコミュニティに属するなら閉じこもれと言う事でも遮断しろという事でもない。
伝えたいのは、自分の置かれている環境を知ったうえで、そしてその環境を作ったものが何かを理解した上で、自分が何を選択するか決めるべきではないだろうかということだ。判断力を多数の誰かやどこかで見た何かに委ねることなく、「日本でRPSを扱うことの意味」を考えてほしいと願う。
ちなみにしつこいようだが、「日本でRPSを扱う際の注意点やらリスクやらその理由」については以前の記事でアホほど文字を費やして書いた。もし読んでいただけるなら、自分がRPSを扱うに際してどうすべきか考える時のお供にでもして頂ければ幸いである。
「好き」を暴力にしないために
ちなみにこれは余談だが、以前の記事でも先ほどの段落でも言及したように、本人たちにまったく関係のない第三者がアイドルに対して個人的欲求を元にぶつけた妄想が、例えばどういう形をとるのかについても少し話そう。
一例として、Googleで「PMV K-POP FAKE」と検索してみたとする。
その場合かなりの確率で、ヨジャドル(K-POPの女性アイドルのこと)の性的なコラージュが、静止画や動画の区別なくポルノ系のサイトで引っかかると思う。紹介しておいてなんだが、閲覧は自己責任で、と言いたくなるような露骨でえげつないものがたくさん出てくるはずだ。
極端な一例だとは思う。鍵を付けずに二次創作や妄想ツイートをしている人は、自分は違うと思うだろうか。推しに対してこんな酷い真似はしていないと思うだろうか。ナムジャドル(K-POPの男性アイドル)の二次創作や妄想ツイートはこれよりマシだと思うだろうか。
結論を言うが、根本的には同じだ。自分の欲求に従って、まったくの蚊帳の外どころか壁の外から、妄想をぶつけていることには変わりない。
ではそれらが本人の目に入ることを仕方のない話だと思うだろうか。その理由は何だろう。人より顔が綺麗だから?スタイルがいいから?それを生かして人前に出る仕事をしているから?多数からの「好き」で飯を食っているのだから、多少のことには目をつぶるべきだと?
その一切を理由にすることを私は全力で拒否する。少なくとも、全くの他者から性的欲求に限らず一方的な妄想をぶつけられる理由を「持てる者の義務」だと言う気にはなれないし、それは推しだろうと推しでなかろうと、もっと言えばアイドルだろうとそうでなかろうと同じだ。
「あなたは私と違うし私ではない」という理由が、一切の搾取を許すべき理由にはなり得ない。
「好き」が原動力であったとしても、野放図に放たれた妄想があなたの推しの目に入らず、また、入ったとしても推しを不快にさせたり傷つけたりしない、という確信はどこにもない。
だからこそ、ごく個人的な「好き」の結果である二次創作や妄想ツイートの取り扱いには注意を要する、というのが、今のところ日本の三次元同人で日本語を使って活動している私の持論である。
ちなみに「ナマモノ系二次創作垢には鍵を」という提言に対し、古いオタクの常識としてアップデートされるべきだとかホモフォビアの体のいいバッシングだとか言う方々も一定数いらっしゃるが、これは古い新しいの問題でもなければフォビア云々の話でもないということを明記しておく。
とは言え、後者に関しては自分の「嫌い」を叩くための隠れ蓑にする人も居ないとは言えないので、判別がつくようになっておきたいところではある。
なお、これはあくまで心構えの話であって、二次創作における対象の権利侵害に関わってくるような話は以前の記事で少し触れているので、興味のある方はそちらにどうぞ。
最後に
前回の記事に入れるには長すぎると断念した内容であったが、結局今回も長くなってしまった。今回に限らず、お付き合い頂いた皆さまには感謝しかない。ありがとうございます。
国が違えば風習も違うし慣習も変わる。当たり前のことであるだけに見落としがちだが、そこを飛ばしていいとこどりと言う訳にはいかない。窮屈さや理不尽さの理由を理解して、そこから何を選ぶかは個人の裁量だ。
ただしその結果が招くリスクが個々人のもので終わらない以上、私はまたこうやってやかましい記事を書くのだろう。
そして更に余談ではあるが、某アイドルグループの写真をメインとしたファンカフェの中でも、有名どころであったカフェのマスターさんが、特定の二人を写した写真を指してカップリングを(ここでは性交渉がある二人、というような意味合いで)匂わせる発言をしたところ、あっという間に苦情が殺到して、該当アカウントどころかそのカフェごと閉鎖する事態になったことがある。
本国であっても、RPSという概念に対して全くの無法地帯ではないということも併せてお伝えして、今回の〆としようと思う。
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