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フィルムライクを考えてみる
私はフィルム写真の生み出す色味に惹かれ、フィルムカメラの世界に足を踏み入れました。自分で撮影してみると、確かにフィルムの良さを味わうことができたのですが、始める前に想像していたものとは少し違いました。
「フィルムライク」というジャンルの写真が生み出され、好まれている中、フィルムライクとは何なのか、自分なりに考えてみました。
当然、私の勉強不足、考慮不足なこともあると思うので、あくまで一人の趣味人の独り言だとして軽い気持ちでお読みいただけると幸いです。
また、私個人としてはフィルムの方が好きなのですが、表現としての優劣はないと考えています。複数ある手段の中で、各自の趣味・嗜好に応じ選択し楽しめばいいと思います。
フィルムライクと呼ばれる写真は、ホワイトバランスをあえて少しイエローやグリーン・赤に寄せているものが多いと思います。(その他グレインやコントラスト・解像感を調整しているものもありますが、その辺りは個人的には一般性を見出せず、色味が唯一の一般性なのかと思いました。)フィルムライクの定義は確固として定まっている印象は得られませんでしたが、表現者各々の中にそれぞれの「フィルムライク」があるようで、それも素晴らしいことだと思います。
その昔、デジタルカメラが普及する少し前は、フィルムカメラが広く普及していました。レンズ付きフィルムの存在もあり、一般的な家庭でも、フィルムカメラでの撮影を行なっていたのではないかと思います。
一般的な家庭(ここでは単身家庭を含む)では、撮影したフィルムはお店に現像・プリントを依頼していたはずです。現在ではデータ化も依頼しますね。
みなさんご存知の通り、一般的な35ミリフィルムでは、24〜36枚まとめて現像・プリント・スキャンをします。店やラボでは、露出の調整はかなりしてくれると思いますが、効率性・費用の観点から、全体的なバランスを見た調整にとどまり、個別最適化まではしてくれなかったのではないかと想像します。露出は(極論)明暗の一軸ですが、色味はそうとはいきませんね。余程撮影枚数が多い人でなければ、その1ロールには、屋外・屋内・様々な光の環境下で撮影した写真が混ざっているはずです。人間の目は優秀で、慣れてしまうと、多少の色がついた白も白と認識するようですが、実際は、照明や太陽の角度などにより、光の色味はさまざまで、これによって、色味が少しずつずれた写真がたくさん仕上がったのではないかと思います。
私はフィルムをスキャンするのですが、後工程での色味の調整はかなり融通が効き(これはスキャナーの技術発展によるものでしょうが)、「フィルム自体が持つ色味」というものに対して懐疑的な立場をとっています。世間一般の方が思っている以上に、フィルムの色の許容度は広いと思います。
商業写真がフィルムで撮影されていた頃、特別な意図がある場合を除き、色味が崩れた写真が雑誌や広告で使用されていたのでしょうか?私はそうは思いません。実際、光環境下に応じフィルムやフィルターを変え、カラー暗室プリント環境下で色味を調整するなど、適切な色味に写真を仕上げる技術と努力は尽くされていたのではないでしょうか?
つまり、色味の偏りは、フィルムの持つ特徴ではなく、「個別調整を十分に経ていない写真の特徴」なのではないかと仮説を立てました。
一方、現在のデジタル環境下は、WB補正が優秀なので、写真に慣れていない人でも(というか、オート機能を積極的に活用する、写真に慣れていない人の方が)色味に偏りのある写真を生み出すことが少なくなり、意図的に色味を偏らせた写真に「凡庸ではない」印象を受けるのではないかと思います。
それが、記憶の片隅にある、色味の偏った「フィルム写真」のイメージと重なり、フィルムライクと呼ばれるようになったのではないでしょうか?
この仮説に基づくと、
・そもそも色味の偏りはフィルムの特徴ではないので、フィルムライクとフィルム写真は似て非なるものである。また、最終的な到達目標が異なるので、そもそも比較することはできない
・真剣にフィルムに向き合う人は、色味を調整する技術や知識があり、フィルムが持つ許容度を知っているので、色味が偏った写真を「フィルムらしい写真だ」と捉えることに違和感を感じる
・フィルムライクな写真を作る人は、自分らしい色味で表現を試みる人なので、その手段としては、調整幅のより大きなデジタルの方が適している。また、フィルムで撮りたいわけではない
ということにも説明がつくのではないかと考えています。
それぞれが、それぞれの思想に基づき、趣味を楽しむ世界を愛しています。
2025.1.4