勉強日記② 運動失調
失調とは医学用語で、ある機能が調節を失うことを意味する。運動失調、自律神経失調症、統合失調症などあるが、今回は運動失調について。
運動失調とは、目的の運動に関係する様々な動きの協調性が悪くなるため、それを円滑にできなくなる病態を指す。
代表的な症状は、起立・歩行時のふらつき、手の細かい動作(巧緻性)ができない、物を持つと手が震えるなど、普段は無意識でできる動作ができなくなる。加えて、飲み込みが悪くなる、呂律が回らないなど会話や食事にも影響を及ぼす。評価なくして改善なし。今回は評価方法について。
【小脳性運動失調の症状】
・測定障害
測定過小:目的に達しない。
測定過大:目的より行き過ぎる。
・反復拮抗運動不能
主動作筋と拮抗筋の変換が拙劣なため、運動の振幅・速度が低下して不規則に変動する。
・運動分解
2つ以上の関節を動かして、目的の動作を行うときに円滑に行うことができず、動作が複数に分解されてしまう現象。
・協働収縮不能
動作を行うにあたり、各動作を順序立て、組み合わせて行うことが困難となる現象。
・振戦
運動時や姿勢保持で見られる振戦。小脳の障害だと荒く粗大な企図振戦を認める。
・時間測定異常
動作の開始時もしくは停止時にタイミングが遅れる現象。
【評価のポイント】
・事前に関節可動域、筋力を検査しておく。
・検査は運動の大きさや速度を変えて行う。
・開眼時と閉眼時の差を観察しておく。
・四肢の運動失調は主動作筋と拮抗筋を運動方向から推測し、原因となる筋を特定する。
・小脳性運動失調は易疲労性を認めることが多い。
【観察評価】
・椅子に深く腰かけて足底を床から離す。
・両膝を閉じ、腕組をさせた状態で動揺の出現の有無を確認する。
・立位では両脚を広げ、両上肢を外転してバランスをとろうとするが、全身の動揺を認める。
・歩行では、広い歩幅をとなるワイドベース歩行。歩幅は一定せず、バランスを保つために上肢が外転する。失調が軽度の場合、継ぎ脚歩行、踵歩きで明らかとなる。
・指鼻試験:肘伸展位からは鼻に指を持ってこさせる。
・指鼻指試験:患者の示指先端で検査者の示指先端と自分の鼻先を交互に触るよう指示する。※視力低下がある場合、指鼻試験で評価する。
・膝打ち試験:座位で膝を手掌・手背で交互に素早く叩かせる。
・踵膝試験:背臥位で一側の踵を反対側の膝につけるよう指示する。下腿に沿って下降させ、足関節に到達した後、元の位置に戻すよう指示する。失調だと円滑に動かせない。
他、向こう脛叩打試験など
【測定異常の検査】
・arm stopping test:背臥位もしくは座位にし、肘を伸展し示指を耳にあてるよう指示する。失調だと肘の屈曲まではできるが耳に到達しない。もしくはズレる。
・線引き検査:紙の上に約10㎝離して、2本の平行な縦線を引き、その縦線間に直角に交わる横線を左から右に引くように指示する。
失調の場合、右側の縦線で止めることができない。もしくは手前で止める、行き過ぎる。
【反復拮抗運動不能の検査】
・手回内・回外検査:回外位で前方へ上肢を挙上させる。できるだけ早く回内・回外させるとわかりやすい。失調の場合、遅く不規則となる。
※利き手が速いのは普通なので一概には言えない。
・foot pat:座位で足関節を背屈位にさせ、繰り返し、できるだけ速く床を足底で叩くよう指示する(足関節を背屈繰り返すということ)。
【協調収縮不能の検査】
・起居動作:背臥位、腕組みをさせて起き上がるよう指示する。協調収縮不能だと下肢を挙上して起き上がれない。
・立位での反り返り動作:患者を立位にし、後方へ反り返させる。正常では膝が屈曲し、体幹を後方に反り返させることができるが、協調収縮不能があると膝が屈曲できず、後方に転倒する。
【小脳病変における筋緊張の考え方】
一般的に筋肉は動かしていても動かさなくても若干の抵抗を感じる。筋緊張が低下するということは、運動時に筋肉の抵抗感が少ない(被動性)、正常可動域以上に関節可動域が増大する(伸展性)という状態。
小脳病変では筋紡錘内にあるIa繊維へのシナプス前抑制が低下(求心性線維への抑制の低下)する。
被動性の評価
・肩ゆすり試験:立位、座位で両肩を掴んで回線を左右にさせる。上肢が大きく揺れるようなら陽性。
・足落下試験:足が床に着かない椅子、ベッドに座らせて検査が両足を持って落下させて、下肢の揺れを観察する。
伸展性の評価は関節可動域検査で良さそう。
自己の体内の動きを認知する。筋・腱・関節などに存在する固有感覚が姿勢保持、運動遂行時に正常に働いていることで、円滑で正確な動作が可能となる。
もし、小脳の検査で問題がないのであれば視覚情報を遮断すると失調が出現する可能性がある。その場合、脊髄性か前庭系を疑う。