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防音室が欲しい!30代半ば独身が中古マンションを買うまで②
前回の記事でつらつらと述べたが、「で、結局のところ何を優先して何を妥協してどんなん買うたん?」の部分がすっぽり抜けていたので、書けるところまで書いていこうと思う。
優先事項を決めた
金額、立地、設備。マンションに求める条件は人によって千差万別でキリがない。優先順位を決めておかないと、後々大変なことになる(決めておいても大変だったが)。
何よりもリノベーションを含めて予算内であること(これは割愛します)
防音室の施工のしやすさ(管理規約上、防音室が作れない物件なんていうのもあるそう)
資産性(前回の記事で述べたとおり、永住はあまり考えていない)
職場や都内へのアクセスのしやすさ
初手「既存のマンションに防音室を施工しても、ミュージション(防音賃貸シリーズ)と同等の防音性能は得られない場合が多いんです」
担当者の一言に、「ええ、サイトにも書いてあったので、承知してます〜」と笑顔で返したものの、内心狼狽して震える。サイトには下記のように記載がある。
ミュージションの場合は一棟丸ごと防音施工を行っているため、D-75という高い遮音性能が実現できています。しかし一般的な分譲マンションの場合、リノベーション工事で変更できるのは「専有部分」のみとなります。
音は廊下や躯体といった共有部にも伝わって隣戸に届くため、音に対して対処できる範囲が限られる防音リノベーションでは、ミュージション同等の防音性能を有することは難しいです。
担当者の言わんとしていることはわかりすぎるくらいにわかる。高い金を払って防音室を作ったのに、いざ演奏してみたら階下からクレームが来て泣き寝入りなんて事態にならないように、不安要素は最初に潰しておかねばならない。私の夢も初手から潰えそうだ。
気が動転した私は自ら墓穴を掘りにいく。
私「しかも、コントラバスとなると、ドラムほどじゃないにしても、振動が階下に伝わる可能性が高く…」
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担当者「いわゆる、【空気伝搬音】と【固体伝搬音】ですね。もちろん防音工事でどちらも軽減はできます。が…。安全性を重視するのであれば、1階のお部屋がお勧めです。弊社で以前請け負ったコントラバス奏者のお客様は、やはり1階のお部屋を購入されていました。その方が楽器運搬も楽だとのことで」
私「やはり。でも……1階は、防犯と……虫が……」
担当者「であれば、階下にお部屋がない住居……1階部分が駐車場などになっているピロティ構造の2階とか……」
私「ピロティって耐震性能的にどうなんですかね……」
担当者「……でしたら、1階にお店が入っているような……」
私「お店が飲食店だったとしたら、虫が絶対出ますよね……」
……。
初っ端から先行き不安である。担当者さん本当にごめんなさい。
一旦、「線路沿い」「幹線道路沿い」など、周りの騒音がある程度あって、音を紛れさせることができる住環境に建つマンション(そういう物件は初期装備で二重サッシになっているところも多い)を前提に探しましょう、という落とし所となった。
私が気になる物件をお伝えすると、担当者がまずは防音室を施工できるかどうかや、管理規約に楽器演奏可能時間の記載があるかどうかなどを確認してくれる。個人ではできないことなので大変助かった。
資産性の高いマンションって結局なんなの
マンションを買った人はよく言う。「いざとなったら、売ったり貸したりできるから」と。けどそれって、本当に買ったり借りたりしてもらえる家なの?需要がある家なの?
人生は本当に何があるかわからない。前回の記事で「床暖が欲しい、内装が気に入ったという理由で家を買うのも自由だ」と述べたが、一方で小心者の私にそんなことは絶対にできない。投資目的で不動産を買うわけではないが、例えば老人ホームに入る頭金にすらならない【負】動産を掴みたくはない。何より私は住宅ローンを「強制貯金」の一種と捉えている。資産価値が欲しい。利益を出してやろうとまでは思っていないが、少なくとも損はしたくない。そう考える人の方が多いのではないだろうか。
一般的にマンションの資産価値とは下記で決まるらしい。
【何よりも大事】立地条件。特に中古マンションは都心と郊外の差が大きい。駅から徒歩10分以上は論外。
建物規模(戸数が多ければ多いほど良いとされる。修繕積立金の観点が大きい模様。が、個人的にはこれは5番目くらいでいい気がする)
外観・玄関・空間デザイン
間取りや内装、設備など
ブランド
管理体制(個人的に、これは2番目にくるのでは?というくらい重要だと思うが……)
本を複数読んだが、どの本でも口を揃えて「立地が大事」「駅徒歩が重要」という。駅もどこでもいいわけではない。うらぶれた無人駅徒歩1分じゃ意味がない。例えば、麻布・青山・赤坂の3Aは有名だ。資産価値は【駅力】が決め手で、それは下記で決まるらしい。
生活利便性
駅の乗降客数
賃貸マンションの賃料水準
劇場やミュージアム・大学などの数からみる文化度
公園などの緑地の多さ
じゃあそれって例えば具体的にどこなのかというと、
恵比寿、目黒、吉祥寺、三鷹、自由が丘、中野、二子玉川
武蔵小杉、横浜、川崎、たまプラーザ、藤沢
浦和、大宮
柏、津田沼
などなど。
納得のターミナル駅ラインナップだ。早速それぞれの駅徒歩10分圏内の分譲物件相場を見てみる(相場を見るのは本当に大事)。
私「買えね〜わ」。
安いマンションを買って高く売れることはまずない。100円で買った商品は20年後には50円になり、1000円で買った商品は1500円になるかもしれない、そういう世界。そんなことはわかっている。が、ペアローンで年収の10倍のマンションを買うようなパワーカップルに、単身で小心者の私が勝てるわけがないのだ。
都心にアクセスしやすく、二路線利用可能な郊外の駅徒歩5分圏内、且つ駅周辺にスーパーやドラッグストアや病院が充実している環境、と割り切った
それしか生きる道はない。いくら人口が減るのが確実な郊外といっても、都心に1時間かからず出られて買い物もしやすくて車なしで生活できる立地であれば、需要がゼロにはならないはず。と、信じるしかない。信じさせて。
JR路線図はもちろん、各社私鉄の路線図とも睨めっこをする日々。優先事項の4とも関わってくるが、職場に近くなくてもいいが、今より遠くはなりたくない。あと欲を言えば渋谷新宿にも出やすいところがいい。
乗り換え1回まで、ドアtoドアで1時間以内に収めたいので、駅を絞っていく。が、元々の条件が「防音室」を作ることができる、なので、絞りすぎても何もヒットしなくなる。欲を出しすぎてもダメだし、妥協しすぎて後から後悔するのも嫌だ。本当に胃が痛い。
胃が痛いといえば、これだけ中古マンションが話題になっていても、年間の売出件数から見るに、買い手からすると中古マンションは新築に比べて選びにくいようだ。
中古マンションが安いのに避けられてしまう理由
前回の記事でも書いたが、中古マンションは安い上に立地が良い場合が多い。約50-60年前のマンション建設ラッシュに建てられたほぼ駅直結と言っていいほどのマンションは、その立地だけでも十分資産価値がある。
それでも、中古を選ばない人が多い。住宅ローン控除や贈与税免除の観点で中古よりも新築の方が優遇されていることや、仲介手数料がもったいないという考え方や、もちろん日本人の「絶対新築主義」もあるだろう。日本人はとにかく新しいものが好きだ。考えられる理由は下記のあたりだろうか。
室内の見た目が悪い
外観や共用部分が古ぼけている
設備が古い、ないものが多い(食器洗浄器、床暖房など)
バリアフリーになっていない
建物に対する不安が拭えない(耐震性・耐久性・瑕疵・遮音性)
なんとなくではあるが、きっとみんな1や5によるところが大きいのではないだろうか。
1はそれこそリノベーションでどうとでもなるし、5は長期修繕計画や管理組合議事録を取り寄せて読み解けばいいだけの話だ。
新築の価格=土地代+建築費+諸経費(モデルルームや派手な広告)+利益
中古の価格=周辺の市場動向+物件個別の条件+売主の事象
であるということを、納得の上で新築を選ぶのならそれもアリだと思う。
そして見つけた
話が逸れたが、ある日突然目に飛び込んできた間取り図が、私に衝撃を与えた。
メゾネットだった。
下の階に玄関、広いリビング、キッチン、お風呂、トイレなどがまとまっていて、上の階にとってつけたように6畳の部屋がちょこんとかわいらしく乗っている。おまけに駅徒歩4分。下の階と上の階を合わせて61平米の広さ(階段が含まれているので体感は50ちょっとくらい)。もちろん下の階は2階以上。予算内、新耐震。
早速担当者に連絡をとった。
私「私の理想の間取り、これでは?」
担当者「同感です。例えば防音室にしたいお部屋にキッチンが付いていたりすると、換気扇を塞ぐことはできないから防音性能が落ちてしまうんです。一部屋だけ完全に独立している、しかも階下は自分の部屋なので防音室としてかなりのリスクヘッジになる。理想の間取りだと思います」
担当者に楽器演奏について調べてもらったりしている間、googleマップで周辺環境を見る私。というのも、以前内見に行った物件が、お部屋自体はとても素敵だったのだけれど、家から最寄駅まで10分強歩いても住宅だらけ、コンビニのひとつすらなかった(野菜の無人販売所はあった)からである。
さてこの物件の立地区域は……商業地区。スーパーは駅に大きいのがあり、ドラッグストアも道中にあり、コンビニは家の隣にあり、隣駅には某巨大ショッピングモール。
2路線ドンピシャの駅ではないが、ちょっと行けば2路線利用可能だ。職場にも(特急を使って)今とほぼ同じくらいの所要時間で行ける。
これだ!と飛びつき、急いで内見の手配をしてもらう。楽器問題もクリア。どうやらリノベーション会社が買い取って中は現状スケルトンの状態のようで、むしろその方がありがたいと言って見せてもらった。壁紙が何色かなんて後からどうとでもなる。それよりも、配管の経年劣化や分電盤、とうに寿命を迎えているであろう給湯器が新しいものになっているかどうかを確認しておきたかったのだ。中古マンションはどうしても配管などにガタが出てしまう。が、売主が個人ではなく会社である点は安心材料になった。契約不適合責任の観点から2年間は責任に問えるらしい。
決めた!ここにします!……とはならなかった
よくよく調べたら某有名な事故物件サイトに載っていたり(結局これは周辺の古くからの住人複数にインタビューして間違いであることがわかった)、探し始めて1ヶ月も経ってないのにもう決めちゃうの!?という変な焦りもあり、一悶着あった。こういう時こそ検討事項を冷静に見つめ直すことが必要だ。下記に列記しておくので検討している人は参考にしてほしい。
中古マンションを購入するにあたり検討すべきこと
築年数と耐震性−−−1983年以降の竣工かどうか
修繕履歴−−−大規模修繕がいつ行われたか。その範囲は?
管理会社と管理体制・管理状態−−−自主管理はやめておいた方がいい。理想は常駐だが大規模マンションじゃなければ巡回でよし
管理費・修繕費−−−管理費は1平米あたり首都圏平均の@235円より高いか安いか?その理由は?修繕積立金が築年数の割に安くないか?
建物規模と共用施設−−−100戸以上の規模か?どのような共用施設があるか?
外観・玄関などのデザインとグレード感
間取り−−−10年住んで行ける間取り・広さがあるか?
最寄り駅までに坂道はないか?
ハザードマップは大丈夫か?
日当たりはどうか?周囲に大気汚染の心配がある工場などないか?
品質保証−−−瑕疵担保責任はどこまで?仲介業者による保障はあるのか?
などなど。上記以外にも、インターネットは光をひけるか?(結局古いマンションでよくあるようにVDSL方式しか引けなかったが、これは妥協することにした)、今までに漏水事故はあったか?電気契約アンペアを上げることはできるか?などなど、それはもう質問しまくった。担当者さん本当にごめんなさい。もはやそこまで心配なら新築を買った方がいいレベル。もちろんそれは予算的に不可能なのだけれど。
紆余曲折あったが、結局ここにした
100点満点の家はない。何にだって妥協は必要だ。けれどトータルで見たら、それなりにいいところを選んだんじゃないかなぁと思っている(今回は長くなったのでやめておくが、広さや築年数やアクセスや生活環境などなどさまざまな視点から、現在の賃貸と、購入した物件の比較表を作ったら面白いんじゃないかと思っている)。
同じ間取りの部屋が一斉に複数売り出される新築ならまだしも、中古マンションは一点もの。まして私のようにメゾネットなど希少性の高いものを選ぶとしたらスピード感が何より大切だ。中古マンションの購入を考えているのだとしたら、事前準備は万全にしておいた方がいい。住宅ローン審査が長引いたせいで、タッチの差で取られてしまった、あれ以上にいい物件が見つからない、悔しくて仕方がない、という話もネット上でよく見る。逆に焦って買ってしまって後悔している、なんて声も。私もそうなってしまう可能性もなきにしもあらず、先のことはとんとわからない。
間違いなく、戦場である。