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ペダルの話(Bb Bass)

イギリスから帰ってきてから日本中のバンズマンと話をさせていただく中でもっと専門的な、ベースにまつわる知識や体験を共有できる場を作った方が良いなと思った。

それは金管バンドのベース指導者として指導に行かせて頂く機会なんて小学校の金管バンド部での業務ぐらいで一般のバンドでは指揮者かソリスト、ツアーコンダクターや通訳者としてお伺いするしかニーズがないのが現状であったためだった。

2018年11月に浜松ブラスバンドのコータさんのポジティブな後押しもあり第一回金管バンドのためのベース奏法研究会を開催。

日本全国から金管バンドなベース吹きの方々にお集まりいただき奏法の研究のみならずバンドの垣根を超えた横の繋がりが発生し主催者冥利に尽きた時間となった。

第一回写真

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そして続けること5回、2〜3ヶ月に一度のペースで続けてきたベース奏法研究会も先日5回目を迎え、さらに大垣ブラスカンパニーの勝野さんのご尽力のおかげでベース奏法研究会@愛知が開催できた。ここでも東海地方の素晴らしい奏者のみなさんと情報を共有できとても素晴らしい時間となった。

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前置きが長くなりましたが、そんなベース奏法研究会。
これまでの5回+愛知の1回、ほぼ毎度Bb Bassの方からご質問いただいた内容、僕たちは

いつペダルをするのか

これについて書いてみます。

1、ペダルって何?

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感覚だったり慣習としてでしかペダル=Pedalというものを我々は知りませんが、その意味はとてもシンプルで

パイプオルガンの足のパートで演奏されるような低音域の音


です。つまりパイプオルガンのストップと呼ばれる音色選択機構の選択によって音色を変えますが、その機構の主に16ストップ、32ストップと呼ばれるストップから発せられる音(周波数的に言うと16hz, 32hz)。
記譜されている音符の1~2オクターブ下の音域を演奏する機構を
我々のペダル・トーン(Pedal Tone)といいます。

参考

なので曲中に出るオクターブ下を演奏する記号(音符下部に8va or 8va bassa)が書かれた音は大抵ペダル・トーンと言えます。

特に2nd Bb Bassにはペダル・トーンが求められる機会が多いです。
また近年

・楽器の質の向上
・奏者の演奏レベルの向上
・演奏レベルの向上によりコンテスト課題曲において優劣をよりはっきりつけるためにペダルを多用

が起き、特にオクターブ記号を使わず楽譜上にそのままペダル音域を記譜する曲も増えてきました。

2、使いどき

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↑おそらく日本最古級のBb Bass

そして本題の使いどきです。

上記のように直接楽譜に記載されていれば大手を振ってペダルに下降することすることはできますが、ペダルの発動は正直ソプラノ・コルネットのオクターブ上げやハモり上げ同様我々の感性に任せられていることがほとんどです。

やはり憧れのバンドにいる素晴らしい奏者たちが奏でるペダルはバンドの音量や音色を増強し演奏表現の幅を広げ我々を心酔させます。

しかし、ここでいくつか気をつけなくてはならないことがあります。

楽譜に書かれていないペダルの存在はもはや超絶技巧”音”であるということです。

そのペダルを吹くことによって正規に与えられた他の音符がないがしろになることは論外ですし、バンドの音量、音色、表現の幅を邪魔してしまっては元も子もありません。

なのでいつペダルをするのか?の答えは

慣習による

です。Brass Band in the U.KのBass Playersが200年かけて作ってきた伝統やここぞという時のペダルを入れるタイミング、それらを

・現地に行って学ぶ
・ライヴ録音系CDから学ぶ
・リハーサルにおけるペダルのあり&なしを録音でとり自分で聞く

といった様々な試行錯誤のもと完璧なタイミングを学び、そのタイミングの上演奏でできるよう訓練を続けていく他ありません。

ご存知の通り、ペダルに限らずソプラノやユーフォのハイトーン、トロンボーンの強烈なグリスタンドなど超絶技巧を曲のあちこちに入れられ過ぎても卓上調味料を入れ過ぎたラーメンのようになってしまいます、つまりくどいです。(僕は好き)

基本的には

・曲の解釈
・指揮者の意見
・バンドとしての表現

この3つに沿ったペダルの使用が望ましいです。

でないと独りよがりの迷惑者になってしまいます。

バンドの最低音域で倍音のように、地鳴りのように響く美しいペダルは自分の演奏技術を誇示するために使われるべきではありません。

いつでも聞いてくださるお客様のため、一緒に吹いてくれるバンドありきでのペダルということはいつでも心に留めておきたいものです。

3、方法

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さてそのペダルの訓練方法の話です。

演奏するタイミングに関しては生涯をかけて研究を続けていくとしてペダルの実際の練習方法です。

まず第一に大切なのは、

そのような音域があるということを認識する

これが大切になってきます。素晴らしい奏者の演奏を聞いて「この楽器はこんなこともできるんだ!」という認識をして初めてその練習ができるのと同じです。
ペダルもそういう音域があるということをわかっていない=つまりただの”めちゃめちゃ低い音”という認識で練習をしても遠回りをすることになります。


ベース奏法研究会での賛美歌演奏

ベース奏法研究会でもIn C下線2本のBbのオクターブ下のBb、そこから4度下がったペダルEbまでロングトーンを行いますが、それは吹ける吹けないではなく

そんな音があったんだ

という認識をしてもらうために行います。

つまり認識がある=イメージがある状態で練習することによりより早く自分のものにすることができるというわけです。

認識=知った後は様々なロングトーンやリップスラーを行い不慣れだと感じていた音域や音量を当たり前のものにしていくことが大切です。

初めて楽器を持った時チューニングの音やその楽器がもつただのドでも出したり伸ばすのに苦労したこともあるかもしれませんが、今だったら正直寝起きでも出せる音というのはあるはずです。

そのように自分にとって特別ではない音にしてしまうことがペダルを適切なタイミングで自分の鳴らしたいように鳴らす秘訣になります。

多くの奏者が〇〇が難しく感じます!とおっしゃりながらその〇〇について調べたり練習をされていないのを多く感じます。

車の免許を取りに行き、S字カーブでつっかかり苦手に感じた場合できるようになるまで教習を受けます。苦手です、できません、やりませんだと免許が取れないからです。それと同じです。

また苦手意識を持つとペダルの音域の事をとても低い音域という一括りで考え、演奏の際に顔ごと動かして演奏を行おうと身体が反応をし始めます。低い=下=顔を下にずらそう!と身体が反応する場合が多いようです。

ご存知の通り、僕たちは二枚の唇を使用して金管楽器を演奏しています。その二枚の唇の動きを妨げるような顔の動きはそれこそペダルの演奏を邪魔する場合が多いです。

息を吸う→息を吐く→唇が振動する→楽器が共鳴する→ペダルが鳴る

この原則が守れていればペダルは鳴ります。鳴らない場合はどれかが適切ではありません。ただそれだけです。

また余談ですが、このペダルのトレーニングは高音域の増強にも大いに役立ちます。実体験ですので、本当です。

まとめ

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↑人生初の英国コンテスト, 2nd Bb Bassで優勝した際の写真

ペダル、その超絶技巧音は我々を魅了して止みません。

しかし、醤油ラーメンにわずかなホワイトペッパー、豚骨ラーメンにわずかなゴマ、ジントニックにほんのすこしのライムと同じように、やり過ぎはご法度です。っが無いと寂しいのもペダルです。

ぜひ成功と失敗のたくさん混じった試行錯誤を行いお客様にお聞きいただく演奏会ではバンドの魅力、音楽の魅力、そして金管バンドの魅力を存分に引き出せるようような素晴らしいペダルを披露したいものです。

そのために我々は日々地道なトレーニングに励むのです。

素晴らしい奏者の多い我が国日本の金管バンド的ベース演奏がより発展しますように、僕もまた練習頑張ります。


ご読了ありがとうございました。




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音楽家 Kazzのnote
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