北海道インターハイ2023バスケットボール競技、京都精華vs桜花学園の話と大会個人賞を独自選出したよ
全国高校総体、通称「インターハイ」。2023年は北海道で行われた。夏の北海道だ。いい環境なのかと思ったら、現地観戦組のツイート(Xになった今は「ポスト」というのか?)を見ると結構暑かったらしい。いやはやだ。
食料が不足する時期という理由から、熊は冬眠する。人間もそろそろ、外に出るのは命の危険が伴うという理由から、7〜9月は”夏眠(かみん)”するのはいかがだろうか。
あ、そしたらインターハイがなくなっちゃうか、そりゃいかん!
女子は京都精華学園が2年連続2度目の全国制覇
7月30日10時、きたえーるのメインコートで女子決勝が行われた。2年連続の優勝を目指す京都精華、相手は桜花学園だ。結果は京都精華が88-65で桜花学園を下し、2年連続2度目の優勝を成し遂げた。
この好カードについて語る前に、まずは過去の対戦をさかのぼりたい。
京都精華と桜花学園の対戦ストーリー【2022年】
2022年の香川インターハイでは3回戦で実現した。というか、”実現してしまった”と言うべきか。
世代トップレベルの選手である横山智那美率いる桜花学園はインターハイ4連覇を狙う。そして、2021年のウインターカップ決勝で桜花学園に敗れリベンジに燃える京都精華が挑戦者だ。
お互いの長所を消し合うロースコアの戦い。後半は京都精華がウチェの高さを生かし、4Q終盤に逆転。桜花学園をわずか2点差で下したのだ。
BOXスコア 桜花学園 63-65 京都精華
https://www.kagawabasketball.jp/interhigh/result-W/D1_oukagakuen_kyoutoseika.pdf
4Q残り4分からだが、熱戦具合がわかるかと↓
それまで常に跳ね返される壁であった女王・桜花学園を、京都精華がついに乗り越えた一戦。長期にわたって君臨し続けた王朝がついに崩れる、何かが変わった、そんな印象を受けた試合だった。そういったストーリーが背景にあるのを知ってから観ると、また違った印象を受けるだろう。
なお、2022年のウインターカップでは京都精華との対戦は実現しなかった。桜花学園が3回戦で東海大福岡に敗れたためだ。大会は京都精華がウインターカップ初優勝、インターハイとウインターカップの2冠で2021年は幕を閉じた。
一方の桜花学園にとってはインターハイ、ウインターカップともに3回戦で敗退となった2022年。誰かが”魔の3回戦”と、言ったとか言わなかったとか……
【ウインターカップ2022】桜花学園(愛知) vs 東海大福岡(福岡) | 女子3回戦(2022.12.25)ハイライト
この試合も劇的中の劇的、劇ヤバな展開なので、観たことがない人はぜひ。これだから高校バスケはやめられまへんなぁ〜
京都精華と桜花学園の対戦ストーリー【2021年】
さらに、さかのぼって2021年。京都精華のウチェが2年生、ジェシカ・堀内・八木が1年生だ。
【インターハイ準決勝】
BOXスコア 桜花学園 66-63 京都精華
女子準決勝 京都精華 (京都) vs 桜花学園 (愛知) IHバスケットボール全国大会2021年フル動画
リベンジに燃える京都精華が決勝で桜花学園と対戦。
【ウインターカップ決勝】
BOXスコア 桜花学園 61-57 京都精華
【ウインターカップ2021】桜花学園 vs 京都精華学園 | 女子決勝(2021.12.28 )ハイライト
全中で実績を残してきたとはいえ、ウチェもジェシカもまだまだプレイが荒い。対するは、アマカとずっと練習してきた朝比奈あずさだ。技術の差があるように感じた。
ただ、京都精華がやろうとするバスケは見えていた。その後の2022年、2023年と練習を積んできたことで研ぎ澄まされていった感じか。
対戦するタイミングが違ったら……今のウチェと朝比奈が対戦したらどうか……かなり観てみたいマッチアップだ。きっと数年後にWの舞台で実現するだろう。
北海道インターハイの大会個人賞を独自選出!
ということで、京都精華が連覇を果たしたのだが、ベスト8の顔ぶれは以下の通りだ。
上記8校の全試合・全選手のスタッツを参考に、以下の個人賞を独自に選出してみた。
得点王は総得点147のディマロ ジェシカ(京都精華#15)
単純に総得点と、試合数に違いがあるため1試合平均でランキング。
1位はどちらも京都精華のジェシカだ。2回戦から登場して決勝までの5試合中4試合でダブルダブルを達成。京都精華の大黒柱である。
特徴はスリーのアテンプトがない点だ。現代バスケではセンターであってもスリーを打つことが求められていると言えるだろう。だが、シャンソンに入団したOGのウチェも含め、京都精華の留学生選手はスリーをほとんど打たない。
2Pのアテンプトが5試合で90(1試合平均18のアテンプト)、成功本数は66で成功率73.3%だ。
なお、ジェシカが1試合で最も得点を取ったのは2回戦の岐阜女子戦だ。延長だったのもあるが、37得点である。
2回戦BOXスコア 京都精華 83-72 岐阜女子
大阪薫英の島袋椛も素晴らしい数字だ。都野七海と同じ山口県出身で、都野とはジュニアオールスターでチームメイトだった。
https://juniorallstar2019.japanbasketball.jp/team/w_yamaguchi/
派手さやスピードはないが、2Pのシュート確率が5〜6割と、シュートの上手いプレイヤーという印象だ。FTの確率が高いのもいい。試合終盤にはボールを回したい選手だろう。
千葉経大附#4 角陽菜多は1試合平均で3位にランクインした。アテンプト(試投数)の多さが特徴と言えるプレイヤーだろう。全3試合を行い、1試合平均26.33のアテンプトだ。1Q当たり6〜7本程度のシュートを打っている計算になる。
ショート確率が高まれば1試合で40得点オーバーもあり得る。U17にも選出された経験を持つ冬が楽しみな選手だ。
3ポイント王は総成功本数18の巻朋花(札幌山の手#4)
成功本数と1試合平均でランキングしたが、両方で札幌山の手#4 巻朋花が1位となった。
札幌山の手は全4試合だ。#4 巻朋花は毎試合5本近いスリーを沈めた選手。3Pのアテンプトが52本、1試合平均で13本だ。これだけ積極的に打たれると、ディフェンス側はやはり怖い。狙ってないけどバンクで入っちゃうケースとかあるもんね。シューターは打ち続けることが大事なことにもつながることかと。
170cm台の選手が外からスリーをポンポン入れてくるバスケ。スリーを打つまでの展開、スリーの確率、冬にはどこまで精度を高めてこられるか、札幌山の手も楽しみなチームだ。
リバウンド王は総本数77のディマロ ジェシカ(京都精華#15)
やはり留学生選手が上位を占める中、総本数では桜花学園#12 深津唯生、平均本数では聖和学園#9 阿部友愛がトップ3に食い込む健闘を見せた。
気になったのが7位の京都精華#4 堀内桜花だ。そこまでサイズが小さいわけではないがポジションはPGだ。リバウンドに絡むシーンも少ないと思われるが、自ら絡みに行っているからこその数字なのだ。
何であんなに絡むのかなと思って注目しているとあることがわかった。シュートが放たれると、ゴール下を横断するように移動していることが多いのだ。密かにだが、積極的にリバウンドを狙っていることの現れである。そして、能動的にリバウンドに動く様子は、現役復帰をした吉田亜沙美(アイシン#18 )と重なる。
アシスト王は総数36の堀内桜花(京都精華#4)
京都精華#4 堀内桜花の1位は、彼女の非凡なパスセンスと、ジェシカのようなスコアラーがいれば自ずとついてくる結果と言えるだろう。札幌山の手との準決勝では驚異の16アシストを記録した。
世界のSAKURA HORIUCHIと呼ばれる日が来るのかもしれない……それほどの選手と見ている。
そして、1試合平均では千葉経大附#5 坂口彩花が1位となった。2回戦の鳥取城北戦、3回戦の日本航空戦と2試合連続でアシスト10を記録したのは秀逸。しかもポジションはPGなのに、得点・リバウンド・アシストで二桁と2試合連続でのトリプルダブルを達成した。
冬の活躍次第ではW入りもあり得るかもしれないが、個人的には関女で観たいというのが本音である。得点も取れる司令塔として、この子も末恐ろしい、将来が楽しみな選手のひとりだ。
スティール王は総数13の石井遥(富岡東#4)・中島優空(富岡東#13)
スティール部門は、1回戦から勝ち上がってベスト8入りした富岡東の2選手が同数で1位となった。
特筆すべきはトップ10内に富岡東の選手が4人もいること。
Wリーグを見ていても「スティールが上手い選手」っているよね。例えば、日立HTのキャロとか。星杏璃もその1人だろう。そんな選手が1チームに4人もいるのだから、8強入りできたのもたまたまではないと言えるだろう。
スティールへの意識が高いのか、チーム内で「狙っていこう!」と意思統一されているのか、はたまたスティールを狙うための練習を普段からしているのか……これだけスティール数が1チームに偏るのも、なかなか特異なことなのかなと。
今冬のウインターカップに富岡東が出場してくれば、「スティール」というポイントで試合を観るのも面白いかもしれない。
最後は1試合平均EFF王!ディマロ ジェシカ(京都精華#15)が驚異の38.0で1位!
シュートやリバウンドではなく、どれだけ試合に貢献したかを表す指標のひとつに「EFF」というものがある。そのEFFは京都精華#15 ディマロジェシカが堂々の1位だ。
そもそも、EFFとは何か?
読み方は「エフィシエンシー」らしい。簡単に説明すると、試合にポジティブに貢献した数値からネガティブに貢献した数値を引いたものがEFFだ。
えっ?ふわっとした説明でわかりにくいって?これは失礼。計算方法は以下のとおりだ。
EFF
[得点]+[リバウンド]+[アシスト]+[スティール]+[ブロック] -[シュート失敗]-[フリースロー失敗]-[ターンオーバー]
一見すると良い評価方法のように思われるが、出場時間を考慮していないのが難点だという。「出場時間5分の選手とフル出場の選手を同じ指標で評価するのはどうなの?」ということらしい。
とりあえず、一例としてWリーグ22-23レギュラーシーズンの渡嘉敷来夢選手(ENEOS #10 )のEFFを算出してみようじゃないか。
[得点:386]+[リバウンド:215]+[アシスト:53]+[スティール:16]+[ブロック:39] -[シュート失敗:70]-[フリースロー失敗:18]-[ターンオーバー:33]
EFF=588
これを、出場したレギュラーシーズン試合数の19で割ると「30.95」であった。さすがは来夢ちゃんだ。圧巻の30台である。すげー!安定しててすげー数字だ!
んで、京都精華#15 ディマロジェシカのEFFをもう一度見てほしい。なんと、来夢ちゃんを上回る数字なのだ。というか、トップ3は全員、”渡嘉敷越え”である。
試合数が違うので一概に比較はできないけどね。まあ、38がどんだけすごい数字なのかはお分かりいただけたのではないかと。
ウインターカップの注目選手はこの中から!?
インターハイに出場した選手たちがウインターカップにも出てくるかどうかは、その都道府県のウインターカップ予選次第である。稀にインターハイには出たがウインターカップには出ないチームがある。インターハイは予選2位で出場を決めたチームが、ウインターカップは1校のみになり出場できないケースなどがそれに当たる。
とはいえ、インターハイの8強に入ったチームは、ウインターカップにも出場する可能性は高いと言える。まず、京都精華と桜花学園はすでにウインターカップ出場が決まっている。
各個人賞に中から、あなたのお気に入り選手を見つけ出し、ウインターカップで密かに応援するのも一興だろう。
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