木は生きている!?木工デザイナーが語る木の魅力とは
こんにちは。みぽりんです。
企業で会社員をしながら、副業で北海道に仲間と林業会社BATONPLUSを立ち上げ、主にPRを担当しています。
noteの更新に少し間が空いてしまいましたが、本業の仕事とプライベートとの重心を、自分・チーム両方にとって適切にかけていきたい…
(ポジティブな)試行錯誤の日々です。
さて本日は、昨年BATONPLUSのメンバーとなった家具デザイナー、鴻野 祐さんに、木の魅力についてお話を伺いました。
徳島県神山町での制作活動や数々のワークショップ講師を経て、フィンランドアアルト大学“ウッドプログラム”に参加、
修了後は北海道十勝浦幌町で森と人をデザインするミッションの中でBATONPLUSに木工デザイナーとして関わっていただいています。
(写真はアアルト大学留学時、クラスメイトとともにデザインされた建物)
木を扱うのは簡単じゃない、だからおもしろい
学生時代、家具デザインのゼミに所属していたことから、素材としての木を扱う方向性は自然な成り行きだったという鴻野さん。
将来を考えたときに、一般的なデザイン事務所に就職するよりも自分らしい生き方があるのではと考え、大学卒業後祖父母の暮らす徳島県に移り、県内でアーティストインレジデンスプログラム※を実施していた神山町に興味を持ち、神山塾に参加することからキャリアをスタートしました。
※NPO 法人グリーンバレーが展開する求職者支援制度。講義やイベント企画、地域活動などを通して起業につながるスキルやノウハウを身につけるプログラム
「今の林業はどれだけ木を植えて切っても赤字になることが多い」という話はかつて林業が盛んだった神山町でも聞いていて、家具づくりで木に価値をつけることなら自分にもできそう、と当時から考えていたそう。
木が家具になるまでの工程は、丸太の状態で伐採後に製材・乾燥する工程がありますが、加工した後でも曲がる・反る・ねじれる・膨らむ…など、木は動き続けます。
「木は生きているので、家具も完成させた時が終わりではなく、作った時からが始まりなんです。」
プラスチックなどの化学製品とは異なり、木は動くからこそ調整する必要こそあれど、木造の歴史的建造物などは木が動くことで組まれていた木ががっちりと合い、強度が増すこともあるのです。
例えばやわらかい木のフローリングに物を落とした時、凹んでしまっても濡れ布巾をあてアイロンで温めると元に戻るのも、木の繊維が一時的に圧縮されたものに水分と熱を加えることで膨らむというおもしろい性質があるから。
育つスピードの遅い広葉樹は目が詰まっているため強度が強く質感が綺麗であることから、一般的に家具に利用されています。
一方で針葉樹は育つスピードが速いため目の詰まりは弱く、その分触るとやわらかい印象を受けます。
最近はインテリアはもちろん、オフィスにも木を利用する会社が増えていると聞きますが、木を触った時に感じる温かさや質感、また何十年と時間をかけて育った木の歴史が人の心を癒してくれるのかもしれません。
仕事後、ふらっと「森に入る」という生活
徳島県神山町にて、制作活動と並行しワークショップ講師なども経験し順調な生活を送っていましたが、
かつて作品制作に行ったノルウェーの1か月短期滞在がとても刺激的だったことから、フィンランドでの約1年半の留学・ウッドプログラムへの参加を決意されます。
日本の職人の仕事の細かさや歴史に紐づいた考え方の良さもありながら、ヨーロッパの林業とモノづくりは想像以上に大胆で効率を重視したつくり方、
また誰でもモノづくりに参加できる・森と関われる、非常に開かれたスタンスに衝撃を受けたとのこと。
フィンランドでは森や湖が身近にあるのでフィンランドの人々のライフスタイルと深く結びついており、
仕事終わりに「森に行く?」といってビールとマッカラ(大きなソーセージ)を買い、お酒を飲みながらキャンプファイアをすることも。
だれかの私有地でも人が土地に入ることやそこで実るものはみんなのものという、「自然享受権」という法律が定められており、自然を皆で享受し共有する考え方が根付いているのです。
そうして木が身近にあるからこそ、家具や生活雑貨も木を使用したものを購入する人が多く、特に冬は室内で過ごす時間が多いので、家具は少々お金を出してでも自分のお気に入りのものを選ぶ人も多いといいます。
フィンランドの森林は90%がマツ系やスプルースといった種類の針葉樹とシラカバ系で構成されていますが、中でもシラカバ系の木材を使った家具がブランド化され、固すぎずやわらかい木肌が人々の生活に馴染んでいます。
「今住んでいる北海道十勝の浦幌町でも、人が気軽に森に入っていける状態を作っていきたい」と鴻野さん。
自然災害や環境保全の観点でも森が果たしている役割は大きいし、森の中の自然摂理の生態系についても、スケールの大きい課題ではあるが難しく考えることなく、
まずはお酒を飲みに森に入るといったようなところから、薪ストーブを使う・木で遊ぶ・木のアート等、様々な接点で関わりを作っていきたいと語ります。
日常的に使うものに木を取り入れることから楽しんでほしい
「木の良さは、人それぞれあると思いますが、僕は”変わっていくこと”だと思います。」
人と同じように年を重ねるにつれて、色が変わったり曲がったり、シミができたり…
劣化とも言えますが、手をかけてあげるだけ長く使うことができ、それこそが「味」となり、時間を刻み込むということになるのです。
ジーパンを想像していただくと分かりやすいのですが、真っ新のジーパンも履き続けると体にフィットし、自分に合った色落ち・しわがついていく。
木も同様に、経年変化を楽しめるものだと思います。
例えばカッティングボード(まな板皿)は盛り付けるだけでビジュアルが良くなり、より美味しそうに見えると人気ですが、
使うにつれて出る色の深みや傷つき方は、木の種類によっても変わるので、選ぶ際に注目してみても良いかもしれません。
また自分でオイルを塗る等メンテナンスした分だけ、木の製品に触れる時間が長くなり愛着が湧くはずです。
好きなものに囲まれ、心が満たされる時間を過ごしたい方には、生活を豊かにする一つの要素として楽しんでいただけると思います。
BATONPLUSでもDIYプレートやカッティングボードを制作し販売しています。
木を身近に取り入れられるものにデザインし、人々の生活に彩りを加えられたらうれしいです。
またBATONPLUSが事務所を置く北海道浦幌町のTOKOMURO Labでは、8月2日までの期間限定でオンラインショップを開き、木皿プレートやカッティングボードとともに浦幌の食を楽しめるセットを販売しています。
ぜひ浦幌の山や森をご堪能ください。
▶︎山のめぐみセット(エゾ鹿肉ローストやDIY木皿プレートなど)
▶︎森のこもれびセット(ポークウインナーやカッティングボードなど)
※こちらの2セットは現在開催中の毎週金曜日18時から22時の夜市のみの限定販売となっております。
https://online.passthebaton-market.com/