日本のバンドがコンテストで勝つのに必要な5つの要素
おはようございます。音楽家、チューバ奏者、指揮者、金管バンドディレクターの河野一之です。
2月から始まった激闘の日々を終え、現在は夏休みを謳歌させてもらっています。いつもみなさま、誠にありがとうございます!Viva holidays!
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日本のバンドが海外コンテストで勝つのに必要な5つの要素
これまでの河野自身のチューバ奏者、指揮者、金管バンドディレクターとしての経験、さらに今年2024年2月からの日本中のバンドのみなさんとの関わり、とりわけ常任をお任せいただいてるネクサス、RBB、そしてNZナショナルを共に戦ったIBE
SNSやネットで見たパリオリンピック
先日行ってきた韓国チェジュ島で開催された『Jeju International Wind Ensemble Festival』の観戦
これらの経験から一度『日本のバンドがコンテストで勝つのに必要な5つの要素』という題名で備忘録代わりにnoteを書いてみようと思います。
5つの要素
まず初めに結論から、河野が必要だと思う5つの要素はこちらです。
ヴィブラート
ソリストたちの演奏能力
音量の幅
経験豊かな指揮者(指導者でもあり)
経験値
一つずつ解説していきます。
①ヴィブラート
ヴィブラートをかけることで、次のような効果が期待できます。
音に表情をつけて聞く人を魅了させる
音楽をよりはっきりと目立たせるためのアクセントになる
音程を安定させる
ブレスを長く保つ
声に美しい色合いをつける
人に心地よい感動を与える
金管バンドは金管楽器と打楽器のみを使ってさまざまな音楽を表現するアンサンブルです。
なので例えば、管弦楽曲の編曲作品であればヴァイオリンのパートをコルネットが演奏をしたり、ポップスの曲であれば電子音で作られたようなパートをトロンボーンやホーンが演奏したり、歌唱曲であれば歌のパートをユーフォニアムが演奏をしたりします。(どの楽器でもです。)
というわけで先述した通り、音楽表現の一つの方法であるヴィブラートは表現を行う上で必須であり、演奏の質の向上にとても効果的なわけです。
ですが、我が国では吹奏楽出身金管楽器奏者が多いので、ソロ以外の演奏の場合ヴィブラートをあまり必要とされない吹奏楽における金管楽器の役割ゆえか、多くの吹奏楽出身の金管バンド奏者はヴィブラートをあまり使われません。(河野もそうでした。)
それゆえ、欧州や豪州で多用されるヴィブラートを想定して作曲されている曲の数々が日本人によって演奏をされると『ヴィブラート』の少なさによって作曲者、もしくはコンテストであれば審査員にとっては良くも悪くも『日本』らしい演奏に聞こえます。誤解がないようにもう一度書きますが、これは現時点の日本らしい表現という意味では良い点でもあるし、欧州や豪州の伝統あるコンテストに挑む際は減点にはならないにしろ加点は望めない結果となるでしょう。それゆえ勝つためにはヴィブラートの研究や訓練は必須です。
②ソリストたちの演奏能力
以下の内容は海外のコンテストで勝つための方法なので、読む方によっては気持ちが良い内容ではないかもしれませんので、ご自分の判断に従って読み進めていただきますようよろしくお願いします。
河野が留学をしていたイギリスの金管バンドと日本のバンドではたくさんの相違がありますが、その中の一つにメンバー選出の方法があります。
今回は河野が知っているイギリスのチャンピオンセクションの話をもとに書きます。(下位セクションはまた違う慣習があると思ってください。)
イギリスにおけるチャンピオンセクションバンド
・素晴らしい奏者は残り、そうでない奏者は他バンドの奏者などと入れ替えになる(素晴らしい奏者=必要な時に必要な演奏ができる奏者)
・素晴らしい奏者の中からさらに飛び抜けた演奏を行うものが首席となり、首席パートを吹いたり、ソロを演奏する
なので、上昇志向を持つ下位セクションの首席奏者たちは、いつももっと上位のバンドの席が空くのを待ちつつ、さまざまな活動を通して上位セクションバンドや指揮者たちにアピールしていきます。(なぜなら上位バンドも今よりもより良い奏者を探している場合があるからです。)
そうしていくことで素晴らしい奏者が残っていき、さらにそこから飛び抜けて素晴らしい演奏を行う奏者が首席(プリンシパルまたは1st)となります。
日本のバンド
・誰かとの繋がりや自分が住んでいる場所にあるバンドを検索し、場所やリハや演奏会のスケジュール、負担金額など自分の条件と合うバンドに入団する
このように日本における一般的なアマチュア音楽団と同じです。首席は長年そのバンドに在籍されている方や、奏者の中でもレベルの高い奏者が担当されることが多いです。
これらの違いがあります。そのため日本のバンドが海外のコンテストで勝つ(優勝する)ためには、
素晴らしい奏者の任用、もしくは現在いらっしゃる奏者の方々の成長のための時間をコンテストに向けて何年も持つ必要があります。
英国の金管バンドの歴史は約200年、日本は半世紀ととても大きい差がありますし、さらに現状コンテストがない日本の金管バンド業界ではこのような状況ですので、素晴らしい奏者の獲得、もしくは奏者の育成には工夫が必要です。
(それゆえユースバンドの必要性を十二分に感じています。)
③音量の幅
河野がお世話になっている英国人金管バンドの方々が来日され全員、毎度口を酸っぱくして何度も何度も伝えられていることが音量です。
日本のバンドの多くは、ffは小さく、ppが大きすぎるのです。
これも吹奏楽やオーケストラ由来だと想像していますが、そもそも金管楽器というのは大きい音で遠くにいる誰かに知らせを送るために発明されました。それゆえ大きい音は得意ですし、吹奏楽やオーケストラではそういった場面で多用されます。
なので金管バンドで求められるp, pp, pppといった静かな場面での演奏のイメージが取りづらいのではないかと思うのです。
またf, ff, fffといった音量も上記のアンサンブルの中での音量ということもあり、弦楽器や木管楽器に合わせた音量ということで制限があるように感じます。
またこれは日本あるあるだと思うのですが、我々が日本国内で欧州のトップバンドの演奏を聴く際、pなどが小さすぎてボリュームを大きくしている場合が多いと思います。(でないと相当静かで集中できる場所で聞いていなければ聞こえないので)
これではpの「音量だけではない、pの雰囲気」というのも分かりづらいと思います。
またこれもどうしようもない問題ですが、例え世界中から素晴らしいバンドが来て演奏を聞かせてくれてもそれはあくまで飛行機で10数時間かけ、さらに強烈な時差ボケの中この極東の地での演奏なわけです。もちろん素晴らしいのですがジンギスカン、海鮮、サッポロクラシックは東京でも楽しめますが、北海道の地で食した方が何百倍も美味しいのと同じで、何といっても欧州、とりわけバンドの本拠地付近で生で聴く演奏の迫力に勝るものはありません。
なので、音量というのは表現の一つですが、他表現同様に「限界はなく、限りなく大きく、限りなく小さく、そして良い音で」というのは必須です。
常に能動的に、ポジティブに「より良い演奏はもっとでないのか」と自問自答しながら練習を続ける必要があります。
④経験豊かな指揮者(指導者でもあり)
まだまだ修行中なゆえ、自分自身がそうだといっているわけではなく、やはりコンテスト出場経験、優勝経験を持っている指揮者、指導者の指揮や指導や金言です。
人間は知っていることしかできません。楽器も自分の知らない音(頭の中になっていない音)が出ることがないのと同じで、指揮者の頭の中に鳴っている音がバンドの音としてでることが多いというのはこの10年で学びました。
それゆえ、経験が豊かな指揮者、もしくは指導者による勝つための音楽作りが必須です。
⑤経験値
これも日本国内では擬似的な空間しか作れませんが、
・一生に一度と思うような舞台
・たった20分間だけの演奏
・何ヶ月もかけて作ってきたもの
・やりなおしの聞かない舞台
・多くの観客と審査員の前
・10何時間、重い荷物をもって移動した後
・多言語、異文化をもつ方々が作る環境の中
こういった環境の中で自分たちのベストを出すという経験値、または擬似的な環境を作っての訓練というのは必要です。
最後に
河野は良い演奏が勝つのではなく、コンテストに則し、勝つ演奏が勝てると思います。
今回NZナショナル、パリオリンピックを見ていて、やはりどれだけ実力があっても「勝つ演奏」でなければ優勝はできませんし、その時その瞬間の審査員の好み、会場に流れる流れ、ルールとの相性などさまざまな要素も確かにあります。
日本金管バンド業界、まだまだ半世紀、伸び代しかありません。
また自分自身こういうことを考えていると、自分も尽力しますが、もし自分の代では達成できなかったとしても次の世代がより素晴らしい結果を出してくれるんじゃないかと日々自分の活動へのワクワクとともに後進の方々との交流をさせてもらっています。
僕は日本という国自体がまず本当にすごく素晴らしい国で、すでに最高だと思っていますし、可能性に満ち満ちている国だと思っています。(パリオリンピックでの日本人選手も本当に素晴らしい内容でしたし)
河野も香港や韓国、台湾とも繋がりもできましたし、いつか金管バンドアジア選手権を開いた際に、日本が積極的にリードをとっていけるような、そんな金管バンドの発展に寄与できたらと思います。
今回は勝つための内容でしたが、日本のバンドはすでにとっても素晴らしいバンドばかりです。いつも問題定義、改善案の定義はネガティブに取られやすいですが、ぜひポジティブにガンガンいきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
Thank you
Kazz