バスケットボール女子日本代表
パリオリンピックに男女ともに出場を決めたバスケットボールは大きな期待を背負ってオリンピックに臨みましたが、結果は男子も女子も1勝も出来ずにグループリーグ敗退となりました。
普段からバスケットボールを見ている者にとっては、男子バスケットボールの1勝は本当に難しい、当初かかげていたベスト8がいかに難しいミッションか多くのファンは理解していたと思います。
むしろ、男子の戦いぶりは予想を超える活躍で0勝と言えば0勝なのですが、ベスト8が非現実な目標ではなかった。そう言える結果だったと私は思います。
一方、女子は大きな期待を抱えてのオリンピック、多くのファンは苦戦はするものの、0勝という結果は受け入れがたい結果だったと感じています。
女子は東京オリンピックで銀メダルを獲得していて、その時のメンバーが多く残っていたし、オリンピック最終予選でも早いバスケットを展開していたのだから多くの人が「これはいけるんじゃないかな?」と思っていたと思います。
「走り切るシューター軍団」というコンセプトを掲げ、3Pシュートが上手く、小柄な選手を多く選出してオリンピックに臨むことになった日本代表。
当初、多くのファンが「なぜWリーグのMVP級で身長が高くインサイドで強い渡嘉敷を起用しないのか?招集しないのか?」という声は多かったものの、オリンピック最終予選で結果を出したことによってその声は小さくなっていたような気がします。
多くのシュートの上手い選手の選出ともう1つは選手交代を頻繁におこない誰が出ても同じクオリティを保てるチームということが特徴的で、そのミッションを遂行するために“台本”があった今回の日本代表。
実際、オリンピック最終予選ではこの戦い方がはまりオリンピックへの出場権を獲得出来ました。
ここまではよかったし、リバウンドで大きく負けてもこのように勝てる!ということが分かりました。
でも…
最終予選から、Wリーグのプレーオフやオールスターを経て、オリンピックのメンバー選考となっていき、サバイバルを経てオリンピックに挑む12人が選ばれました。
メンバーが選ばれた時真っ先に思ったのは「小さいな…」「メンツだけ見れば素晴らしい」という印象でした。
確かに彼女たちはファンからしたら女子バスケットボールの日本人選手をランク付けした1位〜12位が選出されたイメージでこれよりも強いメンバーを選ぶのはなかなか難しいという印象でした。
一方で、やっぱり小さい。そういうバスケットボールをすることは最終予選で見ていたので分かっていたのですが、やっぱりサイズ不足は否めませんでしたね。
しかし、私たちファンも「小柄な選手が多いけど、何かしらインサイドへの対策をしてくるのだろう」と思っていました。
しかし、北海道で行われたはるか格下のニュージーランドのビックマンを止められずにそのまま直前の強化試合でも同じようなやられ方を終始していました。
パリオリンピックの初戦のアメリカ戦。
相手はオリンピックで長きにわたって無敗を維持しているチームで私は「勝つのは難しいけど、善戦してくれれば」という感じで見ていました。
でも、実際は…日本のやりたい速いバスケットをアメリカにやられて、3Pも決められて、まるで「あなたたちが強いのは知っているけど、私たちもこのぐらいなら出来るの」と言われているような試合運びでした。
次の試合の前に日本には嬉しくないニュースが飛び込んできました。
「ドイツ戦、山本麻衣は脳震盪により欠場」
正直、日本のグループを見た時…
まず「アメリカ?まぁ勝つのはほぼ不可能だろ」、次に「ベルギー?ついこないだアメリカと1点差の試合してたよね?」、そして「しっかり勝つならドイツ戦だね」が大会前の印象でした。
でも、オリンピックが始まってベルギーがドイツに負けてのスタート(こちらもチームの主力が抜けてたようです)。
確かにドイツが勝ってベルギー負けスタートは意外だったし、山本麻衣が欠場も痛かった。それでも、ドイツも主力のバグナー姉妹の一人が同じく脳震盪で欠場だったんだからこの時点で日本とドイツの±はなかったに等しかったんだけど、大きくマイナスに陥ったのは日本の方でした。
日本の今大会の「走り切るシューター軍団」、私はこの戦い方をほぼ山本麻衣選手ありきだと思っていました。
もう少しいうと山本麻衣選手と宮崎早織選手のためのチーム戦術でこの二人が活躍してオリンピックへの切符を掴み取りました。
その山本麻衣選手が不在になったのは痛かったです。難しい場面での3Pシュートだったり球際の強さや土壇場でのチームを救う姿はまさにこのチームの心臓のような選手でした。
でも、だからと言って一人の選手に依存しているチームではないので控えにも素晴らしい選手が沢山いました。特にガード陣は人材が豊富でしたから。
でも、ここで山本麻衣選手の穴を埋めようと大きく起用されたのは町田瑠唯選手でした。
町田瑠唯は東京五輪ベスト5に入る実力者でWNBAも経験して、能力を疑う人はいません。私も彼女ほどの“PG”は世界中広しと言えどNBAにもいるかいないかそれぐらいのレベルの選手だと思っています。
でも、この選択は私個人としては正しくなかったと思います。
山本麻衣選手はPGというものの、高いシュート力を兼ねそろえていて、SG寄りのPGということでポジションもPG/SGとしても違和感がないのです。
一方、町田瑠唯選手はPGを具現化したような選手で、ゲームメイクやアシスト能力がずば抜けた選手。もちろん得点力もありますが、点取り屋ではありません。
彼女には彼女の素晴らしい能力があるのですが、山本麻衣選手とは全く違う魅力がある選手なのです。
ここで山本麻衣選手の代わりにするのであればプレースタイルの近い、ないしは町田瑠唯選手や宮崎早織選手と合わせてもうまくかみ合う本橋菜子選手だったと私は思います。
もしくは、このガードポジションをカバーするのではなく、インサイドへの強化がよかったのではないかと私は思っています。
ディフェンスの素晴らしい宮澤夕貴選手を長く起用し、相手のインサイドを止める事を優先させる。彼女を長く使えば、高田真希選手だったり、赤穂ひまわり選手がもう少しオフェンスで目立ってきたのではないか?と私は思っています。
しかし、結果的に本橋菜子選手や宮澤夕貴に頼ることはなく、普段通りの展開に。もしかしたらテコ入れをしたのかもしれないけど、結果的にそうは見えませんでした。
そして、結果はドイツにもワグナーを中心にいいようにやられて敗戦。
あとがなくなったベルギー戦、日本は幾度となくベルギーと死闘を繰り返してきて、特に東京五輪の準々決勝では日本が劇的に3Pで勝利し、銀メダルを獲得しました。
あのベルギー戦を乗り越えたからこそ日本は銀メダルにたどり着くことが出来ました。
そのベルギーも初戦でドイツに敗れ、アメリカにも敗れ日本と同じく崖っぷちにいました。得失点差もまぁまぁ絶望的で日本と仲良く大会を去る可能性が十分にありました。
ベルギーも長きにわたって主力を務めていた選手を欠いて挑んだ大会でしたので苦しいグループリーグ戦いでした。
私は日本に対して勝利してほしいとまでは思いませんでした。なぜならベルギーに勝つ。それは凄く難しいミッションだったからです。
でも、2試合負けたけど最後は日本らしさ、日本の強さを見せてほしい。勝ち負けよりも「日本、やっぱり強かったでしょ?」そう言える試合を期待しました。
しかし、試合が始まって、日本は個人に頼るようなプレーや迷いのあるプレーに終始する一方、ベルギーは1点でも多くの差をつけようと必死でした。
日本も必死だったし、負けたくない、勝ちたいという気持ちはあったと思いますが、試合終了の笛がなったあとのベルギーの選手たちを見ていると、この試合に賭けている。そんな雰囲気が漂っていましたね。
パリオリンピック、バスケットボール女子日本代表の試合はここで終わりました。
期待されていた金メダルには遠く及ばず、まさかの3連敗。その内容も寂しい内容になってしまいました。
日本のバスケットボールに携わる方々やファンの望んでいた結果ではなかったかもしれませんが、一つ言えるのは選手たちは本当によく頑張ってくれたということです。
オリンピックに出る。これは世界で12カ国だけに与えられた特権なのです。特に女子はほぼランキングの上から12チームが出ている状況で全チームにチャンスとピンチがあるような状況でした。
今回、日本は苦い思いをしましたが、日本が弱くなったわけではありません。
また一歩づつ、ゆっくりでも世界に追いつく挑戦をして、また世界を驚かせることを期待して応援していきましょう。
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