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孔雀と柘榴。生命樹文様のタペストリー
3月の頭からコロナ禍の只中で工房にいる日が続いているので、工房や家のあちこちに散在する布を整理することにしました。まずは記録、ということで画像を取っています。小さな布が多いのですが、時々びっくりするような布が出てきます。これはそのひとつ。
サイズ:245x80cm
生地:Belacu(厚手コットンキャンバス生地)
技法:Tembok 2回プロセス(蝋落とし2回の多色)両面イセン
色:一回目 濃紺(単色・化学染料)、2回目黄色~赤~茶への重ね染め(天然染料併用)
下絵製作:Saptro
このバティックの原本は東京国立博物館(トーハク)の東洋館にあり、ミュージアムショップで私がたまたま購入したハンカチを見ながらサプトロさんが描いたものです。原本はこちらのリンクから↓
素晴らしいバティックなので是非トーハクに足を運んで見てください。
タペストリーの下絵は目視で描いたものなので枝の流れや細かいところは異なるのですが、上下から幹が始まるところや、構成要素の孔雀や鳥、大きな花や柘榴は忠実に再現しています。サプトロさんの絵はカトゥラ師匠の絵のように整ってはいません。しかし、染め上がるとその奔放さが際立ちます。
バティックは同じ柄でも色によって印象が変わります。この配色は私が好きなもので最初に濃紺単色で染め、蝋落としをします。
黄色の花の周囲の線、これがWitというものです。Witは「細い枝」という意味で、この線がくっきりきれいに出ると2回目のプロセスで染めた色が際立ちます。濃紺の線はクリアーで強い感じになるので他のものでもよく使っています。
2回目の染色は黄色から始まります。この黄色は化学染料に天然染料をかけたものです。黄色は濃度が難しく、濃すぎると薄汚くなるし、薄いとイセンの白が目立たなくなるので難儀でした。2色目は赤、その後に紫の染料をかけて海老茶に寄せます。どの部分を伏せるか(色分け)はテンボック職人の担当です。
生命樹はいろいろなバリエーションがあって、パチェ工房のものはペンギンが木の上に乗っていたり、怪しいサルがぶら下がっていたり、妙なものが多めです。こういうバティックらしいものも作っていたんだなぁ、と。