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ハイランド讃歌/ P.スパークの話その1
河野企画代表、チューバ奏者、指揮者の河野一之です。
今日は専門家らしく金管バンドの話。
イングランド人作曲家のフィリップ・スパーク、彼は金管バンドのみならず吹奏楽、ファンファーレバンド、管楽器のソロ曲や室内楽など幅広いジャンルの音楽を世に生み出している作曲家だ。
彼のチューバ協奏曲は僕もとても好きでよく演奏させてもらった。
そんな彼が2002年、欧州大会のガラコンサートで演奏するDavid King& Yorkshire Building Society Bandの依頼で作曲したのが
Suite from Hymn of the Highlands
ハイランド讃歌組曲
である。
全7楽章、各楽章の題名にはスコットランドの城や地名が冠され、バンドのソリストたちの魅力を存分に披露できる独立したソロ曲も入っている。
Ardross Castle
Summer Isles – Euphonium solo
Flowerdale – Soprano Cornet solo
Strathcarron – Sword Dance
Lairg Muir – Cornet solo
Alladale – Flugel Horn, Tenor Horn and Baritone trio
Dundonnell – Finale
2002年の曲ということで、2011~13年に留学をしていた英国ではすでにどこのバンドでも演奏される機会はなかったけど(Coryでやろうよ!って進言はしていた)、2020年現在でも日本ではとても人気の高い作品で、多くのバンズマンの憧れの一曲となっている。
そんな曲の紹介を河野なりに書いてみる。これを読むことでこの作品を演奏する際により楽しめるようになると思う。
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スコットランド民謡なんて一曲も入っていない
スコットランド、バグパイプ、民謡、湖、お城、地名、ブレイブ・ハート、ハギスとスコットランドの見所はたくさんある。そんなスコットランドが舞台のこの曲であるが、実は
スコットランド民謡なんて一曲も引用されていない
作曲者本人もノートに書いているけれど、
スコットランドを主題にすることは決めたけれども、民謡に関しては一曲も使用していない。
との記述がある。なので曲中に出てくる旋律の90%スパークの自作だ。残りの10%、Ardross CastleやDundonnelで出てくるこの旋律
Highland Cathedral、ハイランド大聖堂のテーマ。
これ実はドイツ人音楽家二人組のUlrich RoeverとMichael Korbによって1982年作曲された曲で、グレート・ハイランド・バグパイプのための作品だ。
もともとはドイツで開催されたハイランド・ゲームのために作曲された曲で、あまりの人気のため今ではドイツやスコットランドのみならず世界中で演奏される曲となった。現在ではScotland the BraveやFlower of Scotlandと肩を並べるスコットランドの第二の国歌的扱いをされている。
スパークはこの超人気作品の旋律をArdross CastleとDundonnellに加えた、つまりスコットランドやスコットランド人が関わっている旋律は実は一切無い。
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